いきぎれ、こきゅうこんなん
息苦しい(数日以内)

息苦しい(数日以内)の基礎知識

概要

急な息切れを起こす原因としては、心臓や肺の病気が関わっていることが多いです。心臓や肺は生命の維持に関わる大事な臓器なので、比較的重大な病気を考える必要があります。

今まで感じたことがないような不自然な息苦しさがある人は、速やかに医療機関を受診してください。主な診療科は一般内科、小児科などで、呼吸器内科や循環器内科が特に専門です。極めて症状が強い人は、夜間休日に救急科での診察となるかもしれません。COVID-19流行による受診制限などもあるので、事前に電話で問い合わせて受診してください。

原因とメカニズム

息切れを起こす原因・メカニズムは極めて多様であり全てを解説することはできません。一方で、急な息切れの多くは心臓や肺のトラブルからくることが多いです。

息切れは身体が酸欠になっている可能性を知らせるサインです。肺は体内への酸素の取り込みを、心臓は体内での酸素の循環を担う臓器です。これらに何らかのトラブルが起こることで息切れを生じます。

考えられる病気

息切れを生じる病気は多く、全てを列挙することはできません。以下では心臓や肺のトラブルに関わるような、よくある病気・注意すべき病気を中心に紹介します。

肺炎・気管支炎

肺炎気管支炎細菌ウイルスが肺や気管支炎症を起こしている状態です。数日単位で症状が悪化します。38度以上の高熱を伴うことが多いです。自然に治ることも少なくありませんが、命に関わることもあります。細菌が悪さをしている人では抗菌薬が有効です。

気管支喘息

気管支喘息は一種のアレルギーの影響で、空気の通り道(気管支)が狭くなる病気です。風邪などをきっかけとして増悪(発作)を起こして、急に息切れが悪化することがあります。

COPD

COPD肺気腫)は主にタバコの影響によって、肺がスカスカになってしまう病気です。風邪などをきっかけとして増悪を起こして、急に息切れが悪化することがあります。

気胸

気胸とは肺が空気漏れを起こし、パンクしてしまった状態を指します。特に病気のない若い人でも急に発症することがあります。空気漏れの程度がひどいと、緊張性気胸呼ばれる、より急を要する危険な状態になりえます。

急性心不全

急性心不全とは急に心臓の機能が悪化して、全身にうまく血液を巡らせることができなくなる病気です。

過換気症候群

過換気症候群は肺や心臓には問題がないにもかかわらず、発作的に過呼吸になってしまう状態です。呼吸を早くすればするほど、より息苦しくなってしまい、パニック状態になることも少なくありません。

怖い病気

ここまでに挙げた心臓や肺の病気も数日単位で命に関わることが少なくないため、いずれも怖い病気と言えます。以下では、数時間単位で命に関わるようなより危険な病気を挙げていきます。

アナフィラキシー

アナフィラキシーは激しいアレルギー症状の一種です。アナフィラキシーを起こすと、急に喉周りがむくんで窒息してしまう危険があります。

上気道閉塞

喉周りの感染症などの影響で、空気の通り道が狭くなってしまうことがあります。具体的には、扁桃周囲膿瘍急性喉頭蓋炎といった感染症が急激な上気道閉塞を起こします。喉の腫れがひどい人では窒息の危険があります。

心筋梗塞

心筋梗塞は心臓に栄養を送る血管が詰まってしまう病気です。急に心臓が動かなくなり、命に関わることが少なくありません。

肺塞栓症

肺塞栓症は心臓から肺に血液を送る血管に血栓が詰まってしまう病気です。詰まる血栓が大きいと、短時間で命に関わることがあります。

受診の目安

今までに感じたことがないような息切れには、重大な病気が隠れていることが少なくありません。そのため、基本的には速やかな医療機関の受診をお勧めします。以下のような時は、危険な病気の可能性が高いので、より速やかな受診が必要です。

・息苦しさの程度が強い
・38度以上の発熱がある
・意識がもうろうとする
・水も飲み込めないほど喉が痛い
・胸に強い痛みがある

診療科

急な息切れは重大な症状なので、内科や小児科のお医者さんであれば、まずはどのような状態かあたりをつけたり応急処置をしてくれることが多いです。また、呼吸器内科や循環器内科などより専門的な医療機関に必要に応じて紹介してくれます。症状が急であり、夜間休日の受診になってしまう場合などは、救急外来の受診・救急車での受診もやむを得ません。しかし、基本的には救急外来は応急処置を行う場なので、しっかりと継続的に診てもらうには平日の日中に内科、小児科などを受診した方がよいです。COVID-19流行による受診制限などもあるので、事前に電話で問い合わせて受診してください。

内科、小児科

息切れの程度が軽い、いつも診てもらっているお医者さんである、家から近い、などの理由があればまずは一般内科や小児科の受診で構いません。必要に応じて、呼吸器内科や循環器内科などより専門的な医療機関に紹介してくれます。

呼吸器内科

空気の通り道(気道)や肺の病気を専門にする診療科です。はじめから呼吸器内科を標榜している診療所やクリニックを受診するのもよいと思われます。必要に応じてより大きな病院や他の診療科に紹介してくれます。

循環器内科

主に心臓を専門にする診療科です。胸の痛みが強い人は最初から循環器内科を標榜している診療所やクリニックを受診するのもよいと思われます。必要に応じてより大きな病院や他の診療科に紹介してくれます。

検査

急な息切れに関連した検査には、次のようなものがあります。

パルスオキシメータ

指などに機器を取り付けることで、簡単に血中の酸素飽和度(SpO2)を測定できます。年齢や元々の状態によって異なりますが、SpO2 が93%以下くらいであれば何らかの酸欠になる病気が隠れていることが多いです。また、既に酸欠になっているため、入院を含めた積極的な治療が必要なことが多いです。

胸部X線(レントゲン)検査

急な息切れの原因としてとても大事な、肺の病気を簡単にチェックすることができます。

胸部CT検査

レントゲンでは写らない細かな病気を診断するためにはCT検査が行われます。放射線被曝や検査費用の問題もあるため、重大な病気の可能性が考えられる人以外には必ずしも行われません。

心電図検査

急な息切れの原因が心臓にあるかどうかを調べる際にまず行われる検査です。多くの医療機関で行われています。

血液検査

急な息切れに直接結びつく情報が得られることはそれほど多くありませんが、全身の状態をチェックするためによく行われる検査です。

治療

原因の病気がはっきりとしている人では、その病気の治療が大切です。息切れそのものを抑える薬は通常使われません。また、急な息切れは危険なサインなので、症状を誤魔化してしまうのは望ましくないかもしれません。

セルフケア

急な息切れには危険な病気が隠れていることが少なくないので、基本的にはセルフケアで済ませず医療機関を受診してください。

医療機関の受診目安を判断するために、パルスオキシメータがあれば測定してみるのも一案です。SpO2が95%以下くらいであれば何らかの重大な病気があるかもしれません。ただし、SpO2が96%以上くらい(正常)でも、病気がないと言えるわけではないので注意してください。

過換気症候群のようにセルフケアが可能な息切れであると既に診断されている人は、診断された際のお医者さんの指導に従ってください。

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