あるこーるいぞんしょう
アルコール依存症
アルコール(お酒)を飲まないではいられない状態
11人の医師がチェック 228回の改訂 最終更新: 2023.06.12

アルコール依存症はどのような病気か:症状、セルフチェック、検査、治療など

アルコール依存症とは、飲酒のタイミングや量をコントロールできなくなってしまう状態です。国内のある調査[1]によれば、生涯のうちにアルコール依存症を経験する人は約107万人、およそ117人に1人にもなります。アルコール依存症が疑わしいかどうか知るためのセルフチェック法をこのページで紹介しますので、心配な人はやってみてください。受診は、精神科や心療内科の「依存症の専門外来」が適しています。治療では心理社会学的治療を柱に断酒を目指すことになります。

1. アルコール依存症の特徴とは

毎日の晩酌が習慣になっている、お酒が好きでよく飲み会をする、というだけではアルコール依存症とは言えません。しかし、下記にリストアップした「アルコール依存症の主な特徴」に当てはまるものがあれば、飲酒をコントロールできなくなっている状態、つまりアルコール依存症かもしれないと考えたほうがよいです。

【アルコール依存症の主な特徴】

  • 飲酒をやめたくても自力ではやめられない
  • ついついお酒のことを考えてしまって、仕事・生活・健康などが、ないがしろになっている
  • お酒を飲まないと離脱症状が現れる(不安、発汗、不眠、身体の震え、吐き気など)

また、アルコール依存症が疑わしいかどうか、受診が必要な状態かどうかを判断する簡易的な方法として、セルフチェック法「AUDIT-C」もあります。次の3つの質問に対して「一番近い」と思う答えを選んでください。その点数の合計を計算して後述の判定基準に当てはめると、アルコール依存症の可能性がわかります。

◎セルフチェック法「AUDIT-C」

質問1:お酒をどのくらいの頻度で飲みますか

0点: 飲まない
1点: 1ヶ月に1度以下
2点: 1ヶ月に2-4度
3点: 1週に2-3度
4点: 1週に4度以上

質問2:飲酒をするときには通常、どのくらいの量を飲みますか(下記にアルコール量の参考資料あり)

0点: アルコール量10-20g相当(ビールならば250-500mL)
1点: アルコール量30-40g相当(ビールならば750-1000mL)
2点: アルコール量50-60g相当(ビールならば1250-1500mL)
3点: アルコール量70-90g相当(ビールならば1750-2000mL)
4点: アルコール量100g相当以上(ビールならば2500mL以上)

質問3:1度にアルコール量60g(ビールならば1500mL)以上、飲酒することがどのくらいの頻度でありますか

0点: ない
1点: 1ヶ月に1度未満
2点: 1ヶ月に1度
3点: 1週に1度
4点: ほとんど毎日

(参考資料:アルコール量20gを含む量の目安)

  • ビール (アルコール5%)  500mL ロング缶1本
  • 日本酒 (アルコール14%) 180mL 1合
  • ウイスキー (アルコール43%) 60mL ダブル1杯
  • 焼酎 (アルコール25%) 100mL グラス1/2杯
  • ワイン (アルコール12%) 200mL ワイングラス2杯

◎判定基準

質問1-3の合計点が、男性であれば5点以上、女性であれば4点以上のときには、アルコール依存症の可能性があります。依存症の専門外来に相談してください。ただし、基準未満の点数であってもアルコール依存症でないとは言い切れません。飲酒による問題が深刻と感じているようであれば、点数にかかわらず受診をお勧めします。

(文献2,3より)

2. アルコール依存症の検査について

アルコール依存症を専門とする診療科は精神科や心療内科です。これらのなかでも特にアルコール依存症専門外来を設けている医療機関に相談するのが良いと考えられます。

検査では主に、飲酒に関する質問に答えてもらうことになります。とくによく聞かれることは、飲酒を優先しすぎて生活・仕事・健康に悪影響が現れていないかどうかです。差し支えのない範囲で構いませんが、できるだけ詳しく伝えるようにしてください。

また、飲酒によって身体がダメージをうけていないか調べるために、血液検査や腹部超音波検査を受けることがあります。大量飲酒で起きやすい肝障害や膵炎といった病気を見つけ出すことができます。

3. アルコール依存症の治療について

アルコール依存症の治療の目標は「断酒」です。断酒しはじめるときは2-3ヶ月間の入院となることが多いです。

入院してお酒をやめると、最初は手の震え、不安、意識障害、けいれん、幻覚といった離脱症状が現れます。このうち不安やけいれんに対してはジアゼパム(セルシン®︎、ホリゾン®など)で抑えることができます。

入院して1週間くらい経つと離脱症状が落ち着いてきます。この頃から、心理社会学的治療がはじまります。心理社会学的治療とは、カウンセリングやグループワークなどを通して、病気を理解し飲酒欲求への適切な対処を目指していく治療法です。

加えて「嫌酒薬」と「断酒補助剤」などの内服薬を使うことがあります。また、同じ病気を抱える人同士が集まり交流し支え合う場である「自助グループ」に参加することも治療になります。

詳しく知りたい人は、「アルコール依存症の治療について」のページも参考にしてください。

4. 家族がアルコール依存症かもしれないと思ったら

アルコール依存症になると健康を害したり社会生活に支障が出たりするようになります。その姿を見て周りの家族は心配になって、お酒をやめるよう促すこともあると思います。しかし、当の本人は「自分のお金で飲んで何が悪いのか」、「自分はアルコール依存症ではない」などといって聞く耳を持たないことが珍しくありません。

このように本人が治療に乗り気でない時には、家族だけでも相談できる窓口があります。たとえば、アルコール依存症専門の医療機関、各地域の保健所や精神保健福祉センターで相談を受け付けています。問題解決に向けて本人とどのようにコミュニケーションをとったらよいのか教えてくれたり、どのような対処法が適切か一緒に考えてくれたりしてくれます。抱え込まずに上手く活用してください。

5. ガイドラインについて

患者さん向けガイドラインとして、「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン」があります。アルコール依存症の患者さんとその家族や友人が、知っておくとよいことについて、詳しく記載されています。

参考文献

1. Osaki Y, et al. Prevalence and Trends in Alcohol Dependence and Alcohol Use Disorders in Japanese Adults; Results from Periodical Nationwide Surveys.Alcohol Alcohol 2016;51(4)465-473.
2. Kristen Bush,et al. The AUDIT alcohol consumption questions (AUDIT-C): an effective brief screening test for problem drinking. 1998;158(16):1789-1795.
3. 新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会/監修, 厚労省障害者対策総合研究事業「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社 , 2018
4. 厚労省障害者対策総合研究事業 「市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン」