網膜剥離とはどんな病気か
網膜剥離は眼球の内側を覆っている
目次
1. 網膜の構造と働き
網膜は眼球の内側の壁を覆うようにして張りついている薄い膜です。網膜剥離について理解しやすくするため、まずは網膜の構造や働きについて説明します。
網膜はどんな働きをしているの?
網膜は目から入った光を電気信号に変換する視細胞がいるところです。網膜で変換された電気信号は、視細胞からつながっている神経線維を通り、視神経に届いて脳に送られます。目から入った光の情報が脳に伝えられて「見えた」と感じることができます。このように網膜はものを見るときに重要な働きをしています。
黄斑(おうはん)とはどんな部分?
網膜の中で視力に最も大きな役割を果たしているのが網膜の中央にある「
黄斑以外の網膜でも見ることはできるものの、はっきりとは見えません。そのため、黄斑の機能が悪くなると視力は著しく悪化します。網膜剥離においても黄斑まで剥離が及ぶかどうかが、病気後の視力回復の程度に大きく関わります。
2. 網膜剥離では目にどんなことが起こっている?
網膜剥離は言葉通り「網膜」が「剥離」する病気です。より詳しく説明すると網膜を構成する10層の組織のうち、最も外側にある網膜色素上皮と、それより内側の神経網膜の間で剥がれてしまう病気です。

網膜色素上皮には光や色を感じる神経細胞(視細胞)があります。神経細胞が正常に働くためには、網膜色素上皮と脈絡膜からの栄養が必要です。網膜剥離が起こると、視細胞がいる層が、栄養を供給してくれる網膜色素上皮と脈絡膜から剥がれます。そのため、視細胞は十分な栄養を受けられずに細胞の機能が低下します。また、剥がれた網膜は十分にものを映し出すことができないため、視野がゆがみ、見えにくくなります。剥離が進行して視細胞が集中している黄斑まで剥がれると、一気に視力が低下します。
3. 網膜剥離にかかる人はどのくらいか
網膜剥離の
4. 網膜剥離の分類と原因について:どんな人に起こりやすいか
網膜剥離はその成り立ちから次の2つに分けられます。
- 裂孔原性網膜剥離
- 非裂孔原性網膜剥離
網膜剥離の最初のきっかけとして、網膜に孔(穴のこと)ができて網膜が剥がれる場合と、孔がない状態で起こる場合があります。ほとんどは孔を原因とした裂孔原性網膜剥離です。それぞれについて説明します。
裂孔原性網膜剥離
網膜剥離の大部分を占めるタイプです。網膜にできた孔から液体化した硝子体が流れ出して剥離がすすみ、時間とともに剥がれる範囲が広くなります。手術をしても、見え方の歪みや視野の欠けが残ることがあります。
網膜に孔があく原因として次のようなものがあります。
- 加齢
- 生まれつき網膜が薄い
- 強度の近視
- 外傷
それぞれの原因について説明します。
◎加齢
50代以降に起こる網膜剥離の主な原因です。
眼球の内部は硝子体というゼリー状の組織で満たされています。この硝子体は加齢とともにゼリー状から液体に変化し、硝子体の中の液体成分が多くなると、容積がだんだん減ってきて、硝子体が網膜から剥がれます。硝子体の剥離が後方(眼球の奥側)で起こることから、この現象は「後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)」と呼ばれ、加齢に伴い誰にでも起こりうるものです。
しかし、硝子体と網膜が強くくっついている人や、網膜が弱くなっている人では、後部硝子体剥離を起こすときに網膜が引っ張られて孔が開き、この孔をきっかけに網膜剥離が起こります。硝子体の液体化が進んだ状態であるため、開いた孔から液体が流れ込みやすく、網膜がどんどん剥がれていくのが特徴です。進行が早いので、
◎生まれつき網膜が薄い
生まれつき網膜が薄い部分があると、その部分に孔(網膜
