きゅうせいちゅうすいえん
急性虫垂炎
一般的に盲腸と言われている病気。右の下腹部にある虫垂に細菌が感染した状態
18人の医師がチェック 144回の改訂 最終更新: 2018.06.19

右の下腹部が痛くなった男子の話

急性虫垂炎は「もうちょう」の名前で知られる病気で、男性では11人に1人、女性では15人に1人が生涯に発症する身近な病気の一つです。急性虫垂炎はどんな様子で発症してどんな治療をするのか架空の話をもとにして説明します。

高校生の男子が、腹痛を感じた

急性虫垂炎について、架空の患者さんを例にして紹介していきます。

16歳の田中太郎くんは部活に勉強に頑張る高校生です。大きな大会を控えて練習に汗を流す充実した日々を送っています。田中くんは今までに大きな病気を経験したこともありませんでした。

ある日の午前中の授業中になんだかみぞおちの辺りに痛みを感じます。

「朝ご飯食べすぎたかな?少し我慢して様子を見てみよう。」

痛みはぼんやりとしています。しいていうとみぞおちの辺りがぼんやりと痛むかなぁという程度です。

ポイント:急性虫垂炎は10代から20代の人に起こりやすい

急性虫垂炎は10代から20代で発病することが多いです。田中くんはまさに発症しやすい年齢の真っ只中にありました。

急性虫垂炎の原因については「急性虫垂炎(アッペ・盲腸)の原因は?年齢・性別・食べ物など」で解説しています。

ポイント:急性虫垂炎の症状は最初はみぞおちの辺りが痛くなることが多い

虫垂は大腸の一部分で、右の下腹部にあります。急性虫垂炎は右の下腹部が痛くなるとご存知の人はいると思いますが、最初に痛むのはみぞおちのことが多いです。それも痛む場所がはっきりとしないぼんやりとした痛みです。

急性虫垂炎の初期症状は「急性虫垂炎は盲腸のこと?原因・症状・検査・治療についての解説」を参考にしてください。

腹痛の様子が変化して吐き気・嘔吐が現れた

午後になってもお腹の痛みは相変わらずです。お腹の痛みに加えて少し気持ち悪い感じも出てきました。

「今日は練習は無理だな、家に帰って休もう」

家に帰って横になっていると気持ち悪さのために一回嘔吐をしました。

「お腹の風邪ってやつか食あたりかな」

休んでいると吐き気は少しずつ良くなりましたが腹痛は治まりません。

ポイント:腹痛に続いて吐き気などが現れる

急性虫垂炎の吐き気は腹痛の前に起こることはまれです。また吐き気や嘔吐は数時間で治まることが多いです。嘔吐の他には微熱やだるさなども現れることがあります。急性虫垂炎の初期症状は急性胃腸炎(いわゆるお腹の風邪)に似ていることもあるので初期の段階では症状から判別することは難しいことが多いです。

吐き気は治まりましたが、お腹の痛みは徐々に強くなってきて、右の下腹部が痛む様になってきました。

「こんなにお腹が痛くなったことはないなあ、大丈夫かな」

お母さんが心配して部屋を訪れました。

「太郎、大丈夫?」

「うん、お腹は痛いけれど横になって休んでるよ」

田中くんはそう言ってベッドで様子を見ることにしました。

ポイント:時間の経過とともに腹痛は強くなり右下腹部に痛む場所が移動する

急性虫垂炎のよく知られた特徴にお腹の痛む場所の移動があります。最初に痛む場所はみぞおちを中心にぼんやりとしていることが多いです。時間が経つとお腹の痛む場所は右の下腹部に移っていきます。痛む場所がはっきりしてくるとともに痛みも強くなります。

