メニエール病の症状にはどんなものがあるか?
メニエール病ではめまいとともに、難聴や耳鳴り、耳閉感などの症状がでます。メニエール病の症状は繰り返すことが特徴で、症状が改善したり悪化します。どのような症状が出た時にメニエール病を考えるのか見ていきましょう。
1. メニエール病に予兆はあるか?

メニエール病はめまい
聴覚症状は、ほとんどの場合にはメニエール病のめまい発作前に起こります。めまい発作と同時に起こることもあります。
人によって予兆の症状は異なりますが、めまい発作を繰り返していくうちに、自分の予兆の症状がわかります。
予兆と思われる症状が起きた場合には、作業を中断して休んだり、移動中や運転中などでは安全な場所に移動したり、めまい発作時に内服するよういわれている頓服薬などを内服したりしてください。
2. メニエール病で起こりやすい症状
メニエール病は、難聴、耳鳴り、耳閉感など「聞こえ」の症状を伴う、めまい発作を 繰り返す病気です。難聴、耳鳴り、耳閉感などの「聞こえ」の症状をまとめて、聴覚症状(ちょうかくしょうじょう)と呼びます。
めまい発作が治まると、聴覚症状も改善します。
- 発作期:めまい発作が起きている時期
- 間欠期(かんけつき):発作後、次回の発作までの時期
間欠期でも、軽いふわふわ感、ふらつき、軽い頭痛、頭の重い感じ、肩こりなどの軽い症状が続きます。
<メニエール病の主な症状>
- めまい:ぐるぐるするめまい
- 耳鳴り
- 耳閉感:耳のつまったような感覚、耳に膜が張ったような感覚
- 難聴
<メニエール病の随伴症状>
下記のような症状を伴うこともあります。
- 吐き気、気持ち悪さ、嘔吐
- 頭痛
- 冷や汗
- 腹痛、下痢
<メニエール病では起こらない症状>
メニエール病では起こらない症状は下記のようなものがあります。
- 顔や手足の動かしにくさ
- 顔や手足のしびれ
- ろれつが回らない、話しにくい
- 意識がなくなる
- ものが見えにくい、二重に見える
また、メニエール病で頭痛が出ることもありますが、通常は軽い頭痛で、あまりに強い頭痛があればほかの原因が疑われます。
これらの症状がある場合には、メニエール病よりも脳梗塞や脳出血が原因のめまいの可能性がありますので、神経内科、脳神経外科、救急科などのある医療機関に早めに受診しましょう。
めまい
メニエール病のめまいの特徴は下記です。
- 回転性めまい
- 特に
誘因 がなくはじまるめまい - 10分以上持続するめまい
- 聴覚症状を伴うめまい
メニエール病の発作時のめまいは、約8割がぐるぐるする回転性めまいです。回転性めまいは、周囲がぐるぐる回る、周囲が揺れる、自分が周る、ぐらぐらする、などと表現されます。ほとんどが回転性めまいですが、ふわふわする、浮動性めまいを感じる人もいます。
めまいが起こるときは、決まった誘因はなく、特定の頭の位置や寝返りなどでめまいが起きることはありません。しかし、めまいがある時に頭を動かすと、めまいの症状は悪化します。めまいは寝ている状態でも、座っていてもずっと続きます。
1回のめまいが続く時間は、数秒や数十秒ではなく、少なくとも10分以上は持続します。数秒から数十秒の短い時間のめまいはメニエール病以外のめまいを考えます。数秒から数十秒では良性発作性頭位めまい症のことが多いです。
以前の調査では、めまいの持続時間は、約半数が30分から6時間程度、約20%が6時間以上でした。
めまいは、気持ち悪さや、吐き気、嘔吐が一緒に起こります。発作時には、聴覚症状である難聴、耳鳴り、耳閉感などが一緒に起こります。
めまいの発作回数は、週数回から年に数回まで様々です。家庭や職場での生活環境の変化やストレスで、落ち着いていた発作が急激に悪化して、頻繁にめまいが起きるようになることもあります。
メニエール病になったばかりの時は、めまいの症状が強いです。めまい発作が起きた時は、寝ている以外のことができないなどの強いめまいになります。発作を繰り返すうちに、1回のめまいの症状は軽くなる傾向にあります。しかし、半分の人で、発作時には仕事などができない状態が続きます。
発作がおさまった間欠期は、めまいは改善しますが、軽いふわふわ感や、ふらつきが残る人もいます。
参考: 耳鼻臨床 70:増5; 1669-1686, 1977.
