あるこーるいぞんしょう
アルコール依存症
アルコール(お酒)を飲まないではいられない状態
11人の医師がチェック 228回の改訂 最終更新: 2023.06.12

アルコール依存症の検査について:問診、身体診察、血液検査など

アルコール依存症とは飲酒のタイミングや量をコントロールできない状態です。アルコール依存症が心配な人は依存症の専門外来に相談して、お酒に関する質問に答えることで、アルコール依存症のなのかどうか調べることができます。また、アルコールによってダメージを受けがちな肝臓や膵臓などに異常がないか調べるため、血液検査や画像検査が有用です。

1. 問診ではどのようなことを聞かれるのか

アルコール依存症をチェックする方法としてCAGEやAUDITなどの質問表が使われます。ここでは、簡単なスクリーニングテストとして、4つの質問からなる「CAGE」を紹介します。

  • 飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがあるか(Cut down)
  • 周りの人にあなたの飲酒を非難されて、イライラしたりうるさいと感じたことがあるか(Annoyed by criticism)
  • お酒を飲むことに対して後ろめたさを感じたことがあるか(Guilty feelings)
  • 飲酒した翌日に「迎え酒」をしたことがあるか(Eye opener)

これらの質問に当てはまるものがあれば、アルコール依存症の可能性があると考えられます。

参考文献:Ewing J A. : JAMA. 1984 Oct 12;252(14):1905-7.

また、下記のようなことを聞かれることもあります。

  • どれくらいお酒を飲むか(1回で飲む量、頻度)
  • お酒を朝から飲んでしまうことがあるか
  • 飲酒を優先しすぎて、生活・仕事・健康に支障をきたしていないか
  • 以前よりも多くお酒を飲まないと酔わなくなったか
  • お酒のことを考えない時間があるか
  • 不安、不眠、幻覚などの精神的な症状があるか

受診前にこれらの質問の答えをあらかじめ考えておくと、状況をもれなく伝えやすくなります。

2. 身体診察について

身体診察とは、お医者さんが身体を見たり触れたりして、全身の状態を調べることです。意識レベル、手の震えの有無、歩き方などからアルコールの離脱症状がみつかることがあります。また、腹部の状態や身体のむくみ具合などを調べる診察によって、アルコール依存症の人が合併しがちな肝障害や膵炎などが見つかることがあります。

3. 血液検査について

長年たくさんお酒を飲み続けると、全身のさまざまな臓器が障害されます。肝臓と膵臓はその代表的な臓器ですが、多少ダメージを受けても自覚症状がほとんど出ないため、血液検査で早くみつけて対応することが大切です。アルコール依存症の人は下記の血液検査をすることが多いです。

  • 肝機能検査(AST、ALT、総ビリルビンLDH、γGT、ALP)
  • 肝硬変の検査(ヒアルロン酸、IV型コラーゲン、プロトロンビン時間、血小板数)
  • 膵臓の検査(アミラーゼ、リパーゼ)
  • 糖尿病の検査(HbA1c、血糖
  • ビタミン検査(ビタミンB1、葉酸)

多量のアルコール摂取は糖尿病のリスクになること、またアルコール依存症の人ではビタミン欠乏症になりやすいことから、これらの血液検査も行われます。

4. 画像検査について

アルコールによる肝臓・膵臓・脳などの臓器へのダメージを調べるのに腹部超音波検査頭部CTMRI検査などの画像検査が役立ちます。

腹部超音波(エコー)検査

超音波は人間には聞こえない高い音のことです。超音波を発生するプローブとよばれる機械をお腹に押し当てて検査をします。臓器まで到達し跳ね返ってきた超音波の量を測定することで、臓器の様子を画像として見ることができます。超音波検査では副作用の心配はありません。アルコール依存症の人が合併しがちな肝障害や膵炎などの病気を見つけられます。

頭部CT・MRI検査

頭部CT検査では放射線、頭部MRI検査では磁力を使うことによって、頭の中の様子を断面図として画像化します。アルコール依存症が引きおこす症状のうち、ふらつき、けいれん、意識障害といったものは、脳神経の病気(脳卒中脳腫瘍、脳炎など)でも生じうるものです。これらの病気を見分けるために、頭部CT・MRI検査が有用です。

参考文献

新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会/監修, 厚労省障害者対策総合研究事業「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社 , 2018