あるこーるいぞんしょう
アルコール依存症
アルコール(お酒)を飲まないではいられない状態
11人の医師がチェック 228回の改訂 最終更新: 2023.06.12

アルコール依存症で知っておくとよいこと:予防、相談窓口、家族のこと

アルコールにはタバコや麻薬と同じように依存性があります。お酒をたくさん飲む習慣があれば、誰にでも依存が形成される可能性があるため、予防のためにできることを知っておくと安心です。また、アルコール依存症の治療は、はじめるのが早ければ早いほど効果的です。アルコール依存症かもしれないと心配な人は、早めに相談してください。

1. 予防について知りたい人へ

アルコール依存症を予防するには節度のある飲酒量にとどめておくことが重要です。また未成年で飲酒しないことも重要です。

節度のある飲酒量とは

アルコール依存症にならないようにするには、飲まないに越したことはありません。とはいえ、お酒は冠婚葬祭で大きな役割を果たしていますし、普段から飲酒を楽しみにしている人も多いと思います。どれくらいの飲酒量にとどめておけば、アルコールによる悪影響が少なくて済むかという目安として、厚生労働省が「節度のある飲酒量」を提示しています。

【節度のある飲酒量:1日平均の純アルコール量】

  • 男性:20g以下(高齢者、お酒を飲むとすぐに赤くなる人は10g以下
  • 女性:10g以下

【参考資料】

お酒の種類 純アルコール20gに相当する量
ビール (アルコール5%) 500mL ロング缶1本
日本酒 (アルコール14%) 180mL 1合
ウイスキー(アルコール43%) 60mL ダブル1杯
焼酎 (アルコール25%) 100mL グラス1/2杯
ワイン (アルコール12%) 200mL ワイングラス2杯弱

ただし、たとえ節度ある量であっても、飲酒は非飲酒者やアルコール依存症経験者に勧めてよいものではありません。アルコール依存症になったことがある人では、再飲酒により再びコントロールができない状態に戻ってしまうため、少ない量ならば大丈夫と考えずに断酒を続けるようにしてください。

未成年の飲酒について

未成年のうちに飲酒すると、将来アルコール依存症になりやすくなります。はじめて飲酒をした年齢が15歳未満であった人は、20歳以上であった人と比べて、約4倍もなりやすかったという報告があります[1]。また、未成年の飲酒は、アルコール依存症に加えて、うつ、二次性徴の遅れなどの要因にもなるものです。そのほかにもお酒の悪影響は多々あり、これらから身を守るために、未成年の飲酒は法律で禁止されています。

2. アルコール依存症が心配な人へ

飲酒による問題が深刻と感じているようであれば、アルコール依存症である可能性があります。心配な人やその家族は、早めに下記の窓口に相談することをおすすめします。

どの医療機関に相談をすればよいのか

アルコール依存症が心配な人はアルコール依存症を専門にしている精神科や心療内科に相談してください。お酒に関する質問などに答えることで、アルコール依存症であるかどうかがわかります。アルコール依存症と診断されると、基本的には「断酒」を目指して治療することになります。

医療機関の他に相談窓口はないのか

医療機関以外で相談できる窓口として、各地域の保健所や精神保健福祉センターがあります。アルコール依存症かもしれず心配だけれども、医療機関にいきなり行くのはハードルが高いと考えている人には有用です。ただし、予約制のことが多いので、まずは電話などで問い合わせをしてみてください。近隣の保健所や精神保健福祉センターを検索するのに、厚生労働省のホームページが役立ちます(厚生労働省ホームページ「こころもメンテしよう:身近にある地域の相談窓口」のリンク)。

3. 家族がアルコール依存症かもしれないと思ったら

アルコール依存症になると、対人関係でのトラブルや仕事の失敗が重なり生活に支障が出るようになります。身体も壊します。

ご家族の方は心配して、本人の代わりに謝ったり、飲みつぶれたところを迎えに行ったりするかもしれません。しかし、良かれと思って行うこれらの行為は「イネイブリング」と呼ばれ、依存症治療の妨げになると考えられています。本人が飲酒しやすい環境を整えてあげていることになるからです。もし思い当たる節があれば、本人と距離をとるようにするのが大切です。

また、専門の機関を受診してほしいと声をかけても、当の本人は「自分はアルコール依存症ではない」、「付き合いで飲んでいるだけだ」など言い訳をして耳を貸さないことが珍しくありません。

このように本人とのコミュニケーションが難しい場合には、家族だけでも専門の窓口で相談することをお勧めします。問題解決のために本人にどう話したら良いか、逆にどのようなアプローチはすべきではないかなどについて一緒に考えてくれます。

窓口として、アルコール依存症専門外来各地域の保健所精神保健福祉センター、自助グループの家族会があります。家族で悩みを抱え込まずに、ぜひ相談してみてください。

参考文献

1. B F Grant,et al.Age at onset of alcohol use and its association with DSM-IV alcohol abuse and dependence: results from the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey.J Subst Abuse. 1997(9)103-110.
2. 平成27年厚労省障害者総合研究事業 「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン
3. 新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会/監修, 厚労省障害者対策総合研究事業「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社 , 2018