2021.09.28 | コラム

あなたの「サバアレルギー」は本物ですか?

アレルギーと紛らわしい「ヒスタミン食中毒」について解説します

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流れる雲に秋の訪れが感じられる季節となってきました。近年は不漁がしばしば話題に上りますが、サンマの美味しいシーズンです。

また、これから冬にかけてサバやブリなども脂がのってきて、赤身魚が食卓を彩ってくれそうです。

ところが、

「サバは前にじんましんが出たことがあって・・・。」

というように、赤身魚に対するアレルギーを自覚している人は少なくありません。でも、この「サバアレルギー」は本物ではなく、「ヒスタミン食中毒」という一種の食中毒を経験しただけかもしれません。

 

このコラムでは、意外と多い「ヒスタミン食中毒」について解説します。

 

1. ヒスタミン食中毒とは?

ヒスタミンは主にアレルギー反応が起きた時に体内で働く物質です。赤身魚(サバ、サンマ、ブリ、カツオ、イワシ、マグロなど)を常温で放置すると、魚の体内でヒスタミンが産生されることが分かっています。(ちなみに、身の赤い部分が多い魚のことを赤身魚といいます。サバというと青魚と思う人も多いと思いますが、赤身か白身かに大別するとサバは赤身魚になります。)

そのため、常温で放置してヒスタミンが増えてしまった魚を食べると、魚アレルギーではなくてもアレルギーと同じような症状が出現します。これが「ヒスタミン食中毒」です。具体的には、食べて1時間以内くらいで以下のような症状が出ます。

 

【ヒスタミン食中毒の主な症状】

  • 口唇や顔面が赤く腫れる
  • じんましんが出現する
  • 頭が痛くなる
  • 顔や全身が痒くなる
  • 咳や息切れが出る(重症)
  • 意識がもうろうとする(重症)

 

こうした症状は、本当のアレルギーでも見られるものなので、症状からヒスタミン食中毒を見分けることは困難です[1]。

 

2. 予防策は?

ヒスタミン中毒の予防としては、魚を常温に放置せず速やかに冷蔵することが最も大事です。また、ヒスタミンは魚のエラや消化管で多く作られやすいので、エラや内臓は早めに取り除いてください。

ヒスタミンが多少産生されても味や匂いは変化しないので、味見してもあまり意味はありません。ただし、ヒスタミンを多量に含んでいる魚の場合は、食べた時に舌や口の中がピリピリするような刺激を受けることもあります[2]。そのため、違和感を覚えたらすぐに吐き出すようにしてください。

 

加熱すれば大丈夫?

食中毒対策ならば、加熱して焼き魚や煮魚にすれば大丈夫と思う人も多いかもしれません。ところが、やっかいなことに一度産生されたヒスタミンは調理の加熱程度では分解されません

そのため、加熱後の赤身魚を食べてアレルギー症状が出た人でも、赤身魚によるヒスタミン食中毒の可能性があります。

 

3. アレルギーかもしれないけれども、また食べて大丈夫?

何度もアレルギー症状を繰り返しているのならば、その原因として怪しい魚は食べないほうが無難です。しかし、一度アレルギー症状を起こしただけであれば、ヒスタミン食中毒による症状であった可能性も高く、それで一生その魚を食べないというのはもったいない気がします。

そもそも、本物の魚アレルギーは赤身魚よりも白身魚に対してのほうが多いのではないかと考えられています[3]。一方で、魚アレルギーを自覚する人は、サバなどの赤身魚に対するアレルギーと自覚しているパターンを外来診療などで多く見かけます。こうした人たちの中に、少なからずヒスタミン食中毒の経験者が混ざっていると考えられます。

結論としては、本当のアレルギーを起こす可能性もあるため慎重になる必要はありますが、お医者さんとも相談しつつ、また試しに魚を食べてみることは十分可能だと思います。

 

4. さいごに

意外と多くの人が気付いていないヒスタミン食中毒について解説しました。これから赤身魚が特に美味しい季節なので、必要以上に避けてしまう人が少しでも減れば幸いです。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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