セロトニンが出る病気で肺の手術になった14歳女子

カルチノイドはセロトニンを分泌する腫瘍です。セロトニンが原因で下痢、紅潮、喘鳴など「カルチノイド症候群」と呼ばれる症状を起こします。気管支にできたカルチノイドがカルチノイド症候群を起こした女の子の例が報告されました。
咳と疲労で入院した14歳の女の子
アメリカのワシントン大学の研究班が、
この女の子は、6か月以上続く疲労感と、2か月以上続く咳を訴えて受診しました。痰はありませんでした。週に1-2回の微熱と、寝汗、頭痛、
それまでに受けた治療として、喘息の治療によく使われる
以前にかかった病気として、軽度のアレルギー性鼻炎がありました。また、アメリカ中西部(五大湖周辺などの地域)にたびたび旅行し、馬や牛に触れていました。
喫煙はなく、検査で呼吸機能などに異常はありませんでした。
カルチノイドを確認、転移なし
入院して、
症状や腫瘍の見た目から、カルチノイドが疑われました。カルチノイドは普通の肺がんとは違った腫瘍の一種で、周りに
カルチノイドの血液マーカーの検査を行ったところ、
手術で肺の一部を切り取り、腫瘍を取り除くとともに近くの
取り出した組織を顕微鏡で検査したところ、腫瘍はカルチノイドであり、
手術後の経過は良好で、1か月後には咳、呼吸困難、ほてり、疲労感はなくなっていました。
セロトニンが起こす症状とは?
腫瘍が分泌するセロトニンによって症状が現れた例の報告でした。
カルチノイドがある人でも、カルチノイド症候群が実際に現れる人は一部だけです。この報告は子どもの気管支カルチノイドによるカルチノイド症候群の珍しい例として挙げられています。
この女の子に現れたほてり・動悸・下痢などはカルチノイド症候群の症状としては典型的です。セロトニンの作用による症状です。ほかにカルチノイド症候群では以下の症状が出ることがあります。
カルチノイドはこれらの症状のほか、セロトニンの原料になるトリプトファンを消耗してしまうため、トリプトファンから作られるナイアシンを不足させ、皮膚炎・下痢・認知症などが現れる栄養不足状態(ペラグラ)の原因になる場合がごくまれにあります。セロトニンが過剰に作られることで、ほかの必要な物質が足りなくなってしまうのです。
さらに、カルチノイド症候群が心臓に影響することも多く、重症では心不全に至ります。心臓の異常によって死亡する患者もいます。
カルチノイドはまれな病気ですが、当てはまる症状が多い人は一度病院で原因を調べてもらってはどうでしょうか。
執筆者
Endobronchial Carcinoid and Concurrent Carcinoid Syndrome in an Adolescent Female.
Case Rep Pediatr. 2016.
[PMID: 27895950]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。