急性虫垂炎(盲腸)の検査:CT検査・血液検査・超音波検査など
急性虫垂炎の検査には身体診察や画像検査があります。検査の目的は急性虫垂炎の診断と重症度を判断することです。ここでは診察から画像検査などを解説します。
目次
1. 急性虫垂炎の検査
急性虫垂炎の検査の目的は、急性虫垂炎の診断と急性虫垂炎の重症度を判断することです。主に以下の検査を用います。
問診 - 身体診察
- 血液検査
レントゲン 検査超音波検査 CT 検査
全ての検査をしないと急性虫垂炎と診断できないわけではありません。
2. 問診
右の下腹部に痛みがあって外来を受診したとします。救急医や外科医の頭の中には急性虫垂炎が浮かびます。急性虫垂炎の診断には画像検査や血液検査も重要ですが、問診や身体診察も同じくらい大事です。
問診でよく聞かれること
腹痛にはさまざまな原因があります。原因を特定するには問診の答えが大きなヒントになることがあります。ここでは虫垂炎に限らず腹痛の診察を受けるときの重要な点をあげてみます。
- 腹痛が起きはじめた時間
- 急性虫垂炎では最初から急激な痛みではないことが多いです。急に痛みが始まった場合、痛みの原因が血管の病気などの可能性があります。
- 最も痛む場所
- 急性虫垂炎では進行すると右下腹部に痛みが出ます。
- 痛みが軽くなったりひどくなったりするか
発症 直後の腹痛には波があることが多いです。
- 痛みが和らぐ姿勢
- 背中を丸めて横になると痛みが和らぐことがあります。
- 下痢や便秘、吐き気の有無
- 食事の内容
- 食中毒の可能性を考えて1−2日前の食事内容を聞かれることがあります。
- 今までにかかった病気や治療中の病気
- ほかに治療中か過去に治療した病気があれば、腹痛の原因に関わる可能性があります。
- 定期的に飲んでいる薬の有無
- 手術が必要な場合には麻酔をする必要があります。飲んでいる薬があれば麻酔で使う薬に影響するものではないか調べる必要があります。
外用薬 や市販薬、サプリメント、健康食品などが影響することも考えられます。
- 手術が必要な場合には麻酔をする必要があります。飲んでいる薬があれば麻酔で使う薬に影響するものではないか調べる必要があります。
上記の情報は急性虫垂炎かどうかの診断をするうえで非常に重要です。急性虫垂炎らしい特徴に当てはまるかどうかを自分で判断する必要はないので、感じているままに、なるべく詳しく答えてください。
お腹が痛いのにさまざまな質問に答えるのはつらいものがあります。質問の意味がわかりにくいこともあるかもしれませんが、ここで挙げたことを参考にして前もって答えを準備してもらえればと思います。
3. 身体診察
急性虫垂炎にはある特定の場所を押すと痛みがあったり、その痛みが姿勢によって変わったりすることがあります。これらを徴候(ちょうこう)といい、医師は診察の方法として使っています。
どの徴候も急性虫垂炎で必ず出るものではなく、ほかの病気で出ることもあります。ひとつの徴候の有無だけで診断はできません。ほかの症状や検査値の特徴と組み合わせて診断の助けとします。
いくつか有名な徴候があるので紹介します。
Rovsing徴候(ロブシング徴候)
仰向けになり、左下腹部を頭側に押し上げるように圧迫すると反対側の右下腹部の痛みが強くなることをRovsing徴候といいます。これは左側の大腸(下行結腸)に溜まったガスが右側の大腸(上行結腸・盲腸)に移動してその部分の圧力が高くなるためです。
Rosenstein徴候(ローゼンシュタイン徴候)
左を下にして横になりマックバーニー点を押さえると仰向けの状態より痛みがはっきりとすることです。
マックバーニー点は、右の上前腸
閉鎖筋徴候(へいさきんちょうこう)
虫垂の近くには閉鎖筋(へいさきん)という筋肉があります。閉鎖筋は股関節(こかんせつ)を動かす筋肉です。足の付け根を動かすと閉鎖筋の位置が変わり、虫垂に触れることがあります。
閉鎖筋徴候を見るには、仰向けになって右膝を立てた状態で右の膝を左側に倒します。右股関節を回した時に痛みがでると閉鎖筋徴候があると判定されます。
