[医師監修・作成]急性大動脈解離の症状について | MEDLEY(メドレー)
きゅうせいだいどうみゃくかいり
急性大動脈解離
心臓から出る、身体の中の一番大きな血管(大動脈)が、裂けてしまった状態。命に関わることが多く、しばしば緊急治療が必要となる
21人の医師がチェック 187回の改訂 最終更新: 2020.11.01

急性大動脈解離の症状について

急性大動脈解離とは、大動脈(心臓から全身に向かって血液を送る最も太い動脈)の壁が裂けた病気です。主な症状には突然の胸の痛みや、背中の痛みなどがあります。程度が重い場合は、意識を消失したり、呼吸ができなくなったりします。このページでは大動脈解離の症状を掘り下げて説明します。

1. 急性大動脈解離の症状は程度によって異なる

大動脈解離の程度によって現れる症状が異なります。ここではよく見られる症状と、重症化したときの症状について説明します(臓器がダメージを受けたことによる症状については後述します)。

よくみられる症状について:突然の胸痛・背部痛

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大動脈解離が起こり血管の壁が裂けると、胸や背中に強い痛みが突然現われます。また、痛みの場所が移動することも特徴の1つです。例えば、胸の位置で生じた血管の裂け目がお腹まで広がると、それにともない痛みが胸からお腹へ移動します。

重症になったときに見られる症状について:ショック症状(失神、血圧低下)など

大動脈解離が重症化すると、「大動脈の破裂」や「心タンポナーデ」が起こります。これらが起こると、救命が簡単ではなくなります。

■大動脈の破裂

大動脈が破裂すると大量出血が起こります。大出血により、全身に行き渡る血液が足りなくなり、さまざまな症状が現れます。例えば、頭部への血液が不足すると、顔色が蒼白になったり、気分が悪くなったり、失神して突然倒れたりします。破裂の程度がひどいと、症状が現れてから、またたく間に命を失うことも珍しくはありません。

心タンポナーデ

大動脈解離の範囲が心臓と大動脈のつなぎ目付近にまで及ぶと、心タンポナーデが起こることがあります。心タンポナーデとは、心臓を包んでいる心膜と心臓の隙間に液体が大量に溜まることです。

心タンポナーデで見られやすい症状】

  • 脈拍が早くなる
  • 呼吸困難になる
  • 手足が冷たくなる
  • 意識を失う

心臓の周りに溜まった液体の影響で、心臓は圧迫されて動きづらくなります。その結果、全身に血液を送るポンプの働きをすることができなくなり、全身が酸素不足になります。

2. 症状は解離の起こった血管の位置によって異なる

下図のように、心臓から出た大動脈は頭側に伸びて、ヘアピンカーブのようにU字を描いて足側方向に向かいます。

【大動脈】

大動脈の走り方(胸部大動脈と腹部大動脈)

大動脈は胸からお腹まで長く伸び、その途中で枝分かれした血管がさまざまな臓器に血液を送っています。臓器に向かう血管の入り口付近で解離が起きると、臓器への血流が落ちて機能が低下します。

大動脈解離は胸部大動脈と腹部大動脈で大別できるので、それぞれを分けた形で症状を説明していきます。

胸部大動脈に解離が起こったときに見られやすい症状:胸が重苦しさ、動悸など

おおざっぱにいうと、胸部大動脈は身体の胸から上に血液を送っています。このため、胸部大動脈に解離が起こると、主に心臓や脳、手足に影響が現れます。

■心臓に与える影響とそれに伴う症状

大動脈解離によって、冠動脈(心臓に栄養を与える血管)がダメージを受けると、心臓に十分な酸素や栄養が届かなくなります。この状態を「心筋虚血」と言います。心筋虚血が起こると、胸の重苦しさや、動悸といった症状が現れます。ダメージが大きいと、心臓が止まってしまうこともあります。また、心筋虚血によって心臓の機能が低下すると、息切れや呼吸困難、身体のむくみなどの症状もみられます。

■脳に与える影響とそれに伴う症状

大動脈解離の影響で脳に向かう血管がダメージを受けることもあります。脳の血流が低下すると、脳から出る身体への司令が届きにくくなり、「身体の力がはいりにくい」「飲み込みにくい」「ろれつが回らない」といった症状が現れます。また、脳の血流が著しく低下すると意識を失います。

■腕や手に与える影響とそれに伴う症状

大動脈解離によって腕に向かう血管がダメージを受けると、腕が痛んだり、冷たくなったりします。腕に向かう血管は左右別々の枝分かれになっているため、解離が起きた位置によって片側の腕だけに症状が現れることもあれば、両方の腕に症状が現れることもあります。

腹部大動脈に解離が起こったときに見られやすい症状:腹痛、血便、腹部膨満感など

胸部大動脈が身体の胸から上に血液を送っているのに対して、腹部大動脈は胸から下に血液を送っています。このため、腹部大動脈に解離が起こると、主にお腹にある臓器や足などに影響が現れます。

■腸に与える影響とそれに伴う症状

腹部の大動脈からは、腸に向かう血管がいくつか枝分かれしています。腸に酸素や栄養を届ける血管が解離によってダメージを受けると、腸の血流が低下します(腸管虚血)。

腸管虚血になると、強い腹痛や、吐き気、血便(便に血がまじる)、腹部膨満感(お腹の張り)などのさまざまな症状が現れます。腸は虚血状態に弱く、壊死(細胞が死滅すること)しやすいです。腸が壊死した場合は、手術で壊死した部分を切除する必要があります。

■腎臓に与える影響とそれに伴う症状

腰よりやや上の位置には尿を作り出す腎臓という臓器があります。大動脈解離によって腎臓に向かう血管がダメージを受けると、腎臓の血流が悪くなり機能が低下します。背中の痛みや血尿(尿に血が混じること)といった症状が現れます。程度が重いと、腎臓の機能が低下して(腎不全血液透析が必要になることがあります。

■足に与える影響とそれに伴う症状

大動脈から別れて足に向かう血管の血流が低下すると、足の痛みや脱力、冷感(冷たくなること)が現れます。血流が著しく低下し、その状態が長時間続くと壊死が起こります。壊死が起こった場合は足を切断しなければならないことがあります。

参考文献

・「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2020年改訂版」(2020.10.31閲覧)