こうかりうむけっしょう
高カリウム血症
血液中のカリウム濃度が何らかの原因により上昇した状態
16人の医師がチェック 144回の改訂 最終更新: 2019.01.09

高カリウム血症とは?症状、原因、検査、治療など

高カリウム血症は血液のカリウム濃度が高くなり、筋力低下、動悸などが起こる病気です。突然死の原因になることもあります。問診、血液検査などを行います。治療には陽イオン交換樹脂製剤などがあります。

1. 高カリウム血症とはどんな病気か?

高カリウム血症は血液中のカリウム濃度が高い状態です。高カリウム血症では血液中のカリウム濃度が高いことが、身体に力が入りにくさや動悸の原因になります。

カリウムとは?

カリウムは筋肉を動かす時や神経の信号を伝える時などに身体の中で使われます。そのため、カリウムが不足すると、筋力低下や脱力感など様々な不調を自覚します。一方、血液中にカリウムが多すぎる状態も身体の不調の原因となります。身体の中でカリウムがうまく使われるためには、血液中のカリウム濃度が適切に保たれている必要があります。

高カリウム血症の定義:カリウムの基準値など

血液中のカリウム濃度はmEq/L(メック・パー・リットル)という単位で表します。血液検査ではカリウムを意味する「K」と書かれている欄に数値が記載されていることが多いです。カリウムの正常値は検査のキットなどにもよりますが、通常3.5から5.0mEq/Lです。高カリウム血症は血液中のカリウム濃度が5.5mEq/Lを上回る時を言います。カリウム濃度が5.0から5.5mEq/Lの時は高カリウム血症の症状が現れないことが多いので、高カリウム血症として扱わないことが多いです。高カリウム血症は血液検査で診断できる病気です。

2. 高カリウム血症の症状

カリウムは筋肉を動かす時や、神経の信号を伝える時などに体の中で使われます。身体の中のカリウムが多すぎると、カリウムをうまく使うことができず、筋肉が動かせなくなったり、体調不良の原因になったります。そのため高カリウム血症では以下のような症状が現れます。詳しくは「症状の章」で説明しています。

  • 力が入りにくくなる:筋力低下
  • 気持ちが悪くなる、吐く:悪心(おしん)・嘔吐(おうと)
  • 心臓がばくばくする:動悸(どうき)
  • 意識を失う:失神(しっしん)

動悸や失神といった症状は高カリウム血症により、心筋がうまく働くことができなくなった結果起こります。さらに深刻化すると、心停止の原因になることがあります。そのため、動悸が続く場合や、失神を起こした場合には病院で原因を調べてもらうようにしてください。

3. 高カリウム血症の原因

高カリウム血症は血液中のカリウム濃度が高い状態です。

食べたものに含まれるカリウムは体内に取り込まれます。一方で身体の中にある余分なカリウムは尿などを通じて体外に排出され、身体の中のカリウムの量は一定になるよう調整されています。

しかし、腎臓から排泄できるカリウムの量より多いカリウムを摂取してしまうと身体の中のカリウムの量が過剰となり、高カリウム血症が起こります。

また、身体はいろいろな細胞が集まってできていますが、細胞の中にはカリウムが含まれています。何らかの理由で細胞が壊れるなどして、細胞の中のカリウムが血液中に移動することがあると高カリウム血症の原因になります。

他にも身体の中で出ているホルモンの異常や薬の副作用が原因で高カリウム血症が起こることがあります。これらに対してはホルモンを正常にする、薬を中止するといったように、治療が少し異なります。

まとめると高カリウム血症の原因は以下のように分類されます。

  • カリウムの過剰摂取
    • フルーツ、ナッツ、豆類、サツマイモ、アボカドなどの食べ過ぎ
  • カリウム排泄の低下
  • 細胞内から血液へのカリウムの移動
  • ホルモンの異常
    • 副腎不全
  • 薬の影響
    • 降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
    • 利尿薬(抗アルドステロン薬)
    • 鎮痛薬(NSAIDs
    • 抗菌薬・抗真菌

高カリウム血症が見つかった場合、こうしたもののうちどれが原因になっているかを突き止めることで、原因に対応した治療につなげることができます。それぞれの原因について詳しくは「原因の章」で説明していきます。ここでは簡単に説明します。