腸腰筋徴候(ちょうようきんちょうこう)
腸腰筋徴候は虫垂炎の炎症が背中側にまで及んでいるときにあらわれる徴候です。虫垂の背中側には腸腰筋という筋肉があります。
左を下にして横になりその状態で右足を後ろに蹴るように太ももを背中側に出します。これで痛みが出れば腸腰筋徴候がある(陽性)と判断されます。
反跳痛(はんちょうつう)
医師の診察で「これからお腹を押していきます、押したときと離したときのどちらが痛いか教えてください」と言われることがあります。この診察で医師は反跳痛の有無を確認しています。反跳痛はお腹を深く押して急に手を離したときに押したときより強い痛みを感じることです。反跳痛は腹膜炎の有り無しを判断する基準の一つです。反跳痛はBlumberg徴候(ブルンベルグ徴候)とも言います。
筋性防御(きんせいぼうぎょ)
お腹を押さえられると力が入ると思います。リラックスした状態ではお腹を押さえられても比較的力は入らずお腹を柔らかく感じることができます。ところが腹膜炎になるとお腹の筋肉にまで影響が及びリラックスした状態でもお腹の一部が固くなっています。これが筋性防御です。
4. 血液検査
急性虫垂炎では血液検査を行い診断やその程度を推測する目安にします。血液検査では多くの項目を調べますが、特に大事なのが
白血球数
白血球は血液の中にある細胞です。白血球には
白血球数は急性虫垂炎らしさを判定するAlvaradoスコア(アルバラードスコア)にも使われます。詳しくはAlvarado スコアの項目で解説しています。
5. レントゲン検査
レントゲン検査では急性虫垂炎を診断することはできません。急性虫垂炎と他の病気の区別や腸の状態を推測するのに役立ちます。
急性虫垂炎の原因の一つに糞石(ふんせき)があります。糞石は便がかたまって石のようになったものです。レントゲンでは骨のようなものは白く写ります。糞石もレントゲン検査で確認できることがあります。
また虫垂に穴が開いているかや腸閉塞が起きているかなどの診断にもレントゲンが役立ちます。レントゲン写真だけで急性虫垂炎の診断は難しいです。レントゲン写真に加えて超音波検査やCT検査を追加して診断をします。
6. 腹部超音波検査
超音波検査は
超音波検査は放射線を使わないので放射線による影響がありません。このため妊婦や小児など放射線の影響が懸念される場合には超音波検査が特に有効な検査になります。
超音波検査で急性虫垂炎を診断する場合は検査をする人にも技術が必要です。患者さんの体型などにより診断することが難しくなることがあります。超音波検査ではっきりと虫垂炎を診断できないときにはCT検査を行います。
7. CT検査
CT検査は放射線を使った検査です。CT検査では超音波検査と同様に虫垂の形や大きさ、虫垂の周りに膿があるかなどを観察することができます。臨床現場で医師は以下のようなポイントに注目して診断をしています。検査の後に説明があるかもしれないので参考にしてみてください。
- 虫垂の壁が厚くなり2mm以上になる
- 虫垂の太さが6mmを超える
- 糞石(虫垂結石)が確認できる(約25%の人に確認できる)
- 虫垂の壁の
造影 効果が強い
糞石は便が固まったもので小さな石のようなものです。糞石が虫垂と大腸(盲腸)の間にはまり込むと虫垂炎がおきます。急性虫垂炎は軽症であれば抗生剤で治療できますが糞石がある場合は再発しやすいので手術を積極的に考える判断材料になります。
CT検査の方法の一つに造影剤を使用する造影CT検査があります。造影CT検査は造影剤を注射で体の中に入れてCT検査をします。造影剤は血管の形をくっきりさせる効果があります。虫垂炎になると炎症が起きているので血液の流れが増えています。このため、くっきりとした虫垂の壁を目にすることができます。
参考文献
・Acta Radiol.2003;44:574-82.
・J Comput Assist Tomogr.1997;21:686-92.