急性虫垂炎の症状については「急性虫垂炎は盲腸のこと?原因・症状・検査・治療についての解説」を参考にしてください。

夜になっても痛みがおさまらず熱も出てきたので病院へ

夜になってもお腹の痛みは治まらずに微熱だった体温も38℃を超えるようになりました。

太郎くんの様子をみて心配になったご両親は病院に連れていくことにしました。その時、日付は変わろうとしていました。

ポイント:腹痛が強くなってきたときは受診をためらうべきではない

急性虫垂炎は時間の経過とともに悪化していく病気です。太郎くんのご両親は夜中でしたが病院にいく決断をしました。これは正しい選択と言えます。腹痛の全てが急性虫垂炎のように緊急で治療をしなければいけない病気ではありませんが、経験したことのない痛みや症状があるときに医療機関を受診するのは正しい姿勢です。

急性虫垂炎のときの病院受診のポイントについては「急性虫垂炎(盲腸・アッペ)の注意点:初期症状、治療後の過ごし方など」で解説しています。

近くの病院の救急外来を受診して医師の診察を受けました。診察を担当した医師は特に右下腹部を入念に調べています。

「お腹を押します。押した時と離した時のどちらが痛いか教えてください。」

「イタッ、離した時の方が痛いです。」

医師の顔が曇ります。

「そうですね、超音波検査をして必要であればCT検査をしましょう。あと採血もしますね。」

田中くんは検査を受けることになりました。

ポイント:急性虫垂炎は診察で特徴的な徴候が現れる

急性虫垂炎に特徴的な徴候はいくつか知られています。重要な徴候の一つにお腹を押した時と離した時の痛みの差というものがあります。押した手を離した時に痛みが強くなることを反跳痛(はんちょうつう)といいます。反跳痛は腹膜炎という重い状態になっていることを示唆するため、緊急性が変わってきます。

診察を担当した医師から検査の結果説明がありました。

「診察と血液検査、画像検査から急性虫垂炎が痛みなどの症状の原因と考えられます」

CT検査で撮影した画像を一緒に見ながら説明が始まります。

「ここが虫垂です。本来はこんなに太くはないのですが、太郎くんの虫垂は壁が厚くなって太くなっています。これは急性虫垂炎が起きていることを意味します。」

田中くんの腹痛の原因は急性虫垂炎だったのです。

ポイント:急性虫垂炎は超音波検査かCT検査で確定診断される

急性虫垂炎は症状だけで診断されることはありません。超音波検査かCT検査で最終的に診断されます。同時に他の病気が隠れていないかも調べています。

腹痛と発熱が現れる病気には胆石症大腸憩室炎など他にもあります。他の可能性が本当にないのかを確認しておくことはとても大切です。

手術と抗菌薬(抗生物質・抗生剤)のどちらを選ぶか

担当した医師から急性虫垂炎と説明があり、入院が必要であると告げられ、治療法について説明もされました。

「治療法は手術と抗生物質のどちらでも可能な段階です。」

「これから手術と抗生物質による治療の説明をしますのでどちらかを選んでください」

医師から丁寧な説明がありました。

ポイント:抗菌薬(抗生物質・抗生剤)による治療を選んだら

抗菌薬による治療は身体に傷がつかなくてよく手術に比べると負担は小さいです。一方で治りきらない場合や悪化、再発などの可能性が残る治療でもあります。

抗菌薬による治療については「急性虫垂炎(盲腸・アッペ)を散らすとはどんな治療?抗生物質(抗生剤、抗菌薬)について」で詳細に解説しているので参考にしてください。

ポイント:手術による治療を選んだら

手術は炎症の原因となっている虫垂を取り除くので確実な治療効果が望めます。しかし手術は身体にメスを入れて行う治療なのでやはり身体への負担は大きいです。

手術については「急性虫垂炎(盲腸・アッペ)の治療は手術?」で詳細に解説しているので参考にしてください。

田中くんとご両親は医師の説明を聞いて相談しました。

「手術してください」

「わかりました。まだ虫垂が破れている訳ではないので腹腔鏡手術という方法で手術ができます」

医師からお腹を切る開腹手術と腹腔鏡手術の違いや手術に伴う合併症について説明がありました。

ポイント:手術の方法と合併症について

急性虫垂炎の手術は「従来のお腹を数センチメートル切る開腹手術」と「お腹に数か所の穴をあける腹腔鏡手術」の2つの方法があります。どちらにも長所と短所があり、どちらでなくてはならないということはありません。ただし状態によってはどちらかの手術の方法を医師から優先して提案されることもあります。

