2017.09.03 | ニュース

ホモシステインを減らす治療で心筋梗塞は防げない?

文献の調査から
ホモシステインを減らす治療で心筋梗塞は防げない?の写真
(c) Andrey Popov - Fotolia.com

ホモシステインは体内の化学反応の過程で作られる物質です。ホモシステインが多いことが動脈硬化と関係するという説があります。ホモシステインを減らす治療の研究から出ている結果が調査されました。

ホモシステインを減らして心筋梗塞・脳卒中は防げるか

ベネズエラの研究班が、ホモシステインを減らす治療の効果として報告されているデータの調査を行い、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

この研究は、文献を集める方法により、過去の研究から示されたデータを吟味して統合したものです。

ホモシステインは葉酸などを飲むことで減らすことができます。ホモシステインを減らすことが病気予防につながるかどうかについては見解が定まっていません。たとえば『脳卒中治療ガイドライン2015』には、「高ホモシステイン血症には、葉酸を使用することを考慮しても良いが、それが脳梗塞再発予防に有効か否かには十分な科学的根拠がない」との記載があります。

研究班は文献データベースを検索し、末期腎不全患者を対象とした研究を除き、条件に合う研究を集めました。

2009年、2013年、2015年にも同様のテーマで文献の調査が行われていましたが、さらに更新しました。

 

心筋梗塞・死亡は防がないが脳卒中を防ぐ

条件を満たす15件の研究が見つかりました。データから、偽薬と比べたときにホモシステインを減らす治療の効果として以下の結果が得られました。

  • 心筋梗塞は減らない(高い質の証拠)
  • 死亡は減らない(高い質の証拠)
  • 副作用やその他の原因による深刻な出来事は増えない(高い質の証拠)
  • 脳卒中がわずかに減る(高い質の証拠)

脳卒中については、採用された研究の期間が1年から7.3年であり、その間に発生した脳卒中が偽薬または通常のケアのグループでは1,000人あたり51人、ホモシステインを減らすグループでは1,000人あたり46人に減っていました。

 

ホモシステインは減らすべき?

ホモシステインを減らす治療によって脳卒中が減るなどとした報告を紹介しました。

この結果によれば、害がなく、脳卒中に対して有益に働くことから、ホモシステインを減らすことに何らかの価値があるかもしれません。

ただし、効果の量はあってもわずかと考えられます。研究対象とされる人は高齢や病気のリスクが高いなどを条件とされている場合が多いですが、それにより数年で20人に1人が脳卒中を起こす集団の中で、全員が葉酸などを飲むことにより200人あたり1人程度が脳卒中を防げるという計算になります。若い人や持病のない人ではさらに差が小さいと考えられるでしょう。

わずかでも効果があり負担が小さければ、試してみようと思うのは間違っていません。治療中の病気がある人は、治療に影響することも考えられるため、医師に相談してからにしてください。また統計的には検出できないほどまれと思われるものの、過敏症などの副作用が出ることもないとは言えません。

実際に脳卒中などの重要な結果に差があったかをデータで確かめることで、効果的な治療を選ぶ助けとすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Homocysteine-lowering interventions for preventing cardiovascular events.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Aug 17. [Epub ahead of print]

[PMID: 28816346]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。