糖尿病による失明を防ぐ薬、低血糖を起こしにくい薬

血糖値を下げる飲み薬は、種類によって効く仕組みや副作用が違い、効果を高めるために組み合わせて使うこともあります。薬の種類による治療結果の違いが検討されました。
◆46万人の治療結果は?
ここで紹介する研究は、2007年から2015年にかけてイングランドで2型糖尿病の成人患者469,688人を対象に行われた追跡調査のデータを解析したものです。
対象者はそれぞれ状態に応じた治療を受け、糖尿病の治療にどの種類の薬を使われたかで分類されて、使った薬の違いによって治療結果に違いがあるか、統計解析により検討されました。
2型糖尿病によく使われる薬として、メトホルミン、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬などがあります。共通の副作用として、
メトホルミンは古くから知られ、現在も多くの場合に標準的に使われています。DPP-4阻害薬は最近開発された薬で、低血糖を比較的起こしにくいと言われています。
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと
◆グリプチンは低血糖が少ない
次の結果が得られました。
グリタゾンを使用することは、使用しない場合に比べて失明のリスク減少(調整ハザード比0.71、95%信頼区間0.57-0.89、曝露10,000人年あたり14.4件の率)、低血糖のリスク増加(1.22、1.10-1.37、65.1)と関連した。グリプチンは低血糖のリスク減少と関連した(0.86、0.77-0.96、45.8)。
チアゾリジン薬であるグリタゾンを使ったときは、使わないときよりも失明が少なくなっていた一方で、低血糖は多くなっていました。DPP-4阻害薬にあたるグリプチンを使ったときは、グリプチンを使わないでほかの薬で治療したときに比べて、低血糖が少なくなっていました。
複数の薬を組み合わせて血糖値をより確実に低く保つことが、失明などの合併症を防ぐことになります。一方で、血糖値が下がりすぎる危険性は増すことになります。また、グリプチンが低血糖を起こしにくい特徴もデータに表れているようです。
実際に使われたデータから薬の特徴をより確かに把握することで、ひとりひとりの患者に適した薬を選ぶ役に立ちます。
執筆者
Diabetes treatments and risk of amputation, blindness, severe kidney failure, hyperglycaemia, and hypoglycaemia: open cohort study in primary care.
BMJ. 2016 Mar 30.
[PMID: 27029547]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。