かぜ(きゅうせいじょうきどうえん)
かぜ(急性上気道炎)
鼻やのど(上気道)が炎症を起こしている状態の総称。原因はほとんどがウイルス感染であるため、抗菌薬を使用するメリットに乏しい
26人の医師がチェック 323回の改訂 最終更新: 2022.01.19

かぜ(急性上気道炎)の基礎知識

POINT かぜ(急性上気道炎)とは

かぜ(急性上気道炎)とは上気道に炎症が起こっている状態のことです。上気道とは鼻やのど、声帯までのことを指します。そのため上気道炎が起こると鼻やのどに症状が出ます。主な原因はウイルスによる感染です。ウイルスには抗生物質(抗菌薬、抗生剤)が効きませんので、ほとんどの場合で使用する意味がありません。水分補給を行って安静にすることが重要です。 かぜに対する検査も必要でないことが多く、検査よりも病気の経過や症状を正しく把握することのほうが大切です。ほとんどの場合で風邪は治療を行わないでも治ります。しかし、症状が強いときは症状を和らげるための治療(解熱薬、咳止め、鼻水止めなど)を行います。高熱が続く場合やのどが痛くて物を食べられない場合は内科・耳鼻科・小児科を受診して下さい。

かぜ(急性上気道炎)について

  • 感冒(かんぼう)、かぜ症候群、急性上気道炎と呼ばれることもある 
  • 上気道(鼻・のど)感染が生じることで、さまざまな症状を起こしている状態の総称
    • 下気道(気管支や肺)に感染が起こっている気管支炎肺炎かぜに含まないとされる
    • ほとんどがウイルスによる感染である
  • かぜの原因となる主なウイルス
    • ライノウイルス
    • コロナウイルス
    • パラインフルエンザウイルス
    • RSウイルス
    • インフルエンザウイルス
    • アデノウイルス
    • ヒトメタニューモウイルス
  • 感染後1-3日後に症状が出始める
  • 年間を通してみられるが、初秋から晩春にかけて多い
  • 幼児は1年間に平均6-7回かぜをひくというデータがある
    • 成長と共に減少し、成人期では平均2-3回

かぜ(急性上気道炎)の症状

  • 主な症状
    • のどの痛み
    • 鼻水、鼻づまり
  • 全身症状として発熱や頭痛がみられることもあるが、程度は強くないことが多い
  • 2-3日で症状のピークを迎えて、約1週間続く

かぜ(急性上気道炎)の検査・診断

  • 経過や症状から診断するものであり、診断に検査は不要
    • 他に病気が隠れていないか確認するために検査が必要になることもある
  • 血液検査:全身の状態を確認する
  • 細菌検査:血液・尿・痰などの細菌検査を必要に応じて行う
  • 画像検査:胸部レントゲンX線)検査、CT検査などを、肺炎も疑われる場合などに行う

かぜ(急性上気道炎)の治療法

  • 基本的に治療を必要とせず、自然に治る
  • ウイルス感染が原因なので、抗菌薬抗生物質、抗生剤)は効かない
    • 抗菌薬は細菌感染にしか効果がない
  • 症状がつらい場合には対症療法(症状を和らげる治療)を行う
    • 効果と副作用のバランスを考えると、使える薬の種類は多くない
      • 発熱・痛みに対してはアセトアミノフェン(商品名:カロナール、コカール、アルピニー、アンヒバなど)
      • 咳に対してはチペピジン(商品名:アスベリン)やデキストロメトルファン(商品名:メジコン)などを使用する
        • ハチミツが同等の効果という報告もある(ただしハチミツは1歳未満の乳児に与えてはいけない)
      • 鼻水に対しては抗ヒスタミン薬を使う場合がある
        • 小児では副作用など考慮しつつシプロヘプタジン(商品名:ペリアクチン)など使用することがある
        • 妊婦や授乳婦に対してはクロルフェニラミンマレイン酸塩(商品名:ポララミンなど)などを用いることもある
    • 漢方薬が有効な場合もある
  • 小児における解熱剤(アセトアミノフェン)の使い方
    • 解熱剤はあくまでも一時的に熱を下げるもの
      • かぜで熱が出るのは体がウイルスと戦っている証拠であり、完全に平熱まで下げるのは不可能かつ意味がない
      • 一時的に熱を下げることで体力の回復や水分・食事摂取を可能にすることが目的
    • 熱の高低ではなく、本人の状態で使い分ける   例)39℃でも比較的元気で水分・食事がしっかりとれていれば無理に使う必要はない     38℃でもぐったりして水分がとれないようであれば、積極的に使う
  • 予防には手洗いやマスク装着が有効

かぜ(急性上気道炎)に関連する治療薬

アセトアミノフェン製剤

  • 脳の体温調節中枢や中枢神経などに作用して熱を下げたり、痛みを抑えたりする薬
    • 発熱は脳の体温調節中枢に情報が伝わり、体温調節中枢から発熱の指令が身体の各部に伝わることで生じる
    • アセトアミノフェンは体温調節中枢に作用し、熱を体外へ逃がす作用を増強する
    • アセトアミノフェンは発熱や痛みの情報を伝える物質を阻害する作用をあらわす
アセトアミノフェン製剤についてもっと詳しく

鎮咳薬(非麻薬性)

