2016.07.09 | コラム

フロモックス錠100mg(セフカペンピボキシル塩酸塩)の副作用、飲み合わせ

長い目で上手に抗菌薬を使っていくために

フロモックス錠100mg(セフカペンピボキシル塩酸塩)の副作用、飲み合わせの写真

フロモックス(セフカペンピボキシル塩酸塩)は抗生物質の中でも特によく出されます。子供も飲めて飲み合わせの心配が少ない薬ですが、下痢などの副作用もあります。フロモックスを飲むときに気を付けたいことを解説します。

1. フロモックス(セフカペンピボキシル塩酸塩)ってどんな薬?

フロモックス®は膀胱炎(ぼうこうえん)から皮膚の感染までかなり幅の広い感染症に対して効果があることになっています。

抗生物質(抗菌薬、抗生剤)には、効果を発揮しやすい細菌とそうでない細菌があります。フロモックスではどうでしょうか?

 

◎フロモックスは大腸菌などに強い

フロモックスは、グラム陰性桿菌(GNR)と呼ばれるグループの細菌に効果を発揮しやすいことがわかっています。グラム陰性桿菌は腸の中に多く、このグループに属する細菌の代表例は以下のものになります。

  • 大腸菌(膀胱炎など)
  • クラブシエラ・ニューモニエ(膀胱炎など)
  • インフルエンザ桿菌(肺炎など)

つまり、フロモックスは上に挙げた菌が起こす感染症に強い抗生物質ということになります。

参考までに、膀胱炎になると発熱や残尿感が起こります。また、肺炎になると、発熱に咳や痰といった症状が出てきます。

 

◎フロモックスはウイルスには効かない

フロモックスはウイルスには効きません。「大腸菌に効くんじゃないの?」と思えるかもしれませんが、ウイルスと細菌は違うものです。

フロモックスだけでなく、抗生物質はどれもウイルスには効きません。たとえばかぜの原因はほとんどがウイルスなので、かぜに抗生物質は効きません。もちろんフロモックスもかぜには効きません。

フロモックスが効く細菌の中に「インフルエンザ桿菌」がありますが、インフルエンザ桿菌とはインフルエンザウイルスのことではなく、インフルエンザの原因ではありません。インフルエンザの原因はウイルスなので、インフルエンザにフロモックスは効きませんし、ほかの抗生物質も効きません。

 

2. フロモックスで気をつけるべき飲み合わせ

薬を飲む際には、薬同士の飲み合わせ(相互作用)が問題になることがあります。フロモックスではどうでしょう。

 

◎フロモックスにはあまり飲み合わせが悪い薬はない

フロモックスは相互作用が問題となるような薬、つまり飲み合わせの悪い薬はあまりありません。ほかの薬と飲み合わせを心配しなくていいのはフロモックスの大きな魅力になります。

強いて挙げるとすれば、ラシックス®(成分名:フロセミド)という薬があります。ラシックスとフロモックスを同時に飲むと腎臓への負担が強くなり、腎臓の機能が低下してしまうことがあります。ラシックスは特に心臓病の方に多く処方される薬ですので、心臓病の方がフロモックスを処方された場合は、尿が出づらくなるような症状が出ないか気をつけてください。

とはいえ、実際にはラシックスとフロモックスを同時に飲んでも問題は起こらない場合がほとんどです。

 

◎フロモックスは苦味が強いので飲み方に注意

フロモックスは苦味が強い薬ですので飲みやすいようにコーティングされています。コーティングを溶かしてしまうと苦味が強く出てなかなか飲みづらくなります。

フロモックスの錠剤が酸性のものに触れたり水に溶けると、コーティングが溶け出して苦味が強くなります。苦味が強くなるため避けたい飲み方は以下の様になります。

  • 水に溶かして飲む
  • 柑橘系ジュースと一緒に飲む
  • 痰切りの薬(ムコソルバン®、ムコダイン®)と一緒に飲む

これら飲み方はフロモックスを飲むのが苦痛になりかねないので避けるようにしましょう。

 

◎フロモックスの上手な飲み方

フロモックスは子どもも飲める薬です。しかし、フロモックスには苦味という弱点があります。そこで、フロモックスの錠剤はなるべく苦味を感じさせないようにコーティングや味付けがされています。それでも子どもは飲むのが大変かもしれません。

どういった飲み方をすると苦味を感じにくくなるでしょう。

  • オブラートを使って飲む
  • 服薬補助ゼリーを使って飲む
  • 酸味のない味の濃いものを使って飲む

服薬補助ゼリーは薬局・薬店・ドラッグストアで処方箋なしで買えます。服薬補助ゼリーを使うと薬を飲みやすくなるだけでなく、薬と水が気管に入ってむせることも防げます。

水の代わりに酸味のない味の濃いもので飲むのもいい考えです。例を挙げてみましょう。

  • アイスクリーム
  • 牛乳
  • 豆乳
  • メープルシロップ

ここに挙げたものは一例です。個人個人で自分にあったものがありますので、いろいろと試してみて、一番しっくり来るものを使うのが良いでしょう。

ただし、牛乳などで飲むのはフロモックスだけにしてください。ほかの薬の中には水以外で飲むと効きにくくなったり、逆に効きすぎたりするものもありますので、あくまで水で飲むのが原則です。

 

3. フロモックスの副作用

フロモックスの副作用で特に気を付けたいのは、下痢、皮膚の症状、息苦しさなどです。詳しく説明します。

 

◎フロモックスのよくある副作用

フロモックスを飲むことで起こりやすい副作用は以下のようになります。

  • 皮疹(赤いブツブツ、かゆみを伴う皮膚の膨れ)
  • 下痢、便が柔らかくなる、腹痛
  • 吐き気、嘔吐

皮疹が出た場合はアレルギー症状が疑われます。アレルギーがひどくなると、下痢や腹痛が止まらなくなったり息苦しくなったりします。

薬のアレルギーは命にかかわるくらい危険な状態になる可能性がありますので、すぐに薬を替えなければいけません。万一フロモックスを飲んだあとに皮疹が出たら、必ず処方したお医者さんに伝えて下さい。また、お薬手帳にアレルギーが出たことを記載しておくと、薬剤師も注意できるようになります。

フロモックスで下痢の起こる頻度は高いです。下痢はフロモックスと一緒に整腸剤を飲むことで予防できる場合があります。

吐き気や嘔吐は個人差によりますが、フロモックスに限らず抗生剤を飲んだ際にはしばしば起こります。フロモックスを飲んだあとに明らかに気持ち悪さに襲われたら、飲むのを中止するほうが良いです。

 

◎フロモックスのまれではあるが注意すべき副作用

フロモックスには皮疹と下痢以外の副作用もあります。副作用の中でも、めったに出ないが起こってしまうと非常に危険なものは以下です。

  • 強いアレルギー:息苦しい、顔が腫れる、冷汗、意識がもうろうとする
  • 腎臓の機能低下:足がむくむ、尿が少ない・出ない、だるい、頭痛
  • ひどい腸の炎症:下痢、腹痛、血便
  • 重い皮膚や口の中の症状:水ぶくれ、皮がむける、強い熱感や痛み
  • 低血糖:意識もうろう、元気がない、吐く、冷や汗、動悸(どうき)

フロモックスを飲んで意識がもうろうとする・息苦しい・下痢や腹痛が止まらない・皮膚がただれてくるといった症状が出てきた場合は、すぐに処方したお医者さんに相談してください。

 

4. フロモックスが効かない場合にも注意?

フロモックスを飲んでも効果を実感できないことがあるでしょう。実はフロモックスは使い方が間違っていると効果が出にくくなります。

 

◎フロモックスは飲んでも30%しか吸収されない

飲み薬の抗生物質は、腸から血液に吸収されてはじめて効果を発揮します。

100飲んで100吸収されるのであればすごく効率的ですが、100飲んで1しか吸収されないのでは薬の効果が全く期待できません。それどころか、吸収されなかった99は腸の中にいる善玉菌を殺してしまうかもしれません。飲むタイプの抗生物質は吸収率が高いほうがいいと言えます。

フロモックスの吸収率はどの程度なのでしょうか?飲み方や腸のコンディションによっても前後しますが、およそ30%と報告されています。荒い言い方をすれば、フロモックスを100飲んだら30は感染症の治療に役立っていますが、70は腸の中の細菌を殺しているだけです。

飲んだうちの30%だけで十分な量になるためには、相当量のフロモックスを飲まないといけないことになります。

 

◎フロモックスの不得意な細菌が原因だと効かない

フロモックスは大腸菌やインフルエンザ桿菌の治療には効果的ですが、ほかの細菌は得意ではありません。

たとえばグラム陽性球菌という分類に入る、肺炎球菌や溶連菌などにはフロモックスはあまり向いていません。

グラム陽性球菌の治療はケフレックス®(成分名:セファレキシン)の方が得意です。ケフレックスの吸収率はおよそ90%で、ケフレックスを飲むと効率よく吸収されます。

つまり、グラム陽性球菌による感染症が疑われるときには、フロモックスの出番は考えにくいということです。

フロモックスが苦手な細菌がよく起こす症状の例を挙げます。

  • 咳、たん(肺炎球菌などによる肺炎)
  • のどの痛み(溶連菌による咽頭炎)
  • 頬が真っ赤になる(溶連菌による丹毒)
  • 皮膚が赤くなって腫れてくる(黄色ブドウ球菌による蜂窩織炎)

咳やのどの痛みで病院に行ってフロモックスが処方された場合は、診断名をしっかり聞いておいてください。

 

◎フロモックスが効いていないと思ったら

もともと元気な若い人に咳や熱が出たとき、ほとんどは薬を飲まなくても自然に治ります。フロモックスを処方された日数だけ飲んでも治らなければ、処方したお医者さんに「薬が効きません」と言ってみましょう。

フロモックスを飲む前よりも症状が悪くなることがあれば、薬が残っていてももう一度相談に行きましょう。

フロモックスの効果が発揮されない場合について詳しくは「フロモックス錠(セフカペンピボキシル塩酸塩)が効かないのはなぜ?」でも説明していますので、あわせてご覧ください。

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る