2015.10.25 | ニュース

りんごとキャラメルがなぜリステリア食中毒の原因になったのか?

アメリカ2014年のアウトブレイクからの考察

from mBio

りんごとキャラメルがなぜリステリア食中毒の原因になったのか?の写真

髄膜炎などを起こす細菌のリステリアは、水分が少ない環境や酸性の環境では増殖しにくいと言われています。ところが、2014年にアメリカで、りんごにキャラメルをかけたものによる食中毒と見られるリステリア症が発生し、その原因が探られました。

◆アメリカとカナダで多数の感染者

リステリア(リステリア・モノサイトゲネス)は自然の環境に広く住み着いている細菌で、人間に感染すると髄膜炎や敗血症などを起こします。日本で集団食中毒の原因となった例は知られていませんが、海外では、生肉などが感染源になった事例があります

2014年のりんごとキャラメルによるリステリア症は、アメリカとカナダで7人の死者を含む多数の感染者を出しました。普通、キャラメルは水分活性(移動しやすい水分の量)が少なく、またりんごは酸性であり、リステリアの感染源となることはありません。しかし、このときの各種の調査からは、りんごにキャラメルをかけたものが原因と強く疑われました。

 

◆棒が犯人?

研究班は、りんごの皮や芯にリステリアを植え付け、キャラメルをかけて保存し、リステリアが増殖するかを見る実験を行いました。

その結果、りんごに棒を刺してキャラメルをかけたときにだけ、リステリアが盛んに増殖しました。このことから、りんごの汁が棒を伝わって表面のキャラメルに触れることで、リステリアの増殖に適した微小な環境を作ると推定されました。

 

このような例を含め、食品加工によって、これまで知られていなかったタイプの食中毒が発生することは想像できます。実際に起こった例を詳しく検証することで、適切な予防策が取れるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Growth of Listeria monocytogenes within a Caramel-Coated Apple Microenvironment.

MBio. 2015 Oct 13

[PMID: 26463161]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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