カリウムの過剰摂取

健康な人では通常の食事の中に含まれるカリウム量を問題なく、腎臓から排泄できるので高カリウム血症を起こすことはありません。しかし、腎臓の機能が落ち、カリウムの排泄量が少なくなっている場合には、食事中に含まれるカリウムの量が多いと高カリウム血症を起こすことがあります。カリウムが特に多いものとしては、フルーツ、ナッツ、豆類、サツマイモ、アボカドなどがあります。腎臓の機能が落ちていると言われている人では、上記の食べ物を取りすぎないように気をつける必要があります。

カリウム排泄の低下

身体の中にある余分なカリウムは腎臓から尿などを通じて体外に排出され、身体の中のカリウムの量は一定になるよう調整されています。しかしながら、腎臓の機能が落ちた状態では、カリウムを十分に排泄できず、高カリウム血症を起こします。

細胞内から血液へのカリウムの移動

カリウムは筋肉を動かす時や、神経の信号を伝える時などに体の中で使われます。カリウムは筋肉細胞など、身体の中の様々な細胞の中に含まれている物質です。アシドーシスや横紋筋融解症などがあり細胞の中のカリウムが血液内に放出されると高カリウム血症の原因になります。アシドーシスや横紋筋融解症については「原因の章」で詳しく説明します。

ホルモンの異常

体内のホルモンによってカリウムの濃度は調整されています。カリウムの濃度を下げるホルモンの一つに、副腎皮質ホルモンがあります。副腎が正常に機能しない状態(副腎不全)では副腎皮質ホルモンが不足するため、高カリウム血症を起こします。副腎皮質ホルモンには血糖値やナトリウム濃度を上げる作用もあるため、副腎不全は低血糖低ナトリウム血症を起こすこともあります。副腎不全は他にも倦怠感、体重減少、血圧低下の原因になることもあります。

薬の影響

高カリウム血症は薬の副作用としてあらわれることがあります。薬が原因の高カリウム血症では薬を中止することで改善が見込めますが、もともとの病気の関係で薬を中止できないことも多いので、薬の中止は自分で判断せず、担当の医師と相談するようにしてください。高カリウム血症を起こすことがある薬の例を以下に挙げます。

  • 降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
  • 利尿薬(抗アルドステロン薬)
  • 鎮痛薬(NSAIDs)
  • 抗菌薬・抗真菌薬

それぞれどのような薬であるかについては「原因の章」で詳しく説明します。

4. 高カリウム血症の検査

高カリウム血症が疑われる場合は問診、身体診察、血液検査、尿検査、心電図検査などを行い状態を把握していきます。これらの検査は高カリウム血症の原因や重症度の把握だけでなく、治療方針の決定にも役立てられます。詳しくは「検査の章」で説明していきます。ここでは簡単に説明します。

問診

問診とは医師などの質問に答える形で身体の状態や生活背景を伝えることをいいます。高カリウム血症が疑われる場合には、以下のポイントをよく聞かれます。

  • 何か症状があるか
  • 最近の生活状況について変化があったか
  • 最近の食事量は十分であったか
  • 飲んでいる薬は何かあるか
  • 日頃どれくらいお酒を飲むか
  • もともと持病があるか
  • 家族で何か病気を持っている人はいるか
  • アレルギーがあるか
  • 妊娠はしているか

これらは高カリウム血症の原因を特定する際や治療法を決める上で大事な内容です。わかる範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。

身体診察

身体診察は病気の状況や原因を特定するために身体の状況を客観的に評価することをいいます。問診の次には身体診察を通して、高カリウム血症やその他の病気の可能性を吟味し、行うべき検査内容を決めていきます。具体的には高カリウム血症の重症度を見極めるために脈拍・血圧・呼吸・体温・意識の状態などのチェックや心音・呼吸音の聴診などが行われます。

血液検査

血液検査も高カリウム血症の状態や原因を調べる上で重要です。高カリウム血症の診断は最終的には血液中のカリウムの濃度を測定する必要がありますし、高カリウム血症の原因に関しても血液検査をしないとわからないものもあります。詳しくは「検査の章」で説明しています。

