体内の脂肪酸が高血糖を改善する?

血糖値は、インスリンというホルモンによってコントロールされています。今回研究チームは、体内にある脂肪酸の一種がインスリンを分泌させ、血糖値を下げる働きをもっていることを新たに報告しています。
◆なぜ高血糖になるの?
しかし、糖分濃度が高いことに応じて適切にインスリンが分泌されなかったり、指令が出ても血糖値を下げられなかったりする場合、血糖値が高いまま維持されることで高血糖になってしまいます。この状態が病的に続いているのが糖尿病です。
◆マウスに脂肪酸を与えた時の血糖値を測定
研究には、血糖値のコントロール能力が通常よりも高いマウスと、通常のマウスを使用しました。
脂肪を作ったり、分解したりする働きを持つ脂肪細胞の中には、脂肪酸というエネルギー源が多く含まれています。研究チームは、それぞれのマウスの脂肪細胞を解析し、どのような脂肪酸が含まれているかを比較しました。さらに、脂肪細胞に含まれていた脂肪酸をマウスに与えた時の血糖値の変化を調べました。
◆脂肪酸の一種が高血糖の改善に関与していた
解析の結果、血糖値のコントロール能力が高いマウスの脂肪細胞には、通常のマウスよりも、脂肪酸の仲間のうちある種類のものが16〜18倍多く含まれていることが分かりました。その一部である「PAHSAs」と総称される物質をマウスに与えると、インスリンの分泌が起こり、血糖値が低下するという結果が得られました。
つまり、PAHSAsは、高血糖を改善する可能性が示されました。
研究チームは、PAHSAsのような物質は「2型糖尿病治療に対する可能性を持っている」とも述べています。
現在使われている2型糖尿病治療薬は、それぞれの患者に適したものが選択されていますが、糖尿病以外の病気がある場合などによっては副作用が懸念されるものもあります。今後、PAHSAsが新たな糖尿病治療へ繫がるために、人間に対しても同様の効果が得られるかといった研究に期待がかかります。
執筆者
Discovery of a class of endogenous mammalian lipids with anti-diabetic and anti-inflammatory effects.
Cell. 2014 Oct 9
[PMID: 25303528]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。