がんの放射線治療で尿漏れが起こるのはなぜ?
前立腺がんなどの治療で放射線治療がよく使われます。骨盤の部分に放射線治療を行ったときに起こりうる問題として、尿失禁や便失禁などがあります。これらの症状と関係の深い骨盤底筋への影響について、これまでの研究がまとめられました。
◆放射線治療にはどのような影響があるのか?
前立腺がんや子宮頸がんの治療では、手術以外にも
骨盤底筋は排尿や排便を正常に行うために重要な役割を果たしている筋肉です。加齢などで骨盤底筋が弱くなると、腹圧性尿失禁などが起こりやすくなります。
しかし、尿失禁や便失禁は骨盤底筋以外にも神経のダメージなどが原因で起こりうるため、放射線治療がどのようにこれらの症状に結び付くかは全体として明らかではありません。
ここでは、カナダの研究班が、過去の研究報告を検索し、骨盤の放射線治療が骨盤底筋にどのように影響するかを調べたものを集めました。
◆骨盤底筋の構造と機能に影響
見つかった13件の研究のうちで、質が良いと判定された4件から、次の結果が報告されていました。
1件は、前立腺がんの治療を受けた男性において、放射線治療が骨盤底筋の構造に影響することの強い根拠を示した。4件は、直腸がんの治療を受けた患者において放射線治療が骨盤底筋の機能に影響することの高レベルの根拠を示した。
放射線治療を受けた人で、骨盤底筋の構造への影響、また骨盤底筋の機能への影響が見られたことが報告されていました。
研究班は、「放射線治療にともなう筋肉のダメージについてよりよく理解することで、骨盤底筋のリハビリテーションと、潜在的にはその有害な効果を予防することの役に立つだろう」と述べています。
執筆者
Effects of radiation therapy on the structure and function of the pelvic floor muscles of patients with cancer in the pelvic area: a systematic review.
J Cancer Surviv. 2016 Apr.
[PMID: 26314412]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。