2016.10.13 | ニュース

幻覚や発汗を起こす「セロトニン症候群」の危険性、米政府機関が警告

オピオイドと抗うつ薬・片頭痛治療薬の併用に注意
幻覚や発汗を起こす「セロトニン症候群」の危険性、米政府機関が警告の写真
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薬が原因で「セロトニン症候群」などの危険な状態が引き起こされる可能性があるとして、米国食品医薬品局(FDA)が警告を出しました。抗うつ薬や片頭痛治療薬の一部とオピオイド鎮痛薬を同時に使う場合などに注意を促しています。

FDAは3月22日に、痛みを和らげる作用がある「オピオイド鎮痛薬」の安全性についての警告を出しました。

注意するべき場合として3点が挙げられています。

  • オピオイド鎮痛薬と抗うつ薬・片頭痛治療薬などの併用によるセロトニン症候群の可能性
  • オピオイド鎮痛薬による副腎不全の可能性
  • オピオイド鎮痛薬による性ホルモン減少の可能性

 

オピオイド鎮痛薬は、脳や神経に作用して痛みを和らげる高い効果のある薬です。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどがオピオイド鎮痛薬に分類されます。がんの痛みなど、ほかの治療法で十分に痛みを抑えられない場合には欠かせない役割を持っています。

 

FDAの警告では、体内物質であるセロトニンの働きを強くする薬とオピオイド鎮痛薬を同時に使う場合に注意が促されています。

セロトニンは神経の信号を伝える物質の一種です。ネットの記事などではセロトニンを「幸せホルモン」と呼んでいるものがありますが、それほど単純ではありません。

セロトニンの働きを強くする物質の例として、以下が挙げられます。

  • 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)
  • 抗精神病薬
  • 片頭痛治療薬の一部(トリプタン製剤)
  • パーキンソン病治療薬の一部(MAO-B阻害薬)
  • 吐き気止めの一部(オンダンセトロン、グラニセトロンなど)
  • 咳止めの一部(デキストロメトルファン)
  • 抗菌薬の一部(リネゾリド)
  • セントジョーンズワート
  • トリプトファン

セントジョーンズワートはうつ症状などに効果があるハーブの一種です。トリプトファンは普通の食べ物にも含まれているアミノ酸の一種です。食べ物に含まれる程度のトリプトファンが問題になることはほとんど考えられませんが、治療目的でセロトニンの働きを強くする薬(セロトニン作動薬)を使う場合は、FDAの警告する範囲に含まれます。

警告では、セロトニン作動薬と同時にオピオイド鎮痛薬を使った場合に、セロトニンの働きが過剰になる「セロトニン症候群」を起こす可能性があるとされています。セロトニン症候群には次のような症状があります。

  • 興奮
  • 幻覚
  • 心拍数の増加(頻拍)
  • 発熱
  • 過剰な発汗
  • 震え
  • 筋肉のけいれん、こわばり
  • 体をバランスよく動かせない
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢

警告では、オピオイドとセロトニン作用薬によるセロトニン症候群の多くは、薬を使用して数時間から数日に症状を現すとされています。

セロトニン症候群はほとんどが治癒しますが、まれに死亡に至った事例も知られています。

 

第2の警告として、オピオイド鎮痛薬が副腎不全を起こす可能性があるとされています。副腎は副腎皮質ホルモンなどを分泌している臓器です。副腎不全では以下のような症状が現れます。

  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲低下
  • 疲労
  • 筋力低下
  • ふらつき
  • 低血圧

 

第3の警告として、オピオイドの長期使用により性ホルモンの減少を起こす疑いがあるとされています。因果関係は確かではないとされていますが、性欲低下、不妊などがもし起こった場合に注意が促されています。

 

FDAの警告は日本で行われる医療には直接的な強制力を持っていませんが、薬の副作用に関わる情報として知っておく価値はあります。

うつ病片頭痛はとても多くの人が持っている病気です。そのうちかなりの人がセロトニン作動薬を処方されています。

患者自身がひとつひとつの薬について注意点をすべて覚えるのは現実的ではありません。しかし、一般的に次のことが言えます。

  • どんな薬にも副作用がある
  • 複数の薬を同時に使うことで新たな副作用が現れる場合がある
  • 健康食品やサプリメントにも副作用や薬との相互作用がある
  • 薬を使っていて気になる症状が出たらすぐに処方した医師に相談する

何かあったときにはどうすればいいか、日頃から医師や薬剤師とよく話しておいてください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

FDA Drug Safety Communication: FDA warns about several safety issues with opioid pain medicines; requires label changes.

Drug Safety and Availability, 2016 Mar 22.

http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm489676.htm

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。