耳鳴り
耳鳴りとは、外の音がない状態で、耳で「キーン」や「ジー」という音が聞こえることです。耳鳴(じめい)とも言います。耳鳴りの音は自分にしか聞こえることはなく、他人には聞こえません。静かな場所や狭い場所ではより大きく聞こえることがあります。
耳鳴りは原因によって左右片側で聞こえる場合と両側で聞こえる場合があります。メニエール病では耳鳴りが聞こえるのは、基本的には片側で、難聴が起きている耳と同じ側です。しかし、左右どちらの耳で鳴っているか、わからないこともあります。
めまい発作の前や発作と同時に、耳鳴りや耳の詰まった感じ、難聴を自覚します。これらの聴覚症状は、めまい発作がおさまると改善します。メニエール病の発作を繰り返すと、悪化した難聴が改善しにくくなります。難聴が残存した人では、難聴のある側の耳鳴が続くことがあります。
耳閉感
耳閉感は、耳のつまった感覚、音がこもる感覚、耳に膜が張ったような感覚などと表現される症状です。難聴が軽度の場合には、聞こえないという症状よりも、耳閉感のみの症状が起こりやすいです。特に低い音域のみの難聴では耳閉感を感じやすいです。
メニエール病になったばかりの初期では、低音域のみの難聴を起こすため、耳閉感を自覚しやすいです。
めまい発作の前や発作と同時に、耳鳴りや難聴にあわせて、耳の詰まった感じを自覚します。これらの聴覚症状は、めまい発作がおさまると改善します。
難聴
難聴とは、音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくいなどの症状です。メニエール病では 変動する難聴が特徴です。
難聴は外からの音が
感音難聴が起こると、耳鳴や耳閉感などの症状を起こします。その他に、大きな音が耳障りに感じる聴覚過敏(ちょうかくかびん)などの症状が出ます。
メニエール病になったばかりの
難聴の程度が軽い場合には、難聴ではなく、耳閉感のみを感じることがあります。メニエール病の難聴は片側のみがほとんどですが、経過中に20%ほどの人が両側の難聴になります。
内耳には聞こえの細胞と、体の平衡感覚を担当する細胞があります。そのため、内耳の調子が悪くなると、難聴とともにめまいを起こすことがあります。難聴とともにめまいを起こす病気は、突発性難聴、外リンパ瘻、内耳炎、内耳梅毒などがあります。稀ですが、脳の病気でも難聴とめまいを起こすことがあり、小脳梗塞、聴神経腫瘍などが原因になります。難聴とともにめまいの症状がある場合には、診察や検査などで、これらの病気を区別して、診断をつけます。
吐き気・嘔吐
めまいでは気持ち悪さ、吐き気や、嘔吐を伴うことが多いです。
耳にある体の平衡感覚を担当する神経から、脳にある吐き気を起こす部位が直接刺激されて吐き気を起こします。吐き気、嘔吐とともに冷や汗や、腹痛、下痢などの症状を起こすこともあります。
めまいが起きると不安や恐怖を感じることがあります。不安や恐怖の感覚も、脳にある吐き気を起こす部位を刺激して、気持ち悪さや吐き気の症状を悪化させます。そのため、めまいの症状が強い場合には、不安を抑える薬などを使うことがあります。
頭痛
メニエール病の発作に強い頭痛が一緒に起こることは、ごくまれです。少し頭が重い感じがするなどの、軽い頭痛が起こることはあります。
また、めまいの症状が改善せず、続く場合には頭痛を伴ってくることがあります。頭を動かすとめまいが起こるため、あまり頭を動かさないようにしようと、首周りの筋肉が緊張するからです。首回りの筋肉が硬くなると、緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)が起こります。
強い頭痛を起こすめまいの中で、すぐの治療が必要なものは、中枢性めまいです。中枢性めまいは脳の病気を原因として起こるめまいで、小脳出血や
小脳出血は、小脳の血管が一部切れて出血を起こします。めまいだけでなく、バランスを保つことが難しく、立てない、歩けないなどの症状を起こしやすいです。ろれつが回りにくくなることもあります。椎骨脳底動脈解離では、脳に血流を送る血管内部が裂けることで、脳に十分な血流が行かなくなり、脳梗塞を起こします。血管がさけたり、脳梗塞になることで、強い頭痛やめまいなどの症状がおこります。
その他にも、頭痛とともに起こるめまいには、片頭痛に伴うめまいなどもあります。
3. 症状を繰り返すときにはどうしたら良いのか
メニエール病の治療はまず、生活改善と薬物治療になります。メニエール病の発症には、精神的、体力的な疲労や、睡眠不足、ストレスが関係しています。
