きゅうせいりんぱせいはっけつびょう
急性リンパ性白血病(ALL)
骨髄で異常な血液細胞が急激に増殖する病気。「血液細胞のがん」にあたる
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最終更新: 2018.02.08
急性リンパ性白血病(ALL)の基礎知識
POINT 急性リンパ性白血病(ALL)とは
白血病は、骨髄にある造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する過程にある細胞が癌化する病気です。白血病はまず、癌化した細胞がもし成熟したら何になっていたか?によって分類されます。成熟したらリンパ球(白血球の一種)になるだろう細胞が癌化したものをリンパ性白血病と呼びます。また、成熟したらリンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になるだろう細胞が癌化した場合を骨髄性白血病と呼びます。さらに、急激に発症した白血病を急性白血病、ゆっくり進むものを慢性白血病と呼びます。これらを組み合わせて、白血病は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分けられます。急性リンパ性白血病は数日から数週単位で急激に病状が進行します。急性リンパ性白血病の症状としては、正常な血液細胞が作られなくなることによる症状として、感染を起こしやすくなる、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、出血が止まりにくい、などが見られます。白血病細胞が臓器に浸潤する症状として、お腹が張る、歯茎が腫れて痛い、腰や関節が痛い、頭痛や吐き気、リンパ節の腫れなどが見られます。診断は採血検査、骨髄検査、画像検査、染色体検査、遺伝子検査などを用いて行います。治療は抗がん剤が中心となります。骨髄移植が行われる場合もあります。急性リンパ性白血病が心配な方や治療したい方は血液内科や小児科を受診してください。
急性リンパ性白血病(ALL)について
- 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
白血球 :主に病原体や異物と戦う役割リンパ球 は白血球の一種であり、主にウイルス などを攻撃する機能を持つ
赤血球 :主に酸素を輸送する役割血小板 :主に出血を止める役割
- 血液細胞は
骨髄 にある造血幹細胞 が成長して作られる - 白血病は大きく分けて以下の4種類に分けられる
- 急性リンパ性白血病(ALL)は数日から数週間単位で急激に
症状 が進んでいくことが多い - 大人の白血病のうち、ALLは2割ほどを占める
- 日本では毎年1,000-2,000人ほどが新規に急性リンパ性白血病と診断されている
- 男女どちらにも起きる病気だが、男性の方がやや多い傾向がある
- ALLは子ども(2-5歳)にも起きることがあり、小児
悪性腫瘍 の中で最多(年間500人が発症 )である
- 白血病は遺伝子や
染色体 が傷つくことで発症すると考えられている
急性リンパ性白血病(ALL)の症状
急性リンパ性白血病(ALL)の検査・診断
- 血液検査
- 血液細胞の数や、異常な血液細胞の有無を確認する
- 全身の臓器の機能を調べる
- 治療をしていくうえで問題になる
ウイルス 感染の有無を調べる
骨髄 検査- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
- 骨髄を顕微鏡で確認したり、
染色体 検査や遺伝子検査を行う
- 画像検査
レントゲン (X線 )検査やCT 検査で、合併症 の有無を調べる
腰椎穿刺 - 白血病のタイプによっては、特に出血しやすいタイプであったり、特定の薬が効きやすいタイプであったりということがあるため、骨髄検査(遺伝子検査、染色体検査)は診断をつけて、治療法を選択するうえで非常に重要な検査
急性リンパ性白血病(ALL)の治療法
- 診断時には通常、体内に1兆個ほどの白血病細胞が存在する。これをまずは10億個以下ほどに減らすことが治療の初期目標となる
- 白血病細胞が10億個以下ほどになると、顕微鏡で白血病細胞が見えないほどの量になる
- 顕微鏡で白血病細胞が見えないほどまで減ることを「寛解(かんかい)」とよぶ
- 寛解を目指すための初期治療を寛解導入療法といい、強力な
抗がん剤 を使用する - 高齢者や、もともと全身の状態が悪い方の場合には寛解導入療法を施行できないこともある
- 抗がん剤の効きが悪く、寛解導入療法で寛解が得られない場合もある
- 寛解が得られた場合には残存した白血病細胞をさらに減らすために「地固め療法」と呼ばれる
抗がん剤治療 を行うことが多い 化学療法 後に、ドナーがいれば造血幹細胞移植 を行う場合もある- 寛解後に再発するケースも多く、再発した場合には
予後 が良くない場合が多い
- 急性リンパ性白血病はフィラデルフィア(Ph)
染色体 が検出されるかどうかで治療方針が大きく異なる - Ph染色体陰性の場合の治療法
- Ph染色体陽性の場合の治療法
- まずイマチニブによる寛解導入療法を行う
- その後、イマチニブと複数の抗がん剤を併用した地固め療法を行う
- 寛解が得られた場合には造血幹細胞移植を検討する
- 初回で寛解が得られた場合、造血幹細胞移植により3年生存率は60%ほど期待できる
急性リンパ性白血病(ALL)に関連する治療薬
代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)
- DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖に必要なDNAの成分にプリン塩基と呼ばれる物質がある
- 本剤はプリン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でプリン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤毎それぞれの作用により抗腫瘍効果をあらわす
分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔Bcr-Abl〕)
- 白血病細胞の増殖に必要な異常なタンパク質による働きを選択的に阻害し抗腫瘍作用をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 慢性骨髄性白血病では変異した染色体から異常なタンパク質が作られ無秩序な細胞増殖を引き起こす因子となるBcr-Ablチロシンキナーゼという酵素が産生される
- 本剤はBcr-Ablチロシンキナーゼに結合しその活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制作用をあらわす
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
- 本剤の中には消化管間質腫瘍(GIST)に対して抗腫瘍効果をあらわす薬剤もある