2016.08.30 | ニュース

カルシウムサプリを飲んだ女性が認知症に?脳卒中後の発症頻度に関連

スウェーデン700人を5年間追跡

from Neurology

カルシウムサプリを飲んだ女性が認知症に?脳卒中後の発症頻度に関連の写真

健康のためにサプリメントを飲んでいますか?サプリメントは不足した栄養素を補うことができますが、良いことばかりとは限りません。統計データから、カルシウムサプリメントを飲んでいた女性に認知症が多く発生していたことが報告されました。

◆女性700人の5年間の統計から

スウェーデンとイギリスの研究班が、専門誌「Neurology」で報告した研究を紹介します。

研究班はスウェーデンの統計データの解析を行いました。対象者として、調査開始時点で70歳から92歳で認知症がなかった女性700人が選ばれました。開始時点でCTから得られた検査結果、以後に行われたカルシウムサプリメントの使用量についての情報が利用されました。

カルシウムサプリメントの使用によって、5年間の認知症の発症頻度に違いがあるかが検討されました。

 

◆脳卒中後の女性に関連あり

解析から次の結果が得られました。

カルシウムサプリメントで治療された女性(98人)は、補充療法を受けなかった女性(602人)に比べて認知症を発症するリスクがより高く(オッズ比2.10、95%信頼区間1.01-4.37、P=0.046)、脳卒中関連認知症のサブタイプ(脳血管性認知症および混合性認知症)についてリスクが高かった(オッズ比4.40、95%信頼区間1.54-12.61、P=0.006)。

カルシウムサプリメントによる治療を受けていなかった女性に比べて、カルシウムサプリメントによる治療を受けていた女性のほうが高い頻度で認知症が発生していました。特に、脳卒中が原因に関係する脳血管性認知症と混合性認知症について関連が見られました。

カルシウムサプリメントとの関連がある女性の特徴を調べたところ、次の結果が得られました。

層別した解析では、カルシウム補充療法は脳卒中の既往があるグループ(オッズ比6.77、95%信頼区間1.36-33.75、P=0.020)および白質病変を認めるグループ(オッズ比2.99、95%信頼区間1.28-6.96、P=0.011)で認知症の発症と関連し、どちらにも当てはまらないグループでは関連がなかった。

脳卒中後の女性と、CTで脳の白質に異常が見つかっていた女性では、カルシウム補充療法と認知症に関連がありました。どちらにも当てはまらない女性では、カルシウム補充療法と認知症に関連が見られませんでした。

研究班は「カルシウム補充療法は、脳血管疾患がある高齢女性には認知症を発症するリスクを増加させるかもしれない」と結論しています。

 

この研究の方法では、カルシウムサプリメント以外の原因が関係している可能性が否定できません。たとえばもともと骨粗鬆症がある人では骨折による影響やホルモン療法による影響があったのではないか、という見方も考えられます。

確実なことはこの研究だけではわかりませんが、今後の研究しだいでより明らかになってくるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Calcium supplementation and risk of dementia in women with cerebrovascular disease.

Neurology. 2016 Aug 17. [Epub ahead of print]

[PMID: 27534711]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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