2016.03.13 | ニュース

がんだけを狙う技術「強度変調放射線治療」では経験の差が出ていた

頭頚部がん患者6,212人のデータから
from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology
がんだけを狙う技術「強度変調放射線治療」では経験の差が出ていたの写真
(C) Kurhan - Fotolia.com

頭から首の位置にできるがんの治療法に、放射線治療があります。近くにある気管や神経などのダメージを抑えるため、強度変調放射線治療という技術が使われています。この治療法では医師の経験量によって結果に差があったことが報告されました。

◆放射線治療の結果は経験で変わるか?

頭から首の位置(頭頚部)には気管や神経など、生命維持のため重要な器官が集まっています。この部分にがんができたとき、手術や放射線治療ではがんの近くの正常な組織・器官をなるべく傷付けないことが重要になります。

放射線治療の中でも、強度変調放射線治療は放射線を照射する位置によって強さを細かく調整することで、正常な組織に当たってしまう放射線の量を最小限に抑えつつ、がんの中にだけ集中して放射線が届くようにする高度な技術です。

ここで紹介する研究では、放射線治療を行う医師の経験量によって結果に影響があるかを検討しています。

頭頚部がんに対して従来の放射線治療または強度変調放射線治療を受けた患者6,212人のデータが解析の対象とされました。

 

◆強度変調放射線治療では差がある

次の結果が得られました。

強度変調放射線治療を受けた患者の間で、経験の多い腫瘍放射線科医に治療された患者は、経験の少ない施術者に治療された患者よりも生存率が改善していた。全死因死亡リスクは施術者の経験数が年間5人多くなるごとに21%減少した(ハザード比0.79、95%信頼区間0.67-0.94)。経験の多い施術者によって強度変調放射線治療を受けた患者は頭頚部がん特異的死亡率が減少し(下位分布ハザード比0.68、95%信頼区間0.50-0.91)、誤嚥性肺炎のリスクが減少した(下位分布ハザード比0.72、95%信頼区間0.52-0.99)。

従来の放射線治療では経験量による差は見られませんでした。強度変調放射線治療では、経験量が多い医師に治療を受けたとき、誤嚥性肺炎が少なく、頭頚部がんが原因の死亡が少なく、全体として生存率が高くなっていました

 

ここで見られた結果がどの程度の範囲に当てはまるかは別の情報とあわせて考える必要がありますが、医師の経験量が結果を左右しうるとすれば、治療を受けるにあたって重要な要素です。現実にはすべての人が経験豊富な医師の治療を受けられるわけではありませんが、個別の希望を相談するときに考えるべきポイントのひとつと言えるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Importance of Radiation Oncologist Experience Among Patients With Head-and-Neck Cancer Treated With Intensity-Modulated Radiation Therapy.

J Clin Oncol. 2016 Mar 1.

[PMID: 26729432]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。