高カリウム血症の検査:血液検査、心電図など
高カリウム血症では
1. 問診
問診とは医師などの質問に答える形で身体の状態や生活背景を伝えることをいいます。高カリウム血症が疑われる場合には、以下のポイントをよく聞かれます。
- 何か症状があるか
- 最近の生活状況について変化があったか
- 最近の食事量は十分であったか
- 飲んでいる薬は何かあるか
- 日頃どれくらいお酒を飲むか
- もともと持病があるか
- 家族で何か病気を持っている人はいるか
アレルギー があるか- 妊娠はしているか
症状を伝えるだけでなく、これらの問診を通して生活背景を伝えることは高カリウム血症の原因を特定するためにも役立ちます。生活背景の中に高カリウム血症の原因がある可能性があるためです。また妊娠している場合や、薬に対してアレルギーがある場合には治療薬の選択が限られる場合があります。そのため、これらの問診内容は治療法を決める上でも大事な質問事項になります。わかる範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。
2. 身体診察
身体診察は病気の状況や原因を特定するために身体の状況を客観的に評価することをいいます。問診の次には身体診察を通して、高カリウム血症やその他の病気の可能性を吟味し、行うべき検査内容を決めていきます。例としては以下の診察が行われます。
バイタルサイン のチェック- 心音や呼吸音の
聴診
実際の診察では想定される高カリウム血症の原因に応じて、ここで述べていない診察が行われることもあります。ここでは高カリウム血症の重症度を見極める上で重要な上記二つについて以下で詳しく説明していきます。
バイタルサインのチェック
医療現場では「バイタルサイン」という言葉がしばしば聞かれます。日本語に直訳すると「生命徴候」となり、脈拍・血圧・呼吸・体温・意識の状態などを指します。バイタルサインを確認することで身体の状態を把握することができます。例えば、意識がはっきりしない状態や、血圧が測定できない状態というのは非常に危険な状態であると判断されます。このようにバイタルサインは高カリウム血症の重症度を把握する上で重要です。
心音や呼吸音の聴診
聴診器を使って心臓や呼吸の音を確認することを聴診といいます。聴診により心臓や呼吸の状態を把握することで、差し迫った状態であるか予測することができます。
3. 血液検査
血液検査も高カリウム血症の状態や原因を調べる上で重要です。まず、高カリウム血症の診断は血液中のカリウムの値によってなされるため、診断のためには血液検査が必要です。さらに血液検査によって原因を推定することもできます。ここでは高カリウム血症の原因や治療を考える上で重要な以下の項目につき説明していきます。
- カリウム
- クレアチニン、BUN
血液ガス 副腎皮質ホルモン (コルチゾール、アルドステロン )
実際の診察では想定される高カリウム血症の原因に応じて、ここで述べていない血液検査が行われることもあります。以下で上記の検査項目について詳しく説明していきます。
カリウム
高カリウム血症の診断は血液中のカリウムの値によって行われます。単位はmEq/L(メックパーリットル)です。検査値はカリウムを意味する「K」と書かれているところに記載されていることが多いです。カリウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが、通常3.5から5.0mEq/Lであり、5.5mEq/Lを超える時に高カリウム血症と呼びます。高カリウム血症の症状については「症状の章」で説明しています。
クレアチニン、BUN
クレアチニンやBUN(ビーユーエヌ)は腎臓の機能を調べる検査です。高カリウム血症の原因の一つに腎不全がありますが、腎不全はクレアチニン、BUNを調べることでわかります。クレアチニンやBUNは体の中の老廃物で本来腎臓から排泄されますが、腎臓の機能が落ちてくると、血液中のクレアチニンやBUNの濃度が上昇してきます。そのため、腎臓の機能を予測する検査として用いることができます。
血液ガス
血液中には酸素や二酸化炭素などの空気中の物質(ガス)が溶けています。
血液ガス分析は高カリウム血症の原因を調べるために行うことがあります。血液が酸性に変化しようとしている状態(
