◆265件の研究を検証
研究班は、糖尿病治療薬とがんの発生率の関係を調べるため、次のとおり265件の研究を集めました。
44件のコホート研究、39件の症例対照研究、182件のRCTで合計265件の研究が同定され、観察研究の合計でおよそ760万人、RCTの合計で137,540人の糖尿病患者が対象とされていた。
これらの研究の対象者のデータを検証して統合し統計解析を行いました。
◆メトホルミンとチアゾリジンジオンでがんが少ない
解析の結果、がんの発症率と統計的に関連が見られた糖尿病治療薬は以下のとおりでした。
- がんの発症率が低かった薬
- メトホルミン
- チアゾリジンジオン
- がんの発症率が高かった薬
- インスリン
- スルホニルウレア
- αグルコシダーゼ阻害薬
この結果から、研究班は「このリスクを知ることで、がんを心配する人やがんのリスクが高い人に使う糖尿病治療薬の選択に影響があるかもしれない」と述べています。
ここで挙がった糖尿病治療薬はいずれも日本でも使われているもので、それぞれ効き方に特徴があり、患者に合わせて使い分けられています。がんに関係があるかもしれないというのは気になる結果ですが、そもそも心筋梗塞や脳卒中の大きなリスクとされる糖尿病の治療が目的の薬ですから、使い方は糖尿病の状態によるのが前提です。加えて、糖尿病ではない人が使ってもがんに影響があるかは、この研究では調べられていません。
糖尿病の治療で処方された薬が気になるときは医師や薬剤師に質問してみてください。
執筆者
Pharmacologic Therapy of Diabetes and Overall Cancer Risk and Mortality: A Meta-Analysis of 265 Studies.
Sci Rep. 2015 Jun 15
[PMID: 26076034]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。