8. 急性虫垂炎の分類:カタル性、蜂窩織炎性、壊疽性
急性虫垂炎は3種類に分類されます。
- カタル性
- 蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)
- 壊疽性(えそせい)
カタル性が軽症で壊疽性は重症です。カタル性と壊疽性の中間が蜂窩織炎性です。この分類は虫垂を手術でとりだした後に顕微鏡で観察して診断(病理診断)されます。
カタル性急性虫垂炎とは
カタル性急性虫垂炎は最も初期の段階です。
虫垂が炎症を起こして画像検査では虫垂が太くなったり、虫垂の壁が厚くなった様子が観察できます。カタル性の段階であれば
蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)急性虫垂炎とは
蜂窩織炎性急性虫垂炎はカタル性から少し進行した状態です。蜂窩織炎性では膿(
壊疽性(えそせい)急性虫垂炎とは
急性虫垂炎のなかで最も進行して深刻な状態が壊疽性急性虫垂炎です。壊疽性では虫垂が
9. 急性虫垂炎の診断に役立つスコア
急性虫垂炎は症状や検査を用いて診断します。急性虫垂炎に特徴的な症状や検査での異常が多いほど急性虫垂炎の可能性が高まります。急性虫垂炎の症状や検査を点数化した臨床現場でよく用いられる診断の方法を紹介します。
Alvarado(アルバラード) スコア
Alvaradoスコアは症状・診察・血液検査をもとにして点数をつけ急性虫垂炎の診断に役立てます。
心窩部(みぞおち)から右下腹部への痛みの移動 | 1点 |
食思不振 | 1点 |
嘔吐(おうと) | 1点 |
右下腹部痛 | 2点 |
反跳痛(はんちょうつう) | 1点 |
37.3℃以上の発熱 | 1点 |
白血球10,000/μl以上 | 2点 |
1点 | |
合計:4点以下なら虫垂炎は否定的、7点以上なら虫垂炎が疑わしい |
反跳痛は腹部を抑えたときとその状態から急に手を離した時に痛みが増すことです。白血球の数が増えている時は
好中球核の左方移動
好中球は白血球の種類の一つです。好中球の核はその成熟度によりいろいろな形を示します。核は細胞の中心にありDNAなどを含んでいるものです。好中球ができた段階では核は棍棒(こんぼう)のような形をしており桿状核球(かんじょうかくきゅう)といいます。成熟が進むに連れて核は三つ葉のクローバーのような形になります。これを分葉化が進むと表現します。分葉化した核を持つ好中球を分葉核球(ぶんようかくきゅう)といいます。
体に細菌が感染すると体の中で好中球の需要が高まり、成熟していない好中球つまり桿状核球が増えていきます。桿状核球が分葉核球に対して通常より多くの割合を示す状態を好中球の左方移動(さほういどう)といいます。左というのは、グラフの横軸を好中球の成長度、縦軸を好中球の数とした時に、成長度が低い、つまり左側の好中球の数が増えるという意味です。
10. 子どもの急性虫垂炎の検査
子どもに急性虫垂炎が疑われる場合はどう検査を進めていくのでしょうか。子どもは成人に比べて症状が乏しいので診断では検査の重要性が増します。しかし、身体が成長段階であることから検査による身体への影響も気になるところです。
子どもの急性虫垂炎で使う検査には以下のものがあります。大人とほとんど同じ検査を用います。
- 問診
- 身体診察
- 血液検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- CT検査
以下ではそれぞれの検査を受ける際に気を付けることなどを解説します。
問診
問診では症状や今までにかかったことのある病気などを聞かれます。症状を正確に伝えることは診断に早くたどり着ける助けになります。しかし、子どもは痛みを正確に言葉で表現できないことも多く、さらに診察自体を怖がってしまい症状を上手く伝えられないことがあります。同伴する保護者が診察前にお腹の痛みなどについて聞いておくと助けになることがあります。
またお腹の痛みだけではなく食べたものや様子(活気)、排便の状況なども重要な情報です。いつもと様子が違うことは事細かにすべて伝えるという姿勢が大事です。
身体診察
