過活動膀胱の基礎知識
POINT 過活動膀胱とは
急に我慢できないほどの強い尿意をもよおし、それが繰り返される病気のことです。尿が溜まっていないにも関わらず膀胱の収縮が活発になり、そのため尿が漏れそうな感覚が現れたり排尿回数が極端に多くなったりします。頻尿(排尿回数が多くなること)や、尿意切迫感(尿が漏れそうになる感覚)などの症状は膀胱炎など他の病気でも現れます。このため過活動膀胱を診断するときには他に原因になる病気がないことを確認する必要があります。そして、過活動膀胱症状スコアという問診で条件を満たした場合に診断が確定します。症状がひどくなると生活にも支障をきたすことがあるので飲み薬などで治療を行います。トイレがやけに近いなと思うときには過活動膀胱の可能性があるので泌尿器科を受診して診察を受けて調べてもらってください。
過活動膀胱について
- 膀胱を制御する神経の異常によって、尿意が予期せず突然起こってしまうことを繰り返す状態
- 文字どおり「膀胱が活動し過ぎる」状態を指す
- 膀胱内に尿がそれほど溜まっていない場合であっても、排尿の筋肉が頑張りすぎて、急に尿意をもよおしてしまう
- 女性の
頻尿 の主な原因である
- 主な症状
- 頻尿・夜間排尿
- 主な原因
- 加齢や精神的ストレス
- 溜まった尿の量を感知する膀胱のセンサーが過敏になる
- 脳の中にある排尿を司る部分や
自律神経 の乱れ
- 40歳以上に多く、日本には約1,000万人近い患者がいると言われている
過活動膀胱の症状
- 尿意切迫感
- 尿意が予期せず突然起こり、トイレに駆け込む
- 尿失禁
- トイレに間に合わずに漏れる
頻尿 - 尿が頻繁に出る
- 夜間頻尿
- 寝ていても、尿意で何度も目が覚めてしまう
過活動膀胱の検査・診断
問診 - 過活動膀胱症状質問票(OABSS)などを使って、普段の症状について調べる
- 過活動膀胱症状質問票(過活動膀胱の
診療ガイドライン より)- ①朝起きた時から寝るときまでに何回くらい排尿をしましたか
- 0点:7回以上
- 1点:8-14回
- 2点:15回以上
- ②夜寝てから朝起きるまでに何回くらい尿をするために起きましたか
- 0点:0回
- 1点:1回
- 2点:2回
- 3点:3回
- ③急に尿がしたくなり我慢が難しいことがありましたか
- 0点:なし
- 1点:週に1回より少ない
- 2点:週に1回以上
- 3点:1日1回くらい
- 4点:1日2-4回
- 5点:1日5回以上
- ④急に尿がしたくなり我慢ができず尿を漏らすことがありましたか
- 0点:なし
- 1点:週に1回より少ない
- 2点:週に1回以上
- 3点:1日1回くらい
- 4点:1日2-4回
- 5点:1日5回以上
- 合計点数
- 質問③が2点以上かつ合計点数が3点以上:過活動膀胱の可能性がある
- 5点以下:軽症
- 6-11点:中等症
- 12点以上:重症
- ①朝起きた時から寝るときまでに何回くらい排尿をしましたか
腹部超音波検査 - 尿路(腎臓・
尿管 ・膀胱)に異常がないか検査する - 残尿測定
- トイレに行った後にどの程度の尿が膀胱内に残っているかを調べる
- 尿路(腎臓・
- 尿検査
- 尿中の
白血球 や赤血球 の有無などを調べる
- 尿中の
過活動膀胱の治療法
- 行動療法
- 生活指導
- 排尿日誌などによる水分摂取の適正化
- 膀胱訓練
- 排尿に行きたくなったら我慢して排尿間隔を延長する
- 膀胱容量が多くなり治ることもある
- 生活指導
- 薬物治療(飲み薬)
- 抗コリン薬
- 膀胱の過剰な収縮を抑える
- β3刺激薬
- 膀胱容量を広げる
- 漢方薬
- ボツリヌス毒素