  • 咳を引き起こす咳中枢の抑制作用や気道を広げる作用などにより咳などの呼吸器症状を緩和する薬
    • 咳はウイルスなどの異物や痰を体外へ排出しやすくする生体内防御反応だが、体力の消耗や元々の呼吸器疾患の悪化などを引き起こす場合もある
    • 咳は延髄の咳中枢からの指令によりおこるが、気管支炎症などにより気道が狭くなると咳がおきやすくなる
    • 本剤は咳中枢を抑えたり、気管支を拡張させるなどの作用をあらわす
鎮咳薬(非麻薬性)についてもっと詳しく

去痰薬

  • 病原体や異物などを痰や鼻汁によって体外へ排出しやすくすることで気管支の炎症や喘息、慢性副鼻腔炎などによる症状を和らげる薬
    • 痰や鼻汁には粘性の分泌物が含まれ、粘膜保護や異物をからめとり排出する作用などがある
    • 粘性の分泌物が気道や鼻腔でつまると咳や蓄膿症などを誘発する場合もある
    • 本剤は気道分泌促進作用、粘液などの排出促進作用などをあらわす
  • 本剤は薬剤の作用などにより、気道粘液分泌促進薬や喀痰溶解薬などに分けられる
去痰薬についてもっと詳しく

かぜ(急性上気道炎)の経過と病院探しのポイント

かぜ(急性上気道炎)が心配な方

特に子どもが風邪を引いた場合は、多くの親御さんは心配になると思います。
病院に受診するべきかどうかのちょっとした判断ポイントや自宅での過ごし方をご紹介します。

・熱が高くても、それだけで頭に影響が出ることはまずありえません。42度を超えて熱が上がらない限りは、そのような心配はしなくてよいです。

・体温が40度でも元気に遊んでいる子どももいて、その場合は解熱剤を使用しないで様子を見ても問題無いです。熱に対しては薬を使う代わりに、太い血管の走っているところ(首や脇の下、足の付け根)を冷たいタオルなどで冷やすことで楽になることがあります。

・熱があるのに体を温め過ぎると、熱がこもって体温が更に上がって子供は辛く感じてしまいかねないです。熱があるときも、普段と同じか、普段より一枚羽織りを取るくらいのつもりで、本人が寒く感じない程度に調整してあげるのが良いでしょう。

・おでこを冷やしても体温を下げる効果はほとんどないですが、子供が安心する意味での精神的効果はあります。ただし、1歳未満の乳児では、おでこに貼るタイプの冷却材がずれて口を塞ぎ窒息した事故の報告もあるため、まめに子どもの様子を見るような配慮が必要です。

子どもの風邪では発熱だけであれば問題ないことが多く、本人の元気具合が非常に大事な判断材料になります。
日ごろ子どもをよく見ているのは親御さんですので、いつもよりぐったりしているなと思ったら一度病院にかかっても良いかもしれません。

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かぜ(急性上気道炎)でお困りの方

かぜ症状でお困りの方は内科、耳鼻科、小児科のクリニックの受診をお勧めします。急性上気道炎は、いわゆる「かぜ」のことですから、専門医の診療を必要としません。急性上気道炎で医療機関を受診する意義があるのは、細菌が原因となる一部の上気道炎溶連菌性咽頭炎)、そしてインフルエンザ(の一部)くらいでしょう。

急性上気道炎は、問診と診察で診断をする病気です。採血やレントゲンは、他の病気ではないことを確かめるために使うことができるかもしれませんが、それ以外の意味では診断の参考になりません。

急性上気道炎の中で、一部の病原菌に対しては専用の検査キットを使用することで診断がつけられるものがあります。(診断をつける意義がないケースも多々あります。)

・溶連菌
・インフルエンザウイルス
・アデノウイルス
・RSウイルス
・ヒトメタニューモウイルス

上の病原体は、鼻の中やのどの奥に細い綿棒を入れて粘液をこすりとり、それを用いると5分から15分ほどで検査の結果が分かります。診断の精度はあまり高くありませんので、あくまでも問診と診察が基本ですが、参考のために行われることのある検査です。特に小児科のクリニックなどでは、このような検査キットを準備しているところが多いでしょう。

急性上気道炎のほとんどは抗菌薬(抗生物質、抗生剤)が効かず、薬で治すことができません。呼吸器感染症に関するガイドラインなどでは、かぜに抗菌薬を処方するべきでない旨が明記されています。

かぜの対症療法として熱冷ましや咳止めを使用することが目的であれば、医療機関を受診するよりもスーパーやコンビニエンスストアで購入できる市販の医薬品で様子を見る(セルフメディケーション)方が負担が少ないかもしれません。

病院で処方される薬と市販の薬では、かぜ薬に限って言えば効果にあまり差がありません。

病院で処方される医薬品の成分は、熱冷ましや頭痛関節痛に対するものであればアセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)やロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)、咳止めであればデキストロメトルファン(商品名:メジコンなど)といったものがあります。市販薬でもアセトアミノフェンやロキソプロフェンの成分を含むものが多くありますので、市販薬を選ぶ際の参考にされてみてください。ただし、小児には使えない薬もあるため、説明をよく読んで、子供に飲ませてもいいことを確かめた上で使用してください。

ここに挙げたのはあくまでも一部の例であり、これ以外の成分であってももちろん効果があります。

一部の急性上気道炎の後に、咳が長引くことがあります。通常のかぜでは1週間程度で症状が治まりますが、一定の割合で、長くて2か月ほど症状が残るものがあります。このような場合、薬で治療することはなかなか難しいのですが、自然の経過で改善しますので、適宜咳止めなどを使用しながら根気強く付き合っていく必要があります。

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