腹部を触ったり姿勢を変えたりして痛みの状況を確認します。成人の虫垂炎の診察ではいくつかの特徴的な症状が現れます。しかし、小児の場合は年齢によって虫垂の位置がまだ成人の位置になかったり痛みを正確に伝えられないため診断が難しくなることがあります。
血液検査
急性虫垂炎の診断に重要な血液検査の項目は白血球数です。急性虫垂炎と診断された多くの子どもに白血球数の増加が確認されたという報告があります。急性虫垂炎が起きると白血球が増えることがあります。
白血球の増加が急性虫垂炎を発症を意味する訳ではありません。白血球が増える病気は胃腸炎など他にもあります。
レントゲン検査
レントゲン検査では腸のガスや便が溜まった様子を観察することができます。レントゲン検査で急性虫垂炎を診断することはできません。しかし、腹痛は他の病気を原因とすることがあるので急性虫垂炎以外の病気の可能性を評価することに使うことができます。
腹部超音波検査
超音波検査はエコー検査とも呼ばれることのある検査です。放射線を使う検査ではないので放射線による影響はありません。腹部超音波検査は急性虫垂炎が疑われる場合に有効な検査です。
腹部超音波検査はどの程度急性虫垂炎を診断できるのでしょうか。
腹部超音波検査の診断能力を調べた研究を紹介します。子どもで虫垂が観察できた場合、超音波検査で急性虫垂炎を見分ける精度は
- 感度:病気だった人が検査で陽性であった割合
- 特異度:病気でなかった人が検査で陰性だった割合
感度が高い検査で陰性であればその病気(急性虫垂炎)ではない可能性が高く、特異度が高い検査で陽性となればその病気である可能性が高いです。
超音波検査はかなり高い確率で急性虫垂炎を診断できる検査といえます。
同じ研究で、成人の急性虫垂炎に対しては超音波検査の感度が83%、特異度が93%とされています。子どものほうが成人の急性虫垂炎より高い確率で診断できる理由は子どもは成人に比べてお腹の脂肪や筋肉が薄いのでお腹の中を観察しやすいからと考えられています。
超音波検査は信頼ができますが、実際には虫垂が確認できない場合もあります。虫垂がみつからない場合には陽性か陰性かも決めることはできません。虫垂が見つからないケースはCT検査で診断を行う必要があります。
参考文献
・Radiology.2006;241:83-94
・日本腹部救急医学雑誌.2009;29:39-45
・J Pediatr Surg. 2016;51:1939-1943
CT検査
CT検査は放射線を使う検査です。腹部超音波検査で急性虫垂炎が診断できない時にCT検査が用いられます。CT検査は急性虫垂炎をより正確に診断することや他の病気が隠れていないかを調べる目的で使います。
CT検査では正確な診断が期待できる一方で放射線による影響が気になります。放射線の影響の一つに発
一般に子どもは成人に比べて放射線の影響を受けやすいとされています。『急性腹症
CT検査を受けると確率は低いながらも発がんなどの危険性があると考えられます。CT検査はできるかぎり行わずに診断をしたいところですが、急性虫垂炎が否定できない時はCT検査を行うことも考えなければなりません。急性虫垂炎は重症化すると腹膜炎などの重い症状を起こします。加えて子どもは虫垂炎が重症化しやすいことも知られています。放射線のように身体に影響を及ぼす検査は適切な場面で使うべきです。
医師は検査が害になる可能性も考えたうえで、得られる効果が上回ると考えた場合にだけ検査を提案します。もし検査による影響が心配なら、なぜその検査が必要と思うか、害があるとすればどの程度の可能性があるのかをよく説明してもらってください。
参考文献
・急性腹症診療ガイドライン
・AJR Am J Roentgenol.2001;176:289-96
11. 妊娠中の急性虫垂炎の検査
妊娠中に急性虫垂炎が疑われた場合はどう検査を進めていくのでしょうか。検査と胎児(あかちゃん)の関係性とあわせて説明します。
急性虫垂炎が疑われる妊婦に使う検査は以下のものです。
- 問診
- 身体診察
- 血液検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- CT検査
MRI 検査
以下ではそれぞれの検査について、妊娠中の人が気になる点や検査を受ける際に気を付けることなどを解説します。