自分の考えにあった手術の方法を選ぶには医師からの説明をよく聞くことが大切です。

また手術には合併症がつきものです。合併症とは手術によってもたらされる望ましくない結果のことです。合併症についても頭に入れておくと、仮に合併症が起こったとしても精神的に落ち着くことの役に立ちます。

開腹手術と腹腔鏡手術の比較や合併症についての説明は「急性虫垂炎(盲腸・アッペ)の治療は手術?」で解説しています。

手術をした田中くんの経過

太郎くんとご両親はなるべくなら負担が軽くて学校を休む期間が短い腹腔鏡手術の方が良さそうに思いました。

「腹腔鏡手術でお願いします」

「では今から手術の手配をします」

手術を受けると決まるとと田中くんは少し不安になりました。

手術の流れや起こり得る合併症などについて説明があり、同意書にサインをして手術に臨みました。

人生で初めて手術を受けることになった田中くんは痛みがある中、手術用の服に着替えて手術室に向かいます。

手術室に入ると医師や看護師が何人かいます。案内にしたがってベッドに横になりました。

「麻酔を始めますよー。」

医師は口の前に口と鼻を覆うマスクのようなものを被せてきました。点滴から薬が入るときには少し痛みがありましたが、徐々に眠くなっていきました。

次に気づいた時には手術は終了していました。喉にチューブが入っているので喋ることができません。

田中くんはここはどこなんだという気持ちになりました。

「手術は無事終わりましたからね。」

眼の前の看護師や医師からかけられる言葉とともに安心感が湧いてきました。

喉に入っていたチューブを抜く時は少し苦しかったですがそれ以外は多少お腹に痛みがある程度で手術前と余り変わりがありません。手術をした日は酸素が送られるマスクをしているためか喉が乾きましたが、比較的ぐっすり眠れました。

次の日には医師から水分の摂取が許可されました。久しぶりに飲む水は非常に美味しく感じました。手術から翌々日には食事が再開されました。食事は柔らかいものが中心でしたが、ゆっくりとかみしめるようにという医師からの説明どおりに時間をかけて食べました。

「明後日くらいには退院できますがどうしますか?」

夕方の診察に来た医師からは退院の許可が出たのです。田中くんは、傷の痛みも少ないので退院することにしました。医師や看護師からは退院後の食事の注意点やすぐに病院にかかるべきことなどの説明がありました。

退院後も順調に身体は回復して予定された受診日が来ました。傷の痛みはすっかりありません。

「傷の治りも順調ですね、これで治療は終了です。」

医師からのお墨付きももらい田中くんは晴れて急性虫垂炎から開放されました。

ポイント:手術後はしばらく注意が必要

急性虫垂炎は早い段階で手術できれば数日の入院で退院できることは珍しくはありません。腹腔鏡手術となれば回復は特に早いです。田中くんは手術後も順調に回復しました。ただし退院後にもしばらくは身体に変調が起こることもあり注意が必要です。田中くんも退院後の受診日にはちゃんと診てもらいに行っています。

退院後の生活の注意点は「急性虫垂炎(盲腸・アッペ)の注意点:初期症状、治療後の過ごし方など」で解説しているので参考にしてください。

急性虫垂炎についてもっと知ろう!

田中くんの例は急性虫垂炎の典型的な経過に過ぎません。急性虫垂炎には他にも多くの症状があり状況も複雑になっているケースがあります。このページをご覧になっている人は、お腹が痛くなって虫垂炎が心配な人や、急性虫垂炎の治療中の人かもしれません。人によっていろんな状況に置かれていると思います。

MEDLEYでは急性虫垂炎の症状や診断、治療のみならず受診のタイミングやその後の経過まで網羅的にまとめてあり、虫垂炎の詳細情報のページにある知識は適切な診療を受けるのに役立つものとなっています。