2017.03.09 | ニュース

妊娠前から毎日0.4-0.8mgの葉酸を、米機関が推奨

更新により2009年の推奨を維持

from JAMA

妊娠前から毎日0.4-0.8mgの葉酸を、米機関が推奨の写真

新生児の神経管欠損症は、脳や脊髄の発生がうまくいかず、形態異常が現れている状態です。妊娠前から葉酸を補充することでリスクを少なくできます。米国予防医学作業部会が葉酸補充の推奨内容を再検討し更新しました。

米国予防医学作業部会(USPSTF)が、妊娠前の女性に葉酸の補充を勧めることについて、2009年に出していた推奨内容を更新しました。

2009年の推奨では、それまでの知見に基づいて、「妊娠する予定があるか妊娠する能力があるすべての女性に対して、毎日0.4mgから0.8mgの葉酸を含むサプリメントを摂取することを勧める」とされていました。

今回の更新では最近の研究データによって推奨内容を変更する必要があるかが検討されました。

 

神経管欠損症に分類される状態として無脳症や二分脊椎があります。

アメリカの2009年から2011年の統計では、1万出生あたり6.5人の子どもに無脳症または二分脊椎が発生していると推計されています。

葉酸の効果の証拠は過去の研究報告から集められました。

1984年から1992年にかけてハンガリーで行われた研究では、5,453人の女性が対象となり、妊娠前後に毎日葉酸0.8mgを飲むグループと飲まないグループに分けられました。葉酸を飲まなかったグループでは神経管欠損症が6人の子どもに発生しましたが、葉酸を飲んだグループでは1人も発生しませんでした。

一般に、何らかの介入の効果を調べるためには、介入する場合としない場合を比較する研究が必要です。しかし、効果が確かと思われている介入ほど、介入しない状況を人為的に作ること、ここでは女性に対して「葉酸を飲んではいけない」と指示して飲んだ場合と比較することが、倫理的に難しくなります。そのため、葉酸を飲むか飲まないかに介入した研究は過去にも多くはありません。

介入せず追跡調査によって得られたデータや、子どもに神経管欠損症が発生した女性・発生しなかった女性からさかのぼって葉酸摂取量を調べたデータからは、いずれも1日あたり0.4mgから0.8mgの葉酸補充によって神経管欠損症が少なくなると見積もられました。

2009年の推奨よりも後に報告された研究結果を含め、改めてデータを解析した結果、以前のとおり葉酸の補充が支持されました。

葉酸による副作用について、妊娠中の体重増加、下痢、便秘がわずかに増える可能性が指摘されていました。しかし深刻な副作用と見られるものはありませんでした。

結論として、新たな推奨では2009年と同様に、「妊娠する予定があるか妊娠する能力があるすべての女性に対して、毎日0.4mgから0.8mgの葉酸を含むサプリメントを摂取することを勧める」とされました。

 

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、USPSTFの推奨と同様に、妊娠の可能性がある女性には1日あたり0.4mgの葉酸の補充を勧めています。一方、過剰摂取による神経障害なども報告されているとして、耐容上限量を18-29歳の女性で0.9mgと決めています。

厚生労働省による「国民健康・栄養調査」(2015年版)によれば、20-29歳の女性の平均で葉酸の摂取量は1日あたり0.234mgです。普通の食事を工夫するだけでは0.4mg増やすことは難しく、サプリメントを飲むことで適量に届くことが期待できます。ただし飲み過ぎには注意が必要です。

妊娠を考えている女性は、量を確かめてうまく葉酸のサプリメントを利用することが、子どもの健康のためにも好ましいと言えます。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Folic Acid Supplementation for the Prevention of Neural Tube Defects: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement.

JAMA. 2017 Jan 10.

[PMID: 28097362]

*本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]