アシドーシスは様々なことが原因で起こります。
たとえば、腎臓の
他にも、血液を酸性にする物質に二酸化炭素がありますが、何らかの理由で呼吸が十分にできなくなると、二酸化炭素を十分に体の外に排泄できず、アシドーシスを起こします。(
副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン)
コルチゾールやアルドステロンなどの副腎皮質ホルモンは血液中のカリウム濃度を下げる作用があります。
高カリウム血症の原因として副腎皮質ホルモンの不足があるかは血液検査で調べることができます。具体的には血液中のコルチゾールやアルドステロンを測定します。ほかの検査などから副腎皮質ホルモンの不足が疑われている場合には、副腎皮質ホルモンの測定値が決め手になります。副腎皮質ホルモンが不足していれば、副腎皮質ホルモンの補充などの治療を検討します。
4. 尿検査
尿検査も高カリウム血症の原因を調べる上で重要な検査です。具体的には尿中のカリウムの量を測るため尿中カリウム検査が実施されます。
尿中カリウム検査は1日ためた尿で行うことで1日の尿に排泄されたカリウムの量を調べることもできます。1日の尿をためる方法としては、自分で1日の尿をためる場合もありますが、自分で尿をためるのが難しい場合には、尿道カテーテルを使って尿をためる方法もあります。尿道カテーテルは尿の出口から入れる細い管です。その管を介してボトルに尿をためていきます。尿道カテーテルは医師や看護師の手によってなるべく痛みがないように挿入していきます。
尿中カリウム検査は高カリウム血症の原因の予測に役立ちます。
例えば、横紋筋融解症などのようにカリウムが血液中に大量に入ってくる病気では尿中のカリウムの量は多くなります。一方で、腎不全などカリウム排泄が低下している場合には尿中のカリウムの量は少なくなっています。
このように尿中カリウム検査は高カリウム血症の原因検索に役立てられます。
5. 心電図検査
高カリウム血症では不整脈が起こることがありますが、心電図検査を行うことで、不整脈を見つけることができます。
心電図検査は心臓が動くために発する電気信号を調べる検査です。電気信号は機械の画面上や紙の上に折れ線の
高カリウム血症で
高カリウム血症で不整脈が持続すると全身に血液が送れなくなる危険性があります。心臓は一定のリズムで収縮することで全身に血液を送っていますが、不整脈があると、このリズムが乱れてしまうためです。不整脈があり、全身に血液が送れない状態が続くと命に関わる可能性もありますので、高カリウム血症で不整脈が続いている場合は早急に治療を行う必要があります。不整脈が高カリウム血症によって起きている場合には、高カリウム血症が改善されれば、不整脈もよくなります。そのため、心電図検査によって不整脈を早く見つけることが大切です。
高カリウム血症で起きる不整脈には種類がいくつかあり、種類によって治療も違います。そのため不整脈の種類を見分けられるよう、検査を使い分けます。
高カリウム血症で行われる心電図検査にはモニター心電図検査というタイプと
モニター心電図検査は胸3か所に測定器を装着することで心臓の電気信号を拾うものです。モニター心電図検査の測定器は1日中身体に貼ったままにしますが、その状態でも普通に身動きして生活することができます。そのため、1日の中で不整脈が起きているか、起きていないかということを判断するためには便利です。一方で、モニター心電図検査では測定器の数が少ないため、詳細な情報を得ることはできません。不整脈の種類を見分けるには12誘導心電図検査でわかる詳細な情報が必要です。
12誘導心電図検査は胸6か所と手足に1か所ずつ合計10か所に測定器を装着する心電図検査です。測定器の数が多いのでモニター心電図検査より詳細な情報を得ることができます。ただし、測定器の数が多い分、24時間装着するには向いていません。そのため、モニター心電図検査により「不整脈が起きているか起きていないか」を調べ、不整脈が見つかったタイミングで12誘導心電図検査を使って不整脈の詳細な情報を得る、という方法が取られることが多いです。12誘導心電図検査により詳細な情報を得ることで、危険性が高い不整脈であるかどうかを判断し、適した治療を選びます。