2016.01.02 | コラム

認知症診断の手がかりになる症状と検査

早く見つけて適切な治療を受けるために

認知症診断の手がかりになる症状と検査の写真

最近各方面で認知症について話題にのぼることの多い時代になってきました。記憶力が悪くなる、物忘れがひどくなる、徘徊など多彩な症状がある認知症ですが、どのような症状があり、病院ではどのように診断されているのでしょうか。

◆認知症の症状

認知症には中心となる4つの症状(中核症状)があります。

1.記憶障害

直近にあったこと、昔にあったことなどが記憶から抜け落ちてしまう障害です。短期記憶障害と長期記憶障害の大きく2つにわけられます。

2.見当識障害

日時、場所や状況を理解することができなくなります。今いる場所がわからない、今日の日付がわからない、今どういう場面かわからない、といった症状です。

3.実行機能障害

いわゆる判断力と実行力の障害です。料理をしようと思ってもひとりですすめられない、そもそも行動の目的を定められない、など行動を取る際に支障をきたす症状です。

4.高次脳機能障害

失語(聞く、話す、読む、書く能力の障害)、失認(認識する力の障害)、失行(ボタンが留められない、鍵を開けられない)といった、複数の手順や工程を要することができなくなる症状です。

また、認知症には中核症状の他に、環境や性格の要因が影響する周辺症状というものもあります。代表的なものは徘徊、妄想、うつ、幻覚などです。

 

◆認知症を診断するための検査

認知症を診断するための検査は大きく2つに分けることができます。

一つは認知機能検査です。実際の物忘れの程度や記憶力をテストすることで、認知症の症状の中のどのようなものが出現しているのかを調べます。実際に医師や検査者と1対1でテストをし、決められた質問に答えてもらい、日時や場所、物の形の認識、簡単な計算や記憶力を調べる検査が一般的です。この検査で一定の点数が出れば「認知機能が低下しており、認知症の疑いあり」とされますが、実際に画像検査や血液検査など脳や身体を調べる検査をしないと、原因となる認知症のタイプはわからないことが多いです。

HDS-R(改定長谷川式簡易知能スケール)、MMSE(Mini Mental State Examination)などが一般的な検査です。検査結果に影響が出るため、詳細な内容は示しませんが、検査では図形の模写や暗算、数字の逆唱、日時を問う問題などを組み合わせて行います。

認知機能検査は症状を把握するために重要ですが、診断には症状の原因を見分ける必要があります。アルツハイマー病のように認知症が病態の中心なのか、それとも脳腫瘍などの原因により症状が出ているのかで治療は大きく違います。認知症のような症状があっても、原因となった病気を治療することで治る場合があります。この区別は認知機能検査だけでは難しく、画像検査や血液検査など脳や身体を調べる検査をしないと、原因となる認知症のタイプはわからないことが多いです。

 

もう一つの検査はCT、MRIやSPECT(脳血流検査)といった画像検査です。CT、MRIは脳の萎縮や脳梗塞、脳腫瘍など脳の形態の異常を調べることができる検査です。脳が萎縮(痩せる)していないか、萎縮があるならどの部位に強くあらわれているか、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの病気はないか、ということを主に調べます。SPECTは微細な放射能のある薬を注射することで、脳の各部位の活動性がどれくらいあるのかを調べる検査です。CT、MRIでは主に形態の異常しかわからないのですが、SPECTでは形態は正常に見える部位が、きちんと活動しているかどうかを調べることができます。

その他にも血液検査や心電図などで他の病気が原因でないことも合わせて調べます。

 

このように実際に生活に支障をきたしている症状を認知機能検査で評価して、画像検査で脳の形態と機能を調べて、認知症のタイプを診断していくのが、認知症診断の流れです。

 

◆認知症と診断されたら

認知症にはタイプごとに治療があり、治療開始が早ければ早いほど効果も高いと言われています。

診断を受けたときには、生活で困っている症状の適切な治療や対処を選ぶため、具体的に困っていることや心配なことを主治医に伝えて相談しましょう。

執筆者

来田 誠

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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