生活改善では、疲労をさけて規則正しい生活をしたり、睡眠を十分にとったり、ストレスの対処方法を検討したりします。有酸素運動を取り入れることも有効とされます。
生活改善や薬物治療を3-6ヶ月行っても、頻回のめまい発作を繰り返して、日常生活が困難な場合には、手術治療などの選択もあります。
疲労、睡眠不足、ストレスはメニエール病の発症だけでなく、めまい発作の誘因にもなります。我慢したり、熱中しすぎたり、まわりの期待に沿おうとしたりすることがストレスになっている人もいます。調子の悪い時は、頑張りすぎないで、休むことに罪悪感を持たずに十分休養をとることを心がけてください。必要時には心理的な治療を行なっている病院やカウンセラーに相談することも有効です。
生活改善、ストレスの緩和策の例を下記にあげます。参考にしてみてください。
- 早めの帰宅と夕食、早めの入眠と早起き、規則正しい生活習慣
- 仕事、家事、周囲の評価に対する発想の転換
- 頑張りすぎない、完全であることにこだわらない、失敗を恐れない、他人の評価を気にしない、など
- 悩みの相談をためらわない、相談事と関係なく、人ともおしゃべりする
- 娯楽、趣味を持つ
- 旅行、ゴルフ、会食(家族、友人との宴席など)、歌唱(カラオケ、合唱への参加、詩吟など)
- 日常における適当な運動
- ウオーキング、水泳、ヨガ、ダンスなど
- エアロビクスなどの有酸素運動(メニエール病発作予防、聴力改善効果の報告がある)
4. めまいがないメニエール病はあるのか
めまいがなく、難聴や耳閉感、耳鳴りを繰り返すメニエール病もあり、メニエール病非定型例(蝸牛型:かぎゅうがた)や、蝸牛型メニエール病と呼ばれます。
耳の奥の内耳の部分に、聴覚と平衡感覚を担当する部分があります。聴覚を担当する部分を蝸牛(かぎゅう)、平衡感覚を担当する部分を

その他に、メニエール病非定型例(蝸牛型)に似た難聴を起こす、急性低音障害型感音難聴(きゅうせいていおんしょうがいがたかんおんなんちょう)と呼ばれる病気もあります。それぞれについて、説明します。
メニエール病非定型例(蝸牛型:かぎゅうがた)
メニエール病確実例は、難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状に伴う、めまい発作を反復する病気ですが、典型的な診断基準を満たさないものを非定型例と呼びます。
メニエール病非定型例のうち、聴覚症状のみの悪化や改善を繰り返すものを蝸牛型と呼びます。難聴、耳鳴り、耳の詰まった感じなどの聴覚症状のみを起こし、めまい発作は伴いません。耳の奥の内耳の聴覚を担当する部分の、蝸牛(かぎゅう)の症状のみを起こすため、蝸牛型とよばれます。
メニエール病確実例と、難聴のタイプは同じで、低音域のみの難聴を起こします。自覚症状は難聴よりも、耳閉感、耳の詰まった感じ、耳が圧迫された感じの症状になります。
検査では、メニエール病確実例と同じように、内リンパ水腫を起こしている検査結果になります。自覚症状としては、めまいがないのですが、検査では平衡機能障害を起こしていることがあります。検査について詳しくは「 メニエール病の検査」のページで説明しています。
突発性難聴の後に聴力変動をおこしたり、難聴を繰り返す急性低音障害型感音難聴は、この蝸牛型と同じ病気と考えられています。
急性低音障害型感音難聴(きゅうせいていおんしょうがいがたかんおんなんちょう)
急性低音障害型感音難聴の特徴は下記です。
- 原因が不明
- 急性もしくは突発性に耳の症状が発症
- めまいがない
- 低音域の難聴
メニエール病や突発性難聴より、多くの人が患う病気です。
精神的な疲労、睡眠不足、肉体的疲労などが誘因となって発症します。
低音域のみの難聴のため、自覚症状は難聴よりも、耳閉感、耳の詰まった感じ、耳が圧迫された感じになります。難聴の自覚はないこともあります。その他に、耳鳴りや自分の声が響くなどの症状があります。
めまいはない人が多いですが、軽いめまいがあることもあります。それでも、メニエール病のような、ぐるぐるする症状の強い回転性めまいは起こりにくいです。
急性低音障害型感音難聴の難聴はすぐに治ることが多いですが、繰り返しやすく、難聴を繰り返すうちに治りにくくなります。繰り返す場合にはメニエール病非定型例(蝸牛型)であると考えられます。めまいを伴うようになって、メニエール病確実例に移行する頻度は7.7%と報告があります。