きゅうせいだいどうみゃくかいり
急性大動脈解離
心臓から出る、身体の中の一番大きな血管(大動脈)が、裂けてしまった状態。命に関わることが多く、しばしば緊急治療が必要となる
21人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2023.01.04

急性大動脈解離とはどんな病気なのか:症状・原因・検査・治療など

急性大動脈解離とは、大動脈(心臓から全身に血液を送るための血管)に亀裂が入る病気です。命に関わるので、一刻も早い受診が望ましいです。このページでは、急性大動脈解離の全体像として、症状や原因、検査、治療などを説明します。

1. 急性大動脈解離とはどんな病気なのか

急性大動脈解離を発症するのは、1年間に10万人あたり3人といわれ、比較的まれな病気の部類です。しかしながら、命に関わる病気なので、見過ごすことはできません。

急性大動脈解離の治療は速やかに始める必要がある

急性大動脈解離から命を救うには一刻も早く治療を始めなければなりません。6割超の人が病院までたどり着くことなく死亡するという報告もあることから、解離を疑うような症状がある場合は、速やかに医療機関に行くことが何より重要です。

急性大動脈解離が起こるとさまざまな臓器に影響が及ぶ

大動脈は心臓とつながる最も太い血管です。大動脈からいくつもの血管が枝分かれして、さまざまな臓器(脳や腸、腎臓、腕、足など)に酸素や栄養を送っています。そのため、大動脈解離が起こると、臓器の血流が低下し、悪影響が現れます。例えば、脳の血流が低下して力が入らなくなることもありますし、腎臓の血流が低下して腎機能が低下することもあります。

大動脈(心臓から全身に血液を送るための血管)

急性大動脈解離と大動脈瘤の違いについて

急性大動脈解離と大動脈瘤は名前は似ていますが、異なる病気です。 大動脈解離は大動脈に亀裂が入る病気のことです。一方で、大動脈瘤は大動脈が瘤(こぶ)のように膨らむ病気です。症状にも違いがあります。大動脈瘤は無症状なことも多いのですが、急性大動脈解離になると突然の胸痛や背部痛が現れます。書物やインターネットで情報を収集する際には両者の違いに注意してください。

2. 急性大動脈解離の人によく見られる症状について:突然の胸痛・背部痛、意識消失など

急性大動脈解離の症状は解離の程度や起きた場所によってさまざまな形で現れます。

  • 急性大動脈解離でみられる典型的な症状について
    • 解離に伴う痛み:突然の胸痛・背部痛
    • 解離が重症になったときに見られる症状:ショック症状(失神、血圧低下)

上記の症状は典型的なものですが、重症度やもともとの全身状態、解離が起きた場所によって症状が異なります。

  • 胸部の大動脈解離で見られる症状について
    • 心臓の症状:胸の重苦しさ、激しい動悸
    • 気管支や肺の症状:息苦しさなど
    • 神経の症状:麻痺する、飲み込みにくさなど
    • 腕の症状:腕の痛みや冷感
    • その他の症状:浮腫み(むくみ)、腕の血圧の左右差など
  • 腹部の大動脈解離で見られる症状について
    • 胃や腸の症状:腹痛、気持ち悪さ、お腹の張りなど
    • 腎臓の症状:背部痛、血尿など
    • 足の症状:足の痛みや冷感など

症状についてより詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

3. 急性大動脈解離が起こる原因について:どんな持病のある人に起こりやすいのか

急性大動脈解離の原因についてはまだ未解明な部分があり、はっきりとはわかっていません。一方で、急性大動脈解離のリスクを上昇させる要因がいくつか知られています。「先天的な要因」と「後天的な要因」に分けると次のようになります。

上記の要因に当てはまる人は、当てはまらない人に比べて急性大動脈解離のリスクが高いと考えられます。要因の中には先天的な病気など避けることが難しいものが含まれていますが、解決が可能な要因もあります。その筆頭に挙げられるのが禁煙です。高血圧症糖尿病脂質異常症などの病気も、治療でコントロールすることで大動脈解離の予防に寄与する可能性があります。それぞれの要因の治療についてはリンク先を参考にしてください。

4. 急性大動脈解離の検査について:身体診察や画像検査など

症状などから急性大動脈解離が疑われる人には診察や検査が行われ、「大動脈解離かどうか」や「大動脈解離の程度」が調べられます。

【急性大動脈解離が疑われる人に行われる診察や検査】

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 画像検査
    • 単純レントゲンX線)検査
    • 腹部CT検査
    • 血管造影検査
    • 超音波検査
    • 腹部MRI検査

診察や検査のなかでも血液検査や腹部CT検査は急性大動脈解離が疑われた多くの人が受けることになる検査です。胸腹部CT検査は血管がダメージを受けている状況を客観的に把握するために重要です。また、血液検査の結果から臓器へのダメージを推定できる場合があります。それぞれの検査についてより詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。

5. 急性大動脈解離の治療について:手術と内科治療について

急性大動脈解離の治療には手術と内科治療がの2つがあります。手術では解離を起こした血管を人工血管に置き換えます。一方で、内科治療では薬で血圧の管理や痛みのコントロールをし、解離の進行を抑えます。 手術を行うかどうかの判断には「スタンフォード分類」というものが参考にされます。

【スタンフォード分類】

  • スタンフォードA型:上行大動脈に解離があるもの
  • スタンフォードB型:上行大動脈に解離がなく、下行大動脈だけに解離があるもの

スタンフォード分類は、上行大動脈に解離が起こっているかどうかで、大動脈解離を2つに大別するものです。上行大動脈は心臓から出た大動脈が頭側に向かって伸びる部分のことを指します。例外はありますが、スタンフォードA型には手術、スタンフォードB型には内科治療が行われます。

手術や内科治療の詳しい内容やそれぞれの例外については「こちらのページ」で詳しく説明しているので、参考にしてください。

参考文献

・「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2020年改訂版」(2020.10.31閲覧)