とっぱつせいほっしん(しょうにばらしん)
突発性発疹(小児バラ疹)
発熱と発疹を伴う感染症。多くの小児が一度は経験する
13人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2024.06.04

突発性発疹の治療にはどんな薬を使う?

突発性発疹は発熱と発疹が主な症状です。熱で衰弱するのを防ぐために解熱薬を使うことがあります。発疹は自然に消えますので、薬は通常使いません。

1. 突発性発疹による発熱時に使う解熱薬(解熱剤)の例

こんな状況を考えてみます。

――3歳半の男の子、悠真くんが鼻水と38℃の熱を出しました。熱を下げたいので病院に行けば薬がもらえるでしょうか?

突発性発疹では突然の発熱があらわれます。39℃から40℃の高熱になることが多いため、発熱を楽にするための対症療法(たいしょうりょうほう)として解熱薬(解熱剤、解熱鎮痛薬)が使われる場合があります。

子供の熱には子供の薬

突発性発疹を発症する子供の多くは乳幼児です。この年齢の子供には使用できる解熱薬が限られています。

突発性発疹による発熱にはアセトアミノフェンがよく使われます。アセトアミノフェンは解熱薬の中でも安全性が高いとされている薬で、子供だけでなく場合によっては妊婦に対しても使えます。1歳未満の子供に対しても使用可能であり(但し、低出生体重児や新生児などを除く)、使用する量も比較的広い範囲で調節が可能な薬とされています。

アセトアミノフェンは有効性や安全性が高いだけでなく、多くの剤形(飲み薬、坐薬など用途に合わせた薬の形)があるのもいいところです。特に飲み薬をうまく飲み込めないことが多い小さい子供にとっては、いくつかの選択肢があるということはメリットになります。以下によく使われているアセトアミノフェン製剤の剤形例を挙げました。

  • 細粒剤(商品名:カロナール®細粒20%、カロナール®細粒50%など)
    • 細粒剤は散剤(粉状の薬)に添加物を加えて、散剤より少し大きい粒状にした飲み薬です。一般的に散剤に比べるとパサつきにくく、薬自体の味(苦味など)が抑えられているものが多いのが特徴です。たとえばカロナール®細粒は「わずかにオレンジのような香りがあり、味は最初甘く、後に苦い」といった特徴があります。
  • ドライシロップ剤(商品名:コカール®小児用ドライシロップ20%など)
    • 散剤に糖類などを添加して顆粒状にした飲み薬です。薬自体の味(苦味)などがかなり抑えられているものが多いのが特徴です。例として、コカール®小児用ドライシロップ20%は「わずかにオレンジのような香りがあり、味は甘い」といった特徴があります。
  • 水剤(シロップ剤)(商品名:カロナール®シロップ2%など)
    • 白糖などの糖類や甘味料を含む液体状の飲み薬です。味に甘みがあり細粒剤などの粉薬が苦手な子供でも比較的飲みやすいように造られています。例として、カロナール®シロップ2%は「オレンジのような香りがあり、味はわずかに甘い」といった特徴があります。
  • 坐剤(商品名:アンヒバ®坐剤小児用100mg、アルピニー®坐剤100mgなど)
    • アセトアミノフェンの坐剤(坐薬)です。坐剤とはお尻から挿入して使う薬のことで、飲んではいけません。内服(薬を飲むこと)が困難な状況でも坐剤なら効果が期待できます。またアセトアミノフェンの含有量によって複数の規格があり、体重や症状などに応じた選択も可能です。

発熱とは元々、体温を上げることにより、ウイルス細菌などがうまく増殖できないようにする免疫反応の一つです。そのため、発熱時に解熱薬を使うと、かえって治りが悪くなる可能性もあります。一方で、子供の発熱は身体の衰弱などを起こすこともあるので、解熱が必要な場合もあります。もちろん、使う人の体質や症状などにも左右されるため、解熱薬が出された時は「どのくらいの発熱で使うべきか?」「どのくらいの間隔やタイミングで使えばいいか?」などを医師や薬剤師からよく聞いておくと良いでしょう。

2. 熱性けいれんの治療に使うダイアップ®坐剤とは?

突発性発疹による発熱は、しばしば熱性けいれんという状態を引き起こします。治療としてダイアップ®坐剤をよく使います。

熱性けいれんは主に小児(乳幼児)が発熱時に起こすけいれん(ひきつけ)です。多くは発熱後24時間以内にけいれんがおこります。

どんな原因の発熱でも熱性けいれんは起こりえますが、突発性発疹は熱性けいれんを起こす代表的な原因のひとつです。特に2歳以下の子供におこる熱性けいれんでは多くの場合で突発性発疹が原因となっています。

熱性けいれんに対する治療薬としてよく使われているのが、ダイアップ®坐剤です。けいれんは脳の興奮などによって引き起こされますが、ダイアップ®坐剤の成分であるジアゼパムは、脳の興奮を抑えることなどによって、けいれんを抑える作用をあらわします。

3. ダイアップ®坐剤の使い方

ダイアップ®坐剤は、全ての熱性けいれんに使えるわけではありません。副作用に眠気やふらつきなどがありますので、処方された場合は医師