若年者では硝子体がゼリー状なので、孔があいても硝子体が流れ込みにくく進行はゆっくりです。そのため症状に気がつきにくく、他の病気で眼科に受診した際や、コンタクトレンズの検診で偶然発見されることがあります。
家族に網膜剥離を起こした人がいる場合は、この網膜の
過度に心配しすぎる必要はありませんが、見え方の変化などの症状に気がついたときには医療機関に受診してください。
◎強度の近視
近視は眼球の奥行きの長さ(眼軸長)が伸びることが原因の一つです。眼軸長が伸びると眼球の壁が引き伸ばされて網膜が薄くなります。こうして薄い部分ができると孔があきやすくなり網膜剥離を起こします。
◎外傷
眼への衝撃は網膜剥離の原因になります。例えばボールが眼に当たったり、ボクシングなどで眼の周囲を殴打されると、眼球が強く変形して網膜が破れます。また、アトピー性皮膚炎による痒みから、眼の周りを強くこすったり叩いたりして網膜剥離を起こすこともあります。
非裂孔原性網膜剥離
網膜に孔(裂孔)がない状態で起きた網膜剥離のことです。非裂孔原性網膜剥離は原因によって、さらに「牽引性網膜剥離」と「滲出性網膜剥離」に分けられます。
牽引性網膜剥離とは、何らかの原因で増殖した血管の影響で網膜がひっぱられ網膜が剥がれる病気です。滲出性網膜剥離では、網膜内や網膜色素上皮から
非裂孔原性網膜剥離の治療では、ただ単に剥離した網膜を治すだけでなく、原因となっている病気を治すことが必要です。
5. 網膜剥離の症状について:見え方の変化など
網膜剥離の症状は剥離が起きた位置や大きさ、進行度などによって異なります。よく起こる症状は次のような通りです。
- 視界に黒い点やゴミが見える:
飛蚊症 (ひぶんしょう) - 目の中でピカピカする光が見える:光視症(こうししょう)
- 視野の一部が見えない:視野欠損
- ものが見えにくくなる:視力低下
- ものがゆ
がん で見える:変視症
急激に進行した網膜剥離では上記の症状が起こります。一方、ゆっくりと進行した人は症状に気がつかず、たまたま検査を受けた際に網膜剥離と診断されることがあります。
詳しくは「網膜剥離の症状」を見てみてください。
6. 網膜剥離の検査について
網膜剥離の診断のために行われる検査は次の通りです。
問診 視力検査 眼底検査
この中で最も重要な検査は眼底検査です。これら以外にも病状を十分に把握するために
7. 網膜剥離の治療法について:手術など
網膜剥離に対する治療は手術です。現時点では手術以外の方法はありません。手術にはいくつか種類があり、進行の程度、網膜に開いた孔の大きさ、位置などに応じて適した手術が選択されます。手術は次のような種類があります。
- 網膜凝固術
- 網膜復位術
- 硝子体手術
網膜凝固術は開いた孔の周りを凝固させて塞ぐ手術です。網膜に孔があいているだけで剥離が起きていない段階では網膜凝固術のみが行われます。剥離が進行した段階では網膜復位術や硝子体手術と合わせて網膜凝固術が行われます。
網膜復位術は網膜が剥がれている部分を眼球の外から圧迫するように固定する手術です。
硝子体手術は網膜を引っ張っている硝子体を取り除いて網膜の位置を戻す手術です。眼球にに1-2mmの孔をあけて、そこから小さな
それぞれの手術の説明や
8. 網膜剥離に関して知っておくと良いこと
網膜剥離は放置すると失明に至る病気です。早めに気づいて手術をすれば、視機能を改善したり維持したりすることができます。下記の症状に思い当たる節がある人は、一度眼科を受診して調べてもらってください。
【網膜剥離のセルフチェック】
- 最近急に視力が落ちてきた
- 視野の中にゴミが見える浮かぶ(飛蚊症)
- ピカピカと光るものが見える(光視症)
- 視野がゆがんで見える
- 視野の中で見えにくい部分がある
*両目では気づきにくい症状もあるので、片目ずつチェックしてみてください
なお、予防や再発、原因となることなどに関する疑問はこちらにまとめましたので、参考にしてみてください。