日本人の10人に一人が爪の水虫!? 爪白癬の概要とその治療薬について詳しく解説
この記事のポイント
2.爪白癬の治療薬
3.爪白癬予防のために
白癬とは真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌(白癬菌)によって生じる皮膚疾患の一つです。ここでは爪に白癬菌が侵入した爪白癬とその治療薬について詳しく解説していきます。
◆爪白癬の概要とその症状
白癬菌が足に侵入したら足白癬(水虫)、頭に侵入すれば頭部白癬(シラクモ)、股に侵入すれば股部白癬(インキンタムシ)といいます。白癬は感染する場所によって名前が異なるのですが、爪に白癬菌が侵入した場合は爪白癬といいます。
白癬はカビの一種で高温多湿を好み、角層や爪、髪の毛などにあるケラチンというタンパク質を主食としています。気温20〜40度、湿度60%以上の状況下で繁殖しやすくなるので、足白癬(水虫)は気温や湿度が高くなる5月頃から徐々に増えます。そのため足白癬は気温が下がり乾燥する冬は減少しますが、爪白癬には季節的な変動はないとされ、日本における爪白癬は常時1000万人以上の患者がいると言われています。
足白癬、爪白癬共に年齢が上がるほど
足白癬(水虫)はかゆいと言うイメージもあると思いますが、爪白癬では自覚症状で痒みをほとんど生じません。主に爪の変形や変色(爪が白色〜黄色に濁る、爪がポロポロと欠ける、爪が厚くなる など)などが症状です。爪が肥厚したり変形することで高齢者の歩行障害、転倒事故などの元になるとの報告もあり診断されたらしっかりと治療していくことが大切です。
◆爪白癬の治療薬
現在(2016年2月)、爪白癬の
① テルビナフィン塩酸塩(内服薬)(主な商品名:ラミシール錠® など)
白癬菌などの
海外ではテルビナフィンとして250mg/日を3ヶ月以上の内服が標準ですが,日本における服用量は通常、125mg/日であり6ヶ月以上服用して経過をみます。テルビナフィンの内服薬における注意としては、頻度は非常に稀とされますが重篤な肝障害(肝不全、
② イトラコナゾール(内服薬)(主な商品名:イトリゾール®カプセル50mg など)
白癬菌など真菌の細胞膜の必須成分であるエルゴステロールの生合成反応を阻害することで、抗真菌作用をあらわします。イトラコナゾールは爪への移行性、 貯留性が一般的に優れているとされます。爪白癬に対しては、イトラコナゾールとして400mg/日の内服を1週間行い、その後3週間休薬して1サイクルとし、これを3サイクル繰り返すパルス療法が承認されています。
イトラコナゾールにも非常に稀な副作用として肝障害などの報告があるので、長期間服用する場合には定期的な肝機能検査などが必要となります。またイトラコナゾールは他の薬物との相互作用が比較的多く、併用禁忌(禁止)薬あるいは併用注意薬に注意が必要です。イトラコナゾールは主に肝臓において薬物
③ エフィナコナゾール(外用薬)(商品名:クレナフィン®爪外用液10%)
爪白癬治療薬として日本では外用薬で初めて保険適応が承認された薬で通常、1日1回患部に塗布します。主にエルゴステロールの生成を阻害することで抗真菌作用をあらわします。ケラチンとの親和性が低く(ケラチンとの吸着における薬剤の活性低下が少ない)、爪甲(そうこう:ネイルプレート)での透過性が高いため、爪の表面に塗ることで爪の中や爪床(そうしょう:爪甲の下にある皮膚組織の一部)において高い抗真菌作用が期待できる薬剤です。またクレナフィン®爪外用液10%はハケ一体型のボトルとなっているため、患部(爪面)に塗りやすいという特徴を持っています。本剤は一般的にあまりひどくない(症状が重度でない)爪白癬に対して使われますが、難治性の爪白癬に対しての効果が期待できる可能性もあるとされています。また本剤が外用薬ということもあり、内服薬のテルビナフィン塩酸塩やイトラコナゾールにみられる肝障害などの重篤な副作用が現在までに報告されていないのもメリットの一つと言え、爪白癬の新しい治療薬として注目されています。
④ルリコナゾール(外用薬)(商品名:ルコナック®爪外用液5%)
ルリコナゾールは主にエルゴステロールの生合成を阻害することで抗真菌作用をあらわします。今までもルリコナゾールは「1%製剤(商品名:ルリコン®液1% など)」が2005年から臨床で使用されてきましたが、適応症は足白癬、体部白癬、股部白癬、
◆爪白癬予防のために
白癬菌は,公衆浴場やサウナなどの足拭きマットの中には100%いると言われており、そのような場所で菌を拾って、足を乾燥させないうちに靴下や靴を履くと白癬症にかかりやすくなります。
白癬菌が皮膚に付着してから感染するまでに24時間かかる(但し、足の皮膚に傷などがある場合は12時間程で感染することもあるとされています)と言われているので、通常であれば24時間以内にきれいに洗えば感染を防ぐことができるます。しかしゴシゴシと強く洗い皮膚に傷がついてしまうと、かえって感染しやすくなることもあるので、一般的には石鹸をよく泡立ててなでるように洗うと良いとされています。
家庭内での水虫や爪白癬の感染も多く、家庭内・施設内に足白癬や爪白癬の患者がいる場合はスリッパや足拭きマットを共有するのは避けましょう。また白癬菌はホコリや垢などに混ざって階段や部屋の隅などのゴミがたまりやすい場所にも存在します。これらの場所を掃除することも感染拡大を防ぐ手段の一つになります。
ここでは白癬症の中でも主に爪白癬の概要と治療薬、予防法について紹介しました。人間の肌はターンオーバーと言って約4週間で生まれ変わります。しかし白癬菌はターンオーバーで垢として落ちた中でも生息し続け、それを踏んだ足などに付着し感染することもあります。特に足の爪白癬では足の爪が完全に生え変わるのがおよそ1年と長いため、一般的に
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。