尿検査

尿検査も重要な検査です。具体的には尿中カリウム検査と呼ばれる尿の中のカリウムの量を測る検査が行われます。尿の中のカリウムの量を調べることで、原因の予測に役立ちます。例えば、腎不全などカリウム排泄の低下が原因で高カリウム血症が起きている場合には尿中のカリウムの量は少なくなります。詳しくは「検査の章」で説明しています。

心電図検査

高カリウム血症では不整脈が起こることがありますが、心電図検査を行うことで、不整脈を見つけることができます。高カリウム血症で動悸などの症状がある場合は心電図検査が行われます。動悸の症状がない場合でも何らかの理由で不整脈を起こす危険性が高いと判断された場合には心電図検査を行います。

高カリウム血症で不整脈が持続すると全身に血液が送れなくなる危険性があります。心臓は一定のリズムで収縮することで全身に血液を送っていますが、不整脈があるとこのリズムが乱れてしまうためです。不整脈が続くと命に関わる可能性もありますので、高カリウム血症がある時には不整脈がないか確認する必要があります。心電図検査の方法などについて詳しくは「検査の章」で説明しています。

5. 高カリウム血症の治療

高カリウム血症の治療には、原因にかかわらず行う治療と、個々の原因ごとの治療があります。どの原因でも行う治療には、血液のカリウム濃度を下げる治療や、高カリウム血症により誘発される不整脈を予防する治療が挙げられます。個々の原因ごとの治療は、高カリウム血症を起こす原因自体の解決を図ります。

どの原因でも行う治療

高カリウム血症は血液のカリウム濃度が高いことが不整脈などの差し迫った危険を引き起こすので、カリウム濃度を下げる治療は、原因が何であっても必要な治療になります。カリウム濃度を下げる治療には陽イオン交換樹脂製剤、グルコースインスリン療法(GI療法)、利尿薬などがあります。また、高カリウム血症で、一番怖いことは命に関わる不整脈を起こすことです。高カリウム血症で不整脈を起こす可能性が高いと判断された場合には、不整脈を予防するための治療をします。詳しくは「治療の章」で説明します。

個々の原因ごとの治療

高カリウム血症の原因を探し、原因がわかった場合には、カリウム濃度を下げる治療や不整脈を予防する治療に加えて、原因に対する治療を行います。個々の原因ごとの治療には以下のようなものがあります。

  • カリウムを多く含むものの摂取を控える(カリウムの過剰摂取が原因の場合)
  • 血液透析腎不全が原因の場合)
  • 炭酸水素ナトリウム(アシドーシスが原因の場合)
  • ステロイドホルモンの補充(副腎不全が原因の場合)
  • 薬の中止(薬剤が原因の場合)

詳しくは「治療の章」で説明します。

6. 高カリウム血症の注意点

高カリウム血症を経験したことがある人は高カリウム血症を起こしやすい何らかの原因があることが多いです。例えば、高カリウム血症を起こしやすい持病があったり、高カリウム血症を起こす薬を飲んでいたりします。そのため、過去に高カリウム血症の経験がある人は、高カリウム血症の再発を予防するための注意が大切です。具体的には以下の2点の注意があります。

  • カリウムを多く含むものを食べ過ぎない
  • 以前と同じ症状が出たら病院を受診する

他にも高カリウム血症を起こしやすい人について「注意点の章」で説明しています。ここではほかの状況にもある程度共通する上記2点について説明します。

カリウムを多く含むものを食べ過ぎない

過去に高カリウム血症を経験したことがある人は、カリウムの摂取制限をすることが再発予防につながります。特にバナナなどのフルーツやナッツ、豆類、サツマイモ、アボカドなどはカリウムが多く含まれているので、高カリウム血症を起こしたことがある人では食べ過ぎないように注意する必要があります。また、豆類や芋類に関しては大量の湯で茹でることで、カリウムを落とすなどの工夫もあります。

以前と同じ症状が出たら病院を受診する

過去に高カリウム血症の経験がある人が、以前と同じ症状を自覚した場合、高カリウム血症を起こしている可能性があります。病院を受診して、高カリウム血症を起こしていないか調べてもらうようにしてください。