髄膜炎の症状について:発熱・頭痛・嘔吐や後遺症など
初期の髄膜炎では、発熱や頭痛などありふれた病気で経験するような症状しか現れないことが多いです。重症化すると
ここでは髄膜炎の「初期症状」と「重症化したときの症状」を中心に詳しく説明します。
1. 髄膜炎の主な初期症状

髄膜炎の初期症状は他の病気でもみられるなので、初期症状だけから髄膜炎を疑うのは難しいです。具体的な初期症状は次のものです。
- 発熱
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
それぞれについて詳しく説明します。
発熱
髄膜炎になると身体の中で
また、髄膜炎では原因によって発熱の仕方が異なります。例えば細菌性髄膜炎の場合は、40℃を超えるような高熱が急に出ます。一方で、
頭痛
髄膜炎が起こると脳がむくんで腫れます。硬い頭蓋骨で囲まれている脳が腫れると、頭の中の圧力が上がります。この状態は
吐き気・嘔吐
頭の中の圧力が高くなる頭蓋内圧亢進が起こると、吐き気や嘔吐が出ることがあります。
また、髄膜炎で激しい炎症が起こると、炎症性物質が作られます。炎症性物質の一部が脳にある嘔吐中枢(嘔吐を誘発する場所)を刺激すると、嘔吐が起こります。
2. 髄膜炎が重症化したときの主な症状
髄膜炎が重症化すると、初期症状に加えて特徴的な症状が現れます。
次に説明する症状は髄膜炎を強く疑わせる重要なサインです。
- 項部硬直(こうぶこうちょく)
- 意識障害
- けいれん
それぞれの症状について詳しく説明します。
項部硬直
項部硬直は髄膜に刺激が起こった場合に現れる症状の1つで、髄膜刺激症状と呼ばれます。項部は首の後ろ側のことで、いわゆる「うなじ」のことです。項部硬直は「うなじ」の周囲の筋肉に緊張が生じて、首が硬くなった状態のことです。具体的には、顎(あご)を胸につけようと前に曲げると首に痛みを感じたり、前に曲げられなくなったりします。重要な症状なので、髄膜炎が疑われる際には項部硬直の有無が特に詳しく調べられます。
意識障害
髄膜炎が重症化すると意識がもうろうとすることがあり、意識障害といいます。身体の中で起こる激しい炎症の影響によって起こります。意識障害は程度によってさまざまな形で現れます。程度が軽く「会話のつじつまが合わない」といったこともあれば、程度が重く「呼びかけや身体の刺激に対して反応しない」ということもあります。意識障害は髄膜炎だけではなく他の病気でも現れる症状です。意識障害を伴う病気は深刻なことが多いので、疑われる場合はすみやかに医療機関を受診するようにしてください。
けいれん
髄膜炎が重症化すると脳に悪影響を及ぼして、けいれんを起こすことがあります。けいれんが起こると、自分の意志とは無関係に突然筋肉がこわばり、全身がガクガクと震えます。他にも、力が抜けたり、眼球が上転(目が上を向いて白目がちになること)したりすることもあります。
3. 髄膜炎が疑われる子どもの症状
子どもが髄膜炎にかかった時も、ここまで説明してきた「初期症状」や「重症化したときの症状」が現れます。しかし、子どもは自分で症状を十分に伝えられないので、周りの大人が子どもの異変に気づかなければなりません。髄膜炎を見逃さないためのポイントとして、「注意すべき子どもの様子」と「
注意すべき子どもの様子
子どもは辛い症状があっても言葉で十分に伝えることができないことがあるため、髄膜炎の発見が遅れてしまうことがあります。子どもが発熱や嘔吐をしたときに、次のような様子が見られた場合には注意が必要です。
- 機嫌が悪い
- ミルクの飲みが悪い
- 視線が合わない
- 泣き方が弱々しい
- わずかな光や音の刺激で泣く
これらの様子は、髄膜炎に限らず病気が重症化しているサインの可能性があります。すみやかに医療機関を受診するようにしてください。
大泉門の膨らみ
おでこの上端と頭のてっぺんの中間くらいの位置に大泉門という部分があります。大泉門は頭頂部にある骨と骨のつなぎ目のことで、1歳から1歳半頃まではつなぎ目が開いた状態になっています。大泉門は柔らかくペコペコと動くこともあります。正常な状態の大泉門は平らですが、赤ちゃんが髄膜炎になると膨らむことが知られています。発熱や嘔吐をした際に大泉門に膨らみが見られる場合には、髄膜炎が起こっている可能性があるので、医療機関を受診してください。
4. 髄膜炎で後遺症が残ることはあるのか
髄膜炎では後遺症が残ることがあります。 髄膜炎にはさまざまな原因があり、原因によって後遺症の残りやすさが違います。(原因については「髄膜炎の原因について」を参考にしてください。)
ウイルス性髄膜炎では後遺症が残る人は少ないとされています。その一方で細菌性髄膜炎では30%程度の人に後遺症が残るとされています。最も多い後遺症は「難聴」で、その他は「身体の
後遺症が残らないようにするには、重症化する前にできるだけ早く治療を開始することが重要です。少しでも早く治療を開始するために、髄膜炎が疑わしい症状がみられた場合には、すみやかに医療機関を受診してください。
【参考文献】
・「神経内科ハンドブック第5版」(水野美邦/編)、医学書院、2016年
・細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014-日本神経感染学会
・「レジデントのための
・「がん患者の感染症診療マニュアル」(大曲貴夫/監)、南山堂、2012年
・厚生労働省 重篤副作用別疾患対応マニュアル 無菌性髄膜炎