多発性骨髄腫の人に知っておいてほしいこと
多発性骨髄腫だといわれたら、さまざまな不安や疑問がわいてくると思います。ここでは、治療に際して注意して欲しいことや、再発の可能性、生存率などの気になることについてまとめています。
1. 多発性骨髄腫について知ってほしいこと
多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げていて、さまざまな種類の薬を組み合わせることで、長期にわたって病気を抑え込むことが可能になりました。それに伴って、多発性骨髄腫の人は病気と長く付き合っていく必要があります。ここでは、多発性骨髄腫について知っておきたいことを説明します。
多発性骨髄腫が完治することはあるのか
多発性骨髄腫は血液細胞の
多発性骨髄腫の治療に入院は必要か
多発性骨髄腫の治療ではさまざまな薬剤を組み合わせて行います。薬には点滴が必要なものもあれば、
ただし、自家移植をする人では、点滴で強めの
2. 多発性骨髄腫の治療中に気を付けてほしいこと
多発性骨髄腫の治療薬には、骨髄腫細胞に対する治療効果がある一方で副作用もあります。ここでは副作用とその対応について説明します。多発性骨髄腫の
感染症 による発熱- 吐き気、食欲不振
- 下痢
- 口内炎
この他にも使用する薬剤によって特有の副作用がみられることがあります。治療前にお医者さんの説明をよく聞いて、体調の変化が出てきた時はすぐに相談するようにしてください。
感染症による発熱
多発性骨髄腫の治療を受けている人は、
吐き気、食欲不振
多発性骨髄腫の治療薬によって吐き気や食欲不振が起こることがあります。ひどい吐き気が現れた時は吐き気止めを使うことで軽減できることがあります。また、吐き気を起こしやすい薬を使う時は事前に吐き気止めを使うこともあります。例えば、自家移植のときに使うメルファラン(アルケラン®)という薬は吐き気を起こしやすいので、使い始める前に吐き気止めを服用します。
吐き気が強いと食事を摂れなくなってしまうことがあります。水分摂取ができていれば、食事が数回摂れなくても大きな問題になることはまずありません。しかし、水分摂取もできない状態になってしまった時は点滴が必要なので、お医者さんに相談してください。
下痢
化学療法の影響で腸の粘膜が傷つき下痢が出ることがあります。軽い下痢であれば、しばらくすれば自然に回復することが多いです。しかし、量や回数が多い下痢の時は脱水になることがあるので注意が必要です。また、多発性骨髄腫の治療をしている人は健康な人より
口内炎
口の中の粘膜が傷つくと口内炎ができやすくなります。口内炎の痛みは麻酔薬の入ったうがい薬や内服の
3. 多発性骨髄腫の治療後に気を付けてほしいこと
多発性骨髄腫の治療をした後は、薬剤の影響で免疫機能が低下しています。そのため日常生活の中で「感染症の予防」と「感染症の早期発見」に気を配ることが大事です。
感染症の予防

多発性骨髄腫の治療後には身体の免疫が弱くなっていることが多いので、感染症の予防を心がけてください。具体的には外出時はマスクをし、帰宅したら手洗いを丁寧にするようにしてください。また、感染症の予防のため食事は火が通ったものを食べるのが無難です。食べてよいものか迷う時は、主治医の先生にその都度確認してみてください。
その他にできることとして予防接種があります。骨髄腫の人は感染症の予防のために
注意すべき症状
多発性骨髄腫の治療後には身体の免疫が弱くなっていることが多いので、感染症(肺炎、胃腸炎など)の兆候を見逃さないようにしてください。症状には発熱、咳や痰、下痢などがあります。
また、化学療法で免疫が弱まることで、身体の中に潜伏している
飲酒について
化学療法を行っているときや、
4. 多発性骨髄腫の余命、再発について
多発性骨髄腫と診断を受けた人は、「生存率」や「再発」について気にかかると思います。下記で「生存率」や「再発」について説明しますが、一人ひとりにそのまま当てはまるものではないことや、医療の進歩により現在の数字は下記と異なる可能性が高いことに留意しながら読み進めてもらえたらと思います。
多発性骨髄腫の人の生存率はどれくらいか
多発性骨髄腫の人の生存率は、病気の進行度を表す
- International Staging System(ISS)
- Revised International Staging System(R-ISS)
次に、少し古いデータになりますが、それぞれの分類に沿って詳しく説明します。
■International Staging System(ISS)
これは血液検査でわかるβ2ミクログロブリンとアルブミンの値を元にステージを決める分類です。ステージによって、生存期間が以下のように異なります。
| ステージ | 基準 | 50%生存期間※ |
| I | 血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L 血清アルブミン≧3.5g/dL |
62ヶ月 |
| II | I、III以外 | 44ヶ月 |
| III | 血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L | 29ヶ月 |
※50%生存期間:それぞれのステージの患者のうち50%の人が生存できる期間のこと
ISS分類で計算されている50%生存期間は新しい薬(プロテアソーム阻害薬など)が使われる前のデータなので、現在では生存期間はより長いと予想されます。
■Revised International Staging System(R-ISS)
ISS分類を改良した分類がR-ISS分類です。これは、ISS分類の基準に、
| ステージ | 基準 | |
| I | ISS分類でステージ I かつ 染色体異常なし かつ LDH値が正常 |
82 % |
| II | I、III以外 | 62 % |
| III | ISS分類でステージIII かつ 染色体異常ありまたは LDH値が高値 |
40 % |
※5年生存率:診断から5年後に生存している人の割合
ISS分類よりも新しい分類ではありますが、R-ISS分類でも数字を読むときに注意が必要です。多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げています。この数値は2015年に報告されたもので、ダラツムマブなどの新しい薬剤の効果などは含まれていません。現在ではこの数値よりも高い生存率になる可能性があります。
多発性骨髄腫の再発について
多発性骨髄腫では治療が完了した後に再発することが少なくありません。そのため、治療が終わった人は、定期的に血液検査や尿検査を受けて病気の状態を確認します。これらの検査でM蛋白などを計測することで、再発の兆候を早めに見つけられます。再発の時期は人それぞれで、半年くらいで再発する人もいれば、数年間再発しない人もいます。
再発が確認された人は再度化学療法を行います。年齢や患者さんの状態によっては、もう一度自家移植を行う人もいます。近年多くの治療薬が使われるようになり、これらの薬を使って長期的に病気をコントロールすることができるようになっています。
参考文献
日本血液学会/編, 造血器
Palumbo A, et al. Revised International Staging System for Multiple Myeloma: A Report From International Myeloma Working GroupJ Clin Oncol. 2015; 33(26): 2863-9