2015.12.20 | ニュース

糖尿病性腎症患者の中性脂肪・コレステロール値を「オメガ3脂肪酸」で改善

イランでの治験結果から

from Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland)

糖尿病性腎症患者の中性脂肪・コレステロール値を「オメガ3脂肪酸」で改善の写真

ω(オメガ)3脂肪酸は魚油に含まれるDHAやEPA、植物油に含まれるα-リノレン酸などの脂肪酸の総称です。血流改善や生活習慣病、脳神経に良い働きをしますが、著者らは糖尿病性腎症患者への効果を調べました。

◆糖尿病性腎症患者60名が治験に参加

著者らは以下の治験を行いました。

並行無作為二重盲検偽薬対照の臨床治験を、60名の糖尿病性腎症患者を対象に行った。患者は無作為にFLAXオイルから抽出されたω3脂肪酸1,000mg/日を摂取する群(30名)と対照群(30名)の2群に組み入れ、12週間実施した。

つまり糖尿病性腎症患者を30名ずつ二つに分け、一方はFLAXオイルから抽出したω3脂肪酸1,000mg/日の摂取を12週間行いました。効果に関しては治験開始時と12週間後に空腹時に採血し、血糖状態、脂質濃度、炎症反応や酸化ストレスに関する生体マーカーの量を測定しました。FLAXは北米に自生している植物で、亜麻の1種類です。この亜麻の種を絞った油がFLAXオイルで、αリノレン酸が豊富に含まれています。

 

◆ω3脂肪酸を摂ると中性脂肪やコレステロール値が改善された

著者らは以下の結果を得ました。

... ω3脂肪酸投与群では有意に血中中性脂質の低下(-19.8±8.8 vs +12.6±10.2 mg/dL, P = 0.01)とVLDL-コレステロールの低下(-4.0±1.8 vs +2.5±2.0 mg/dL, P = 0.01)が観察された。

つまりω3脂肪酸を摂取すると中性脂肪やコレステロール値に改善が見られました。ですが炎症反応等のマーカーに関しては影響を与えませんでした。

 

著者らは「我々の発見は糖尿病性腎症患者においてω3脂肪酸の12週間摂取は[...]血中中性脂肪とVLDL-コレステロールへ望ましい効果があったことを示す。しかしながら炎症や酸化ストレスの生体マーカーに対し影響はなかった。」と述べています。


一般に慢性炎症が糖尿病や腎障害に影響を与えると考えられていますが、このω3脂肪酸の効果はより直接的に、糖や脂質の代謝に作用しているものと思われます。最近の実験からω3脂肪酸が結合する膜タンパク質が同定されましたが、創薬の観点からも今後の研究の発展が期待されます。

執筆者

高田

参考文献

Metabolic response to omega-3 fatty acid supplementation in patients with diabetic nephropathy: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial.

Clin Nutr. 2015 Nov 11

 

[PMID: 26611718]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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