問診
問診では症状や今までにかかった病気、食事の内容、定期的に飲んでいる薬などを聞かれます。症状はできるだけ詳しく説明すると診断に早くたどり着ける助けになります。
急性虫垂炎の診断や治療は消化器内科や消化器外科で行われます。妊娠中は産婦人科には定期的に通っていても消化器内科や消化器外科で診察を受けるのは初めてになることが多いと思います。このため産婦人科から妊娠の経過などをまとめた
身体診察
腹部を触ったり姿勢を変えたりして痛みの状況を確認します。妊娠中は子宮が大きくなっている関係で身体診察で急性虫垂炎の特徴がでにくいことが知られています。
血液検査
急性虫垂炎の診断に重要な血液検査の項目は白血球数です。妊娠していない人に対して白血球数は診断に有効です。しかし、妊娠中は異常がなくても(生理的に)白血球数が増えています。したがって急性虫垂炎の診断には有効ではない場合があります。
参考文献:Am J Obstet Gynecol.2000;182:1027-1029
レントゲン検査
レントゲンでは腸閉塞の有無や急性虫垂炎の原因となる糞石などをみつけることができます。レントゲン検査で急性虫垂炎を診断することはできませんが、他の病気ではないことを確かめたりできます。
腹部超音波検査
超音波検査はエコー検査とも呼ばれます。放射線は使わないので放射線による影響はありません。そのため、妊娠中に急性虫垂炎が疑われる場合に有効な検査です。
腹部超音波検査はどの程度急性虫垂炎を診断できるのでしょうか。腹部超音波検査の診断能力を調べた研究では感度が67-100%、特異度が83-96%でした。感度と特異度について説明します。
- 感度:病気だった人が検査で陽性であった割合
- 特異度:病気でなかった人が検査で陰性だった割合
感度が高い検査で陰性であればその病気(急性虫垂炎)ではない可能性が高く、特異度が高い検査で陽性となればその病気である可能性が高いです。
急性虫垂炎に対する腹部超音波検査は感度にやや不確かさがあり、特異度は比較的高い検査といえます。つまり、腹部超音波検査だけでは急性虫垂炎を見逃す可能性も無視できませんが、ほかの病気や正常な虫垂を急性虫垂炎と見間違う恐れは小さいと言えます。
腹部超音波検査で診断がつかない場合にはCT検査やMRI検査を追加します。
参考文献:Emerg Med J. 2007;24:359-60
CT検査
CT検査は放射線を使用した検査です。CT検査を使うと急性虫垂炎を超音波検査より正確に診断することができます(感度92%、特異度99%)。
放射線を使う検査では胎児への影響が気にかかるところだと思います。『産婦人科診療ガイドライン』によると受精後11日から妊娠10週の期間は50mGy(ミリグレイ)未満、妊娠10週以降では100mGy未満の被ばく量であれば発生異常を増加させないとしています。mGyは放射線の線量を示す単位です。
『急性腹症診療ガイドライン』によると1回の
妊娠中の虫垂炎が進行して虫垂に穴が開いて腹膜炎などを起こすと、胎児に影響して、流産や死産になる確率が高くなることが知られています。虫垂炎が重症化したときの胎児への影響を考えると、虫垂炎が疑われ腹部超音波検査で診断がつかない場合はCT検査を行うことは許容されると考えられます。
参考文献
・産婦人科診療ガイドライン 産科編2014
・急性腹症診療ガイドライン
MRI検査
超音波検査やCT検査を行っても腹痛の原因がわからないことがあります。この場合にはMRI検査が勧められます。
MRI検査は磁気を利用した検査です。放射線を使うことはありません。MRI検査の胎児への影響は不明です。
『急性腹症診療ガイドライン』は、「いずれの時期においてもMRIを否定する根拠はないが、妊娠初期においては安全性が完全には確立されておらず、まずは超音波検査を行う。それでも確定診断が得られない場合には単純MRIを考慮してもよい」としています。
妊娠中の急性虫垂炎はなるべく初期に治療することが大事です。超音波検査やCT検査でも診断が確定できないときにはMRI検査で急性虫垂炎を診断することを考慮してもよいと考えられています。
参考文献:急性腹症診療ガイドライン