こうじょうせんがん
甲状腺がん
甲状腺にできるがんのこと。様々なタイプがあるが、甲状腺乳頭がんというタイプが非常に多い
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最終更新: 2024.10.30
甲状腺がんの基礎知識
POINT 甲状腺がんとは
甲状腺にできるがんのことで、90%以上が進行が遅い甲状腺乳頭がんです。その他に濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫などがあります。症状は甲状腺のしこりが最も多く、頸部のリンパ節に転移した場合は、頸部のしこりを触れます。診断は甲状腺超音波を行い、腫瘍に針を刺して細胞を調べる検査で行います。その他に、血液検査、頸部CT検査、PET-CT検査などを行います。治療は原則として手術で腫瘍を切除します。進行度やがんの分類に応じて、放射線のはいった薬を内服する治療や、甲状腺ホルモンを補充することで再発を防ぐ治療を行います。甲状腺のしこりの原因は様々であり、まずは一般内科の受診で構いません。手術などの治療は耳鼻咽喉科や甲状腺外科で行います。
甲状腺がんについて
- 甲状腺がんとは
甲状腺 にできるがん のこと- 甲状腺は首の前部、のどぼとけのすぐ下にある臓器
- 気管の前に蝶の形のように、左右に広がる形をしている
- 全身の
代謝 を高める甲状腺ホルモン を分泌する
- 甲状腺がんは全てのがんの1%ほどで、女性に多い(男性の約3倍)
- 甲状腺がんは大きく5つの種類に分けられる
- 甲状腺がんになりやすい人の特徴
甲状腺がんの症状
がん の初期は無症状であることが多い- 健康診断の触診や
頸動脈超音波検査 などで偶然見つかることもある
- 健康診断の触診や
- がんが大きくなると、
甲状腺 のしこりとして触れる- 首の
リンパ節 に転移 すると、首にしこりを触れることがある - 甲状腺にあるがんが、触れないほど小さい場合でも、首のリンパ節に転移していることもある
- 首の
- がんが進行すると声がれや、飲み込みづらさが出ることがある
- 声帯を動かす神経が
麻痺 して声がれが起こる - 声帯が麻痺すると、むせやすくなり、飲み込みにくさが出る
- 声帯を動かす神経が
- 未分化がんでは頸部の痛みがでる
甲状腺がんの検査・診断
頸部超音波検査 (エコー 検査)喉頭ファイバー スコープ検査- 声がれがある場合には、声帯の
麻痺 がないかを調べる - 鼻から細くて柔らかい
カメラ を入れて、のどの奥を観察する
- 声がれがある場合には、声帯の
- 血液検査
甲状腺 機能検査など- 髄様
がん では遺伝子検査、腫瘍マーカー など(カルシトニン、CEA)
- 病理検査
- がんを疑うしこりに針を刺して細胞を取り、悪性の細胞がないかを顕微鏡で調べる
- 濾胞がんでは、
細胞診 のみでは診断が難しく、術後の確定診断になる
- 頸部
CT 検査腫瘍 の位置を調べたり、頸部リンパ節転移 がないか調べる
PET-CT検査 - 全身に
転移 がないかどうかを調べる
- 全身に
- がんの進行度(
病期 、ステージ )は「がんの大きさ」「リンパ節 への転移の程度」「甲状腺から離れた臓器への転移の有無」で決定される
甲状腺がんの治療法
手術で
がん を切除するのが治療の原則放射線治療 や化学療法 (抗がん剤 での治療)は効果が乏しい- 組織型別の手術治療
- 乳頭がん、濾胞がん、髄様がんは積極的に手術をすることが多い
- 未分化がんでは進行が早く手術適応にならないことも多い
- 悪性リンパ腫は手術は行わない
- がんの広がりの程度で、
甲状腺 のとる範囲を決める- 甲状腺全摘術:甲状腺を全て摘出する
- 甲状腺葉峡部切除術:がんのある甲状腺を摘出する
- 遺伝性の髄様がんでは片側のがんでも、甲状腺全摘術を行う
腫瘍 の切除に加えて甲状腺の周りのリンパ節 の摘出を行う- 首に
リンパ節転移 がある場合は、首のリンパ節を全体的に摘出する手術を行う(頸部郭清術:けいぶかくせいじゅつ)
進行の程度で甲状腺全摘術後に追加治療を行う
- TSH抑制療法
- 乳頭がん、濾胞がんに行う治療
- 甲状腺がんを成長させるTSHという
ホルモン の分泌を抑制する治療 甲状腺ホルモン を多めに内服して、TSHを低い値に保つ
- 放射性ヨード内用療法
- 放射線のついたヨードを内服して、手術後に残存した目に見えない大きさの甲状腺組織を取り除く治療
- アブレーションとも呼ばれる
- 分子標的薬
- 抗がん剤のひとつ
- 再発甲状腺がんで、放射性ヨード内用療法の効果がなくなった場合に使用する
- TSH抑制療法
手術後に甲状腺ホルモン、カルシウムを維持する飲み薬を必要とすることがある
- 甲状腺を全て摘出した場合は、甲状腺ホルモンを一生内服する
- 甲状腺の裏にある副甲状腺を一緒に摘出した場合には、カルシウムなどの飲み薬が必要
ビタミンD 製剤:通常ビタミンD製剤のみの内服で、カルシウムの維持が可能- カルシウム製剤:ビタミンD製剤のみでカルシウムを維持できない場合に内服する
長期間を経て再発することも多いので、10年以上の外来通院での
経過観察 を必要とする
甲状腺がんに関連する治療薬
分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔レンバチニブメシル酸塩製剤〕)
- がん細胞の増殖に必要な血管新生などに関わる受容体チロシンキナーゼを阻害し血管内皮細胞増殖阻害作用などにより抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで正常な細胞を障害し組織を壊す
- 腫瘍細胞の血管新生などに関与する受容体チロシンキナーゼに血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)などがある
- 本剤はVEGFRやFGFRなどの受容体チロシンキナーゼ阻害作用により抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる