[医師監修・作成]急性大動脈解離の検査について | MEDLEY(メドレー)
きゅうせいだいどうみゃくかいり
急性大動脈解離
心臓から出る、身体の中の一番大きな血管(大動脈)が、裂けてしまった状態。命に関わることが多く、しばしば緊急治療が必要となる
21人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2020.11.01

急性大動脈解離の検査について

急性大動脈解離が疑われる症状がある人には画像検査(主に超音波検査CT検査)や血液検査が行われ、急性大動脈解離の有無や重症度が調べられます。特に、画像検査は治療法を選ぶ際の決め手になることが多いので重要です。

1. 急性大動脈解離の診察や検査の目的と種類について

急性大動脈解離は突然死の原因ともなる一刻を争う病気です。診察や検査は下のようにいくつかありますが、急性大動脈解離の疑いが強い場合は、診断の決め手となる画像検査が迅速に行われます。

【急性大動脈解離が疑われる人に行われる検査の例】

  • 問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 画像検査
    • 単純レントゲンX線)検査
    • 腹部CT検査
    • 血管造影検査
    • 超音波検査
    • 腹部MRI検査

上記のうち画像検査が特に重要です。画像検査によって急性大動脈解離が起こっているかどうかの判断や程度の把握ができます。

2. 問診

問診は対話形式による診察です。お医者さんが患者さんの話から症状を詳しく把握し、症状の原因が急性大動脈解離によるものか、その他の疾患によるものかを推測します。問診では身体の状況だけでなく、普段の生活や過去の病気の状況などについても聞かれます。 患者さんが意識消失しているなど受け答えが難しい場合には、付き添いの人や普段生活を共にしている人、患者さんの家族などが質問に答えてください。

【急性大動脈解離が疑われる人への問診例】

  • どんな症状があるか
  • 症状はいつからどの程度あるか
  • 痛みがある場合、痛みの場所が移動したり広がったりすることはあったか
  • 過去に同じような症状を経験したことはあるか
  • 痛み止めに代表される市販薬は使ったか
  • 持病や過去にかかった病気はあるか
  • 持病がある場合には内服中の薬は何か
  • 喫煙歴はあるか
  • 飲酒歴はあるか
  • 家族に大動脈解離や大動脈瘤になった人がいるか

急性大動脈解離が起こると突然激しく胸や背中が痛みますが、その他に息苦しさ、お腹の痛み、足の痛みなども現れます。似たような症状が現れる病気は他にもあるので、お医者さんは、患者さんの話から他の病気の可能性を除外したり、診断のあたりをつけます。

3. 身体診察:バイタルサイン、視診、聴診など

身体診察とは、身体を触ったり、聴診器を使って身体の中の音を聞いたりする診察のことです。問診で得た内容をさらに詳しく調べる目的で行います。身体診察にはいくつか種類があります。

【身体診察の種類】

  • 視診:主に外見の観察すること
  • 聴診:主に聴診器を使って身体の内部の音を聞くこと
  • 打診:身体を軽く叩いて調べること
  • 触診:身体に触れて調べること
  • バイタルサインの測定

次にそれぞれの内容について一つひとつ掘り下げて説明します。

視診

視診は全身の見た目を観察する診察方法です。身体の凹凸の変化や色の変化などが起こる病気は視診で異常がわかります。大動脈解離でも視診から疑われることがあります。例えば、大動脈解離になって急性心不全が引き起こされると頸静脈怒張(けいじょうみゃくどちょう)と浮腫(ふしゅ)が見られます。頸静脈は首の前側に左右で1本ずつある血管で、怒張というのは血管が膨れて浮き上がって見えることです。浮腫とはむくみのことです。

聴診

聴診器を用いて身体で起こる音を聞く診察方法を聴診といいます。この方法では肺の音や腸の音、血管を通る血液の音など多くの音を聞くことができます。正常な音と比較することによって、異常を見つけることができます。

打診

打診は身体の一部を軽く叩くことで反応をみる診察方法です。叩いたときの音や振動の伝わり方を調べることで、身体の中で起こっている変化を探知します。

触診

触診は身体の一部を念入りに触ったり押したりすることで異常を探知する診察方法です。正常であれば存在しないはずのしこりや、押すことで現れる痛みを探知したりすることで、体内の様子を推定できます。

バイタルサインの測定

バイタルサインとは生命徴候という意味の医学用語です。一般的にバイタルサインは「脈拍数」、「呼吸数」、「体温」、「血圧」、「意識状態」の5つを指します。ここに、身体に酸素が行き渡っているかを調べる「酸素飽和度」を加えることもあります。命に危険が及ぶと、バイタルサインが正常な範囲から外れた値を示すことが多いです。例えば、急性大動脈解離によって身体に血液が十分に送れないようになると、血圧が正常な値を下回ります。

バイタルサインの測定は全身状態をいち早く把握するために重要です。

4. 血液検査

血液検査は大動脈解離に特徴的な異常を見つけられる検査ではありませんが、全身状態の把握に欠かせないものです。さまざまな検査項目がありますが、大動脈解離が疑わしい場合には、血液凝固能を示す項目が注目されます。

血液の凝固機能は、血液を固める作用と血液をさらさらにする作用の二つがあり、そのバランスによって決まります。血液検査ではこれらの作用に異常がないかを確認します。急性大動脈解離が起こると血液を固める作用が強く働くため、血液検査では凝固能が亢進した状態として確認されることが多いです。凝固能亢進の目安となるのはD-ダイマーという検査項目です。

また、大動脈解離が起きると、さまざまな臓器の血流が低下します。血流が低下した影響によって炎症やダメージが生じるため、血液検査に異常が現れます。例えば、腎臓の機能が低下している場合にはクレアチニンという血液検査項目が上昇しますし、炎症反応が起こるとCRPが上昇します。

血液検査は有用なのですが、絶対的な検査ではありません。大動脈解離であれば必ず異常値となる血液検査項目はありませんし、反対に大動脈解離ではないことを保証してくれる血液検査項目もありません。診断は、そのほかの検査も踏まえて総合的に行われます。

5. 心電図検査

心臓は微細な電気信号で動いています。この電気信号の大きさや向きを調べることで心臓に起こっている異常を見つけようとする検査が心電図検査です。健康診断などで経験がある人も多いかもしれません。 心電図検査では手足や胸に電気をキャッチする装置をつけて行われます。心電図と聞くと、「電気を流して調べる検査」と想像する人も少なくはありませんが、そうではありません。通常の心電図検査であれば、横になって安静にしているだけで、痛みもなく測定が完了します。

大動脈解離では心電図に異常が現れることもあれば、ない場合もあります。大動脈解離かどうかの結論を出すためではなく、他の検査と総合して判断するときの材料として心電図検査が行われます。

6. 画像検査

画像検査は急性大動脈解離の診断の決め手となる検査です。大動脈解離の有無と同時に、その程度も知ることができます。

【急性大動脈解離が疑われる人に行われる画像検査】

  • 単純レントゲン(X線)検査
  • 腹部超音波腹部エコー)検査
  • 胸腹部CT検査
  • 血管造影検査
  • 胸腹部MRI検査

この中でも、胸腹部CT検査は、大動脈解離が起きている範囲や臓器への血流の有無を調べられるので重要です。

単純レントゲン(X線)検査

心臓や肺などの異常が疑われる人には胸部レントゲン(X線)検査が行われます。放射線を使った検査です。 大動脈解離が起こっていると、縦隔(じゅうかく)とよばれる場所に異常が見られます。縦隔とは左右の肺の間のすきまのことで、ここに心臓や大動脈があります。有用なこともあるX線検査ですが、X線検査だけで急性大動脈解離の有無を判断できるとは限りませんし、程度についての情報は十分ではありません。より確実に判断するために次で説明するCT検査が行われます。

胸腹部CT検査

CT検査はレントゲン(X線)を使った検査ですが、レントゲン検査より精密な画像を得ることができ、身体の中を断面として観察することができます。また、造影剤という薬剤を血管内に注射して撮影すると、血管の形をくっきりと写し出すことができます。この方法を「造影CT検査」といいます。造影CT検査を行うと大動脈の異常の有無を詳しく確認できるので、急性大動脈解離の診断の決め手になることが多いです。

血管造影検査

血管造影検査とは、カテーテルという細い管を血管の中に入れて、血管の形状を調べる検査です。X線検査やCT検査と同様に放射線を使います。

患者さんは寝台で寝ている状態で検査を受けます。腕や足の付け根の血管から針を刺してカテーテルを挿入し、確認したい場所までカテーテルの先端を進めて造影剤を注入します。さまざまな角度から撮影を行えるので、血管や心臓の様子を立体的に把握できるという利点があります。 しかし、やや時間がかかるという点において、一刻一秒を争う大動脈解離の検査としては不向きであり、現在では数分で行えるCT検査に取って代わられています。。

超音波(エコー)検査

エコー検査は超音波を利用した検査です。放射線は使用しないので被曝の心配はありません。大動脈解離で行われる超音波検査には「心臓超音波検査」、「腹部超音波検査」、「経食道超音波検査」の3つがあります。いずれも、大動脈解離の程度を観察したり、他の病気の可能性を調べるために行われます。

■心臓超音波検査

心臓超音波検査では次の点をみることができます。

  • 心臓の動き
  • 心臓の大きさや形
  • 心臓にある弁の形
  • 心臓内部の血液の流れ

大動脈解離の範囲が心臓まで及ぶと、その影響で心臓超音波検査に異常がみられます。例えば心タンポナーデが起こっていると、心臓周囲に液体の溜りがみられ、心臓が十分に拡張できない様子が観察できます。

心臓超音波検査のより詳しい内容については「こちらのページ」も参考にしてください。

■腹部超音波検査

腹部の大動脈解離が疑われる場合や、他の病気の可能性を探る目的で行われます。例えば、腹痛は腹部大動脈解離で見られる症状ですが、胃や腸などの病気でも見られます。腹部超音波検査では、大動脈の観察とともにお腹の中にある他の臓器も同時に調べることができます。

■経食道超音波検査

CT検査で大動脈解離がはっきりしない場合や、より詳細に大動脈の状態を調べたい場合には、経食道超音波検査が行われます。被曝がなく繰り返し行いやすい検査なので、手術をせずに様子を見ている人の状態を調べるのに使われたりもします。

胸腹部MRI検査

MRI検査は磁気を利用した検査です。CT検査と同様に身体の中を断面として観察することができ、より詳細に調べることができます。ただし、CT検査に比べて検査時間が長く、一刻を争う大動脈解離の検査としては向いていない側面があります。このため、緊急の時や全身状態が不安定な時に積極的に行われることはありません。しかし、造影剤アレルギーがあったり、腎機能が低下していて造影CT検査が受けられない人などには、MRI検査が積極的に検討されます。

参考文献

・「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2020年改訂版」(2020.3.25閲覧)