休日の頭痛、疲労感、眠気。実は「カフェイン切れ」かも?
「コーヒーやエナジードリンクがないと仕事のやる気が起きない」
「カフェインを摂らない週末は、いつも頭痛やだるさに悩まされる」
「夕方にコーヒーを飲んだだけなのに、深夜まで目が冴えて寝つきが悪い」
このように、カフェインとの付き合い方に悩んでいる人は多いのではないでしょうか。あるいはカフェインのせいか分からず、なんとなく体調不良を自覚している人もいるかもしれません。
タバコを吸わない方が身体によいことは言うまでもなく1)、お酒についても少量でも発
「カフェインは健康によいのか?」問題はまだ決着がついておらず、現在でも多くの科学的知見が積み上げられている最中です。このコラムでは科学的根拠をもとに、それぞれの人にとってよりよいカフェインとの付き合い方を考察します。
1. カフェインの功罪と摂取目安
これまでに報告されているカフェインの主な効果やリスクをまとめると、以下のようなものがあります 4),5)。
【カフェインと健康との関連】
| ポジティブな影響 | ネガティブな影響 |
| 短期的な効果 | 短期的な効果 |
|
|
| 長期的な疫学データ | その他のリスク |
ただし、これらの報告の解釈には注意が必要です。カフェインに上表のような作用があるとする論文の多くは、「コーヒーをどれくらい摂取しているか」に着目して結論づけられたものです。したがって、コーヒーに含まれるポリフェノールなどの作用である可能性もあり、全てのカフェイン飲料で上表の作用があるかは定かでありません。長期的な疫学データについては、「コーヒーを飲む人には結果的にこういう傾向があった」と言えるだけで、「コーヒーを飲めばこのようになる」(因果関係)と示されているわけではないことにも注意が必要です。そのため、カフェインが苦手な人や体質に合わない人が、ポジティブな影響を期待して無理に飲むのはお勧めできません。
なお、コーヒーに含まれる「シュウ酸」は尿中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結晶をつくり、尿路結石という病気の原因となることがあります。過度に心配する必要はありませんが、気になる人は対策としてミルクを入れてコーヒーを飲むと、尿になる前にカルシウムがシュウ酸と結晶を作るので、腸を通って体外に排泄されます。同様の理由で、食事に含まれるカルシウムを利用できるので、「食後のコーヒー」も尿路結石対策に有効です。
先ほどの表の短期的な覚醒・認知機能向上や睡眠の質の低下、睡眠時間の短縮といった点は多くの人に経験があり納得しやすいと思います。しかし、発がんリスクの低下や骨折リスクの上昇、といった長期的な点は、「何百万人もデータを解析したら20%ほど差があった」程度のものなので、個々人が実感するのは難しいです。少なくとも筆者としては、好きでもないのにがん予防のために毎日コーヒーを飲んだり、骨折が怖いので飲まないようにする、というほどのものではないと思います。
摂取量の上限の目安
一般的に、健康な成人のカフェイン摂取量は1日400mgまで、妊娠・授乳中の人は1日200mgまでにとどめることとされています。
【代表的な飲料のカフェイン含有量(概算)】
- ドリップコーヒー(150 mL): 80-100 mg
- ボトルコーヒー(500 mL): 150-300 mg (濃さに商品差が大きい)
- レッドブル® (250 mL): 80 mg
- モンスターエナジー® (355 mL): 142 mg
- ZONe ENERGY®(500 mL): 150 mg
- 眠眠打破®(50 mL): 120 mg
- 強強打破®(50 mL): 150 mg
- コーラ (500 mL): 50 mg
- オロナミンC® (120 mL): 19 mg
- 一般的な緑茶(500 mL): 65-100 mg
- 濃い系のお茶(500 mL): 120-160 mg
コーヒーや代表的なエナジードリンクでも、1杯ですぐに健康成人の推奨量を超えるほどのカフェインは含まれていません。しかし、数本飲んだり、お茶も合わせると上限の目安量を超えてしまっていることは少なくありません。特に、お茶のカフェイン量の多さは盲点になっているのではないでしょうか。
2. カフェイン処理能力の個人差
では、上記目安の範囲内であれば誰でもカフェインの恩恵を受けられるのでしょうか。実はそう単純ではありません。カフェインの処理(
カフェインの大部分は、肝臓にある「CYP1A2」という
【カフェイン代謝タイプごとの特徴】
- 代謝が速いタイプ: カフェインを素早く分解できるため、夜に飲んでも睡眠への影響が少ない傾向にあります。また、カフェインによる健康メリットを受けやすいとも言われています 5),6)。
- 代謝が遅いタイプ: カフェインが体内に長時間留まります。そのため、昼食後のコーヒーが夜の不眠につながったり、少量でも動悸や焦燥感を感じることがあります。
遺伝子タイプの割合には様々な報告がありますが、大まかに半分の人は代謝が「速いタイプ」、半分の人は「遅いタイプ」に分けられます 6)。また、喫煙はCYP1A2を誘導し、
自身がどのようなCYP1A2遺伝子をもっているかは、市販の遺伝子検査キットなどで調べることも可能です。ただし、数万円以上かかる高価なものであり、解釈も容易ではなく、上述の通り遺伝子以外の影響も受けるため、安易に勧められるものではありません。夕方にコーヒーを1杯飲んでも普段通り寝られるかどうか、セルフチェックするくらいがお手軽な判定方法だと思います。
3. カフェインの依存性と離脱症状
では、「代謝が速いタイプ」の人ならば、毎日400mgを摂取してメリットだけを享受できるかというと、ここでも話はそう簡単ではありません。
カフェインは毎日摂取していると身体が慣れてきて、覚醒効果が弱くなる傾向があります。また、身体的に依存性があり、カフェインが切れてくると離脱症状も出現することがあります。カフェインの離脱症状には以下のようなものがあります。
【カフェインの離脱症状】
- 脈打つような頭痛(最もよくある症状)
- 疲労感、眠気
- イライラ感 など
カフェインの血中半減期(血液中濃度が半分になるのにかかる時間)は平均4-5時間と言われ、速い人で3時間、遅い人で10時間ほどと個人差があります。そのため、本格的にカフェインが切れて離脱症状が出てピークに達するのは、最終摂取の翌日から翌々日が多いとされています 7)。
こうしたメカニズムがあり、平日はコーヒーやエナジードリンクを飲みながらバリバリ働いている人が、週末にカフェインを摂らなくなると頭痛や疲労感に悩まされることが少なくありません。また、カフェインが関係していることに気づいていない人も多いように思います。
4. さいごに
カフェインは、うまく使えば生活の質を高める強力なツールになりますが、合わない使い方をすれば心身の不調の原因にもなります。
大事なのは、自身がカフェインによってどのような影響を受けているのか客観的に理解して、今後のカフェインとの付き合い方を上手に判断していくことかと思います。
コーヒーの香りやエナジードリンクの喉ごしを楽しみ、仕事のスイッチを入れる「相棒」として付き合うも良し。もし週末の不調や睡眠の質に心当たりがあるならば、デカフェ(カフェインレス)に切り替えてみるも良し。
このコラムが、あなたとカフェインとの「ちょうどいい距離感」を見つけるきっかけになれば幸いです。
執筆者
- 「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(厚生労働省 2025年12月15日閲覧)
- 「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」(厚生労働省 2025年12月15日閲覧)
- GBD 2016 Alcohol Collaborators. Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet. 2018 Sep 22;392(10152):1015-1035.
- Poole R et al. Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes. BMJ. 2017 Nov 22;359:j5024.
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the safety of caffeine. EFSA Journal. 2015;13(5):4102.
- Cornelis MC et al. Coffee, CYP1A2 genotype, and risk of myocardial infarction. JAMA. 2006 Mar 8;295(10):1135-41.
- Juliano LM et al. A critical review of caffeine withdrawal: empirical validation of symptoms and signs, incidence, severity, and associated features. Psychopharmacology (Berl). 2004 Oct;176(1):1-29.
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。