- 筋肉の緊張を和らげる効果があり、膀胱の筋肉にボツリヌス毒素を打ち込む
- 抗コリン薬
- 薬物治療のほかに、電気刺激療法や
神経ブロック (麻酔を用いた治療の一種)、ボトックス注射がある
過活動膀胱に関連する治療薬
抗コリン薬(神経因性膀胱、過活動膀胱)
- 抗コリン作用により膀胱の過剰な収縮を抑え、神経因性膀胱や過活動膀胱などによる尿意切迫感や頻尿などを改善する薬
- 膀胱が勝手に収縮することにより、急にトイレに行きたくなる尿意切迫感や何回もトイレに行きたくなる頻尿などの症状があらわれる
- 神経伝達物質のアセチルコリンは膀胱の収縮に関与し、アセチルコリンの働きを阻害すると膀胱の収縮が抑えられる
- 本剤はアセチルコリンの働きを阻害する作用(抗コリン作用)をあらわす
β3刺激薬
- 膀胱を広げ尿道を縮めることで、尿を蓄えやすくし過活動膀胱による尿意の切迫感や頻尿などを改善する薬
- 過活動膀胱は膀胱が過敏になることによって勝手に膀胱が縮んで急に尿意をもよおしてしまう
- 膀胱の筋肉におけるβ3受容体が刺激を受けると筋肉が緩み膀胱が広がり尿道を縮ませる
- 本剤は膀胱の筋肉におけるβ3受容体を刺激する作用をあらわす
- 過活動膀胱治療薬である抗コリン薬に比べ、本剤は口渇などの副作用が少ないとされる
過活動膀胱の経過と病院探しのポイント
過活動膀胱が心配な方
過活動膀胱は、年齢を経るにしたがって増える病気です。病気というよりも、加齢にともなう体の変化の一つとも考えられます。夜間に何度もトイレで目が覚めてしまったり、尿が我慢できずに漏らしてしまったりといった症状が出ます。
過活動膀胱の診断には、質問表で行います。過活動膀胱症状質問票(OABSS)と呼ばれるもので、尿の回数、夜間の尿意、尿意の切迫感、尿失禁の程度からなる質問集です。自身で試しに回答してみるのも良いでしょう。医療機関ではこれに加え、その他に原因となる別の病気が隠れていないかを確かめるための検査を必要に応じて行います。
ご自身が過活動膀胱でないかと心配になった時、もしかかりつけの内科クリニックがあれば、まずはそこで相談してみるのが良いでしょう。過活動膀胱はとても患者数の多い病気で全国で1000万人を超えると推定されており、一般的な内科でも対応が可能ですが、特に普段かかっている医療機関がなければ、泌尿器科のクリニックの受診が良いでしょう。
過活動膀胱の診断のためには上記OABSSの質問表とともに、普段の尿の様子を詳しく知ることが重要です。受診前に、1日の尿の回数や、夜間の尿の回数をメモしておくと診断の上で参考になります。また、クリニックでは腹部エコーや尿検査を必要に応じて行います。過活動膀胱が原因だと思っていた頻尿が、膀胱炎や膀胱の腫瘍など、別の原因によるものでないことを確かめるためです。
過活動膀胱でお困りの方
過活動膀胱の治療には、薬によるものとそれ以外のものがあります。膀胱の働きを抑えて頻尿を改善させる薬は広く使われており、一般内科のクリニックで処方が可能です。一方で、自力で治そうとする人もいますが、過活動膀胱に対して有効な市販薬ほとんどないために、やはり医療機関を受診して治療するのがよいでしょう。
薬以外の治療としては、自分で尿を我慢できる時間を少しずつ長くできるように膀胱の筋肉をトレーニングしたり、また、膀胱の周りにある筋肉(骨盤底筋群)の筋力トレーニングをしたりすることで、頻尿の改善を目指します。
こういった、薬剤以外の治療については、泌尿器科以外の医師では細かな説明や指導にあまり慣れていません。過活動膀胱で処方を受けていながらもまだ症状が残ってしまう方は、ぜひ泌尿器科のかかりつけ医を作られるようお勧めします。