2015.06.27 | ニュース

糖尿病の薬、腎臓が悪い人は要注意!死亡率増加と関連

台湾でクレアチニン530μmol/L超に使用
from The lancet. Diabetes & endocrinology
糖尿病の薬、腎臓が悪い人は要注意!死亡率増加と関連の写真
(C) Maksim Shebeko - Fotolia.com

すべての薬には効果と同時にリスクがあります。糖尿病の代表的な治療薬であるメトホルミンは、「乳酸アシドーシス」という危険な状態を招くという説などから、腎臓の機能が下がっている人には注意が必要と言われています。台湾の研究班が、2型糖尿病があり腎臓の機能も非常に悪い人がメトホルミンを使ったときの情報を調べたところ、死亡率が高くなっていました。

◆台湾のデータから解析

研究班は、台湾の2型糖尿病患者のデータベースを参照して、腎臓の機能を反映する血清クレアチニン濃度が530μmol/Lよりも高い人を選んで対象とし、死亡率とメトホルミン使用の関係を調べました。血清クレアチニン濃度は腎臓の機能が悪いときに高い値をとり、530μmol/Lでは腎臓は非常に悪く、透析が必要な状態に近いと考えられます。

 

◆多く使うほど死亡率上昇

解析から次の結果が得られました。

813人のメトホルミンを使っていた人が、傾向スコアによりメトホルミンを使っていなかった2,439人とマッチされた。

813人のメトホルミン使用者のうち434人(53%)、2,439人の非使用者のうち1,012人(41%)について全死因の死亡が報告された。多変量の調整ののち、メトホルミン使用は死亡の独立リスク因子だった(調整ハザード比1.35、95%信頼区間1.20-1.51、P<0.0001)。この死亡リスクの増加は用量依存的で、すべてのサブグループ解析と一貫していた。

メトホルミンを使っていた人のほうが、使っていなかった人よりも死亡率が高くなっていました。メトホルミンを多く使うほど死亡率が高い傾向が見られました。

研究班は「2型糖尿病があり、血清クレアチニン濃度が530μmol/Lよりも高い人がメトホルミンを使うことは、非使用者と比べて全死因死亡率の有意な増加と関連する」と結論しています。

 

この研究以前から、日本ではメトホルミンは重度の腎障害がある人には使用禁忌とされています。メトホルミンにはがん発症率低下と関連があるという報告もありますが(以前の記事「糖尿病の薬、がんを予防するのはどれ?」で紹介しています http://medley.life/news/item/558534c1ab73612c014bb08a )、薬は色々な角度から考えなければいけないということでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Metformin use and mortality in patients with advanced chronic kidney disease: national, retrospective, observational, cohort study.

Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Jun 17 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26094107]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。