急性白血病の治療薬など新薬5製品はどんな薬?
2019年9月に新薬12製品が登場しました。このコラムでは新薬の中からヴァンフリタ、ゾルトファイ、ミニリンメルト、オンパットロ、ユルトミリスについて紹介します。
◆ ヴァンフリタとは?
ヴァンフリタ®は血液の
急性白血病では血液細胞の遺伝子に異常が起こり、白血病細胞の増殖が止まらなくなっています。FLT3遺伝子はがん細胞の増殖に関わる遺伝子の一つで、急性白血病患者さんの4人に1人に異常が見つかります。FLT3遺伝子に異常がある急性白血病はFLT3遺伝子異常がない場合に比べて再発が多く、見通しが良くないことが分かっています。
ヴァンフリタ®はFLT3遺伝子異常がある急性白血病に対して、これまでの
参考文献1:Lancet Oncol. 2019 Jul;20(7):984-997
◆ ゾルトファイとは?
ゾルトファイ®は2型糖尿病の新しい治療薬です。2型糖尿病は
ゾルトファイ®は、すでに2型糖尿病の薬として使われているGLP-1製剤のビクトーザ®と持効型インスリンのトレシーバ®が一つにまとまった配合剤(注射薬)です。GLP-1製剤は体内でインスリン分泌を促進する作用があります。
ビクトーザ®もトレシーバ®も自己注射が必要な薬剤なので、配合剤となることで両剤が必要な人の注射の負担が減ることが期待されます。
◆ ミニリンメルトとは?
ミニリンメルト®OD錠(
これまでミニリンメルト®は中枢性尿崩症に対する治療薬として用いられてきました。ただし、使用する錠剤に含まれる成分量が異なります。中枢性尿崩症の適応となっていたミニリンメルト®が60μg錠、120μg錠、240μg錠であったのに対し、今回夜間頻尿に適応となったミニリンメルト®は25μg錠、50μg錠と異なります。また、25μg錠、50μg錠のミニリンメルト®は中枢性尿崩症に対する適応が認められていないので注意が必要です。
◆ オンパットロとは?
オンパットロ®は家族性アミロイドポリニューロパチーの新たな治療薬です。家族性アミロイドポリニューロパチーはアミロイドという異常物質が神経に沈着することで、「手足のしびれ」、「めまい・立ちくらみ」、「下痢」、「排尿困難」などの症状があらわれる難治性疾患です。また、遺伝性のある病気であり、本人がこの病気の場合、家族の中にも同じ病気をもつ人があらわれる可能性があります。
オンパットロ®は家族性アミロイドポリニューロパチーの中でもトランスサイレチン型と呼ばれるものに有効性が認められています。トランスサイレチン型ではトランスサイレチン遺伝子に変異があることで異常なタンパク質の生成につながり、アミロイドの沈着が起こります。オンパットロ®は変異があるトランスサイレチン遺伝子から異常なタンパク質が作られないようにします。
これまでトランスサイレチン型の家族性アミロイドポリニューロパチーの治療法は限られてきましたが、オンパットロ®の登場により治療の選択肢が広がることが期待されます。
参考文献2:N Engl J Med. 2018 Jul 5;379(1):11-21
◆ ユルトミリスとは?
ユルトミリス®は発作性夜間ヘモグロビン尿症(発作性夜間血色素尿症)の治療薬です。発作性夜間ヘモグロビン尿症は血液の元である細胞に異常が起こり、体内の「
ユルトミリス®は補体の機能を抑えることで発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する効果を発揮します。これまで補体を標的とした発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬としてはソリリス®がありました。既存薬のソリリス®は最初の4週間は週に1回、その後は2週に1回投与が必要な点滴薬でしたが、ユルトミリス®は最初の2回が2週間ごとの投与、3回目以降は8週に1回投与と投与回数が少なくて済むのが特徴です。投与回数は少ないユルトミリス®ですが、ソリリス®に対して効果は劣らないことも確認されています。
ユルトミリス®の登場により発作性夜間ヘモグロビン尿症の外来通院の負担が減ることが期待されます。
参考文献3:Blood. 2019 Feb 7;133(6):530-539
2019年9月に登場した新薬12製品のうち5製品について紹介しました。新薬の登場によりこれまで治療が難しかった病気に対しても治療の選択肢も広がっています。このコラムを参考に新薬について知っていただければ幸いです。
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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。