分子標的薬(トラスツズマブ〔抗HER2ヒト化モノクローナル抗体〕)
がん細胞の増殖に関わるHER2という物質に結合することで、抗体依存性の細胞障害作用や細胞増殖のシグナル伝達抑制作用などにより、HER2が過剰発現しているがんへ抗腫瘍効果をあらわす薬
分子標的薬(トラスツズマブ〔抗HER2ヒト化モノクローナル抗体〕)の解説
分子標的薬(トラスツズマブ〔抗HER2ヒト化モノクローナル抗体〕)の効果と作用機序
分子標的薬(トラスツズマブ〔抗HER2ヒト化モノクローナル抗体〕)の薬理作用
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し正常な細胞を障害し、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。
細胞表面では上皮成長因子受容体(EGFR:ErbB1)という細胞増殖のシグナル伝達を行う上で重要なチロシンキナーゼ活性を持つ物質がある。EGFRを含むErbBファミリー(EGFRと類似した構造をもつ物質)の中でHER2は乳がんや胃がんにおいて過剰に発現している場合があり、がん細胞の増殖因子となっている。
本剤は細胞表面のHER2に結合した後、NK細胞や単球を作用細胞とした抗体依存性細胞障害作用(ADCC)やHER2に結合することで細胞増殖シグナルを低減させることにより抗腫瘍効果をあらわすとされる。
本剤は特定物質に結合する抗体として造られたモノクローナル抗体であり、がん細胞の増殖に関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。