高血圧ではない人は減塩しなくてもいいのか?
血圧を下げるために食事の塩分を減らすように言われた人は多いでしょう。しかし、高血圧症の診断がつかないときには、高血圧症の人よりも塩分制限はゆるめでよいとされています。高血圧ではない人について塩分と病気の関係が検討されました。
◆ナトリウムの量と病気に関係は?
ここで紹介する研究は、過去の4件の研究データを統合して、あわせて49か国にわたる133,118人の対象者について、数年間の追跡調査の結果として得られた病気の発生率や死亡率の統計を解析したものです。
尿の中に排泄されるナトリウムの量をナトリウム摂取量の目安として、死亡や脳卒中・心筋梗塞など主要な
◆高血圧のない人ではナトリウムが多くても病気が増えない
次の結果が得られました。
ナトリウム摂取量の増加は高血圧のある個人において(ナトリウム摂取量1gに対して2.08mmHgの変化)、高血圧がない個人(1gに対して1.22mmHg、Pinteraction<0.0001)よりも大きく
収縮期血圧 の増加と関連した。
高血圧の人よりも、高血圧ではない人ではナトリウムによる血圧への影響が小さくなりました。
高血圧のない個人において(3,021件のイベント)、ナトリウム摂取量が1日あたり4-5gと比較して(高血圧がない集団のうち18,508人、27%)、ナトリウム排泄量がより多いことは一次複合アウトカムのリスクと関連がなく(高血圧がない集団のうち6,271人、9%において1日あたり7g以上であり、ハザード比0.90、95%信頼区間0.76-1.08、p=0.2547)、対してナトリウム排泄量が1日3g未満であることは
有意 なリスク増加と関連した(高血圧のない集団のうち7,547人、11%においてハザード比1.26、95%信頼区間1.10-1.45、p=0.0009)。
高血圧ではない人では、ナトリウム排泄量が1日7g以上でも、悪い結果が増える影響は見られませんでした。逆に、ナトリウム排泄量が1日3g未満では悪い結果が増えていました。
仮にナトリウム排泄量を摂取量とみなして計算すると、1日7gのナトリウムは食塩18gほどに相当します。
研究班は「これらのデータによれば、高血圧があり高ナトリウム食を消費している集団が、ナトリウム摂取量を減らすことに最も適していると思われる」と結論しています。
現在日本で高血圧ではない人に勧められている1日10gよりもかなり多い量ですが、ここではもともと高血圧でなければその水準でも結果に違いが見られないとされました。
食事と病気の関係については最近も研究が続けられ、新しい見方が出てきています。全体としてバランスのよい食事を忘れないようにしつつ、何を指標にすればいいかはこれからも少しずつ変わっていくのかもしれません。
執筆者
Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from four studies.
Lancet. 2016 May 20. [Epub ahead of print]
[PMID: 27216139]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。