2017.03.01 | ニュース

ホメオパシーに有毒物質を確認、乳児のけいれんに対し米政府機関調査

「歯が生えるときの薬」にベラドンナ

ホメオパシーに有毒物質を確認、乳児のけいれんに対し米政府機関調査の写真

ホメオパシーは砂糖玉を飲む民間療法ですが、過去には死亡事故との関係も問題視されています。アメリカでホメオパシー薬として売られていた製品が有毒なベラドンナを含むことが確認されました。

アメリカの政府機関である食品医薬品局(FDA)が、健康被害の報告を受けて調査した結果、ホメオパシー薬から一定しない量のベラドンナが検出され、一部のものではラベルに表示されている量を大きく上回っていたことを公表しました。

ベラドンナは有毒な植物です。神経に作用して意識障害やけいれんを起こす成分を含んでいます。ベラドンナを誤って食べたことで中毒を起こした人の例があります。

調査された製品は、「teething tablet」(歯が生えるときの錠剤)と称するものです。2016年9月に、FDAは消費者に向けて、「CVS」「Hyland's」ブランドで販売されている「歯が生えるときの」錠剤・ジェル剤を使わないよう、持っているものがあれば捨てるよう推奨しています。これらの製品を使用した乳児・小児にけいれん発作などが起こったとする報告を受けた結果とされています。

現在(2017年2月時点)、これらのホメオパシー薬はアメリカでは販売中止されています。

http://www.cvs.com/shop/baby-child/health/teething-oral-care/cvs-homeopathic-infants-teething-tablets-prodid-968765

http://www.hylands.com/products/hylands-baby-teething-tablets

 

FDAは、もしホメオパシー薬を使った子どもに以下の症状が現れた場合、ただちに医学的なケアを求めるよう呼びかけています。

  • けいれん発作
  • 呼吸困難
  • 不活発
  • 眠気の過剰
  • 筋力低下
  • 皮膚の紅潮
  • 便秘
  • 排尿困難
  • 興奮

 

ホメオパシーは砂糖玉に一定の手順を加えることで「レメディ」とし、薬のように使う民間療法です。有害な物質を繰り返し水で薄め、計算上は1分子も残らないほど薄める作業を繰り返した上で砂糖玉に加えるとされています。

この製法によれば、砂糖玉に有害物質が混入することはないと考えられます。ただの砂糖玉であれば、レメディ自体には、糖尿病などに関係する点を除いて害がないはずです。

一方で、ホメオパシーを使うことによって標準的な医療を利用する機会が失われる場合の危険性が問題視されています。

2009年には山口県で、助産師が乳児に与えるべきビタミンKを与えず、代わりにレメディを与えていた結果、乳児が死亡したという事故が起こっています。

 

ホメオパシーが想定されるとおり無害なものであれば、通常の医療と共存する可能性も考えられます。しかし、今回ベラドンナが指摘されたようにホメオパシーが有害な物質を与えることになるとすれば、「ホメオパシーは無害」という主張そのものが揺らぐことになります。

「Hyland’s」などの製品は、日本でもインターネットなどを通じて入手可能な状況があります。

代替医療を利用しようと思うときは、安全性や規制などについて十分に客観的な情報を集め、通常の医療を妨げることのない範囲で、代替医療に固有のリスクについてもよく理解したうえで利用してください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

FDA confirms elevated levels of belladonna in certain homeopathic teething products.

FDA News Release, 2017 Jan 27.

https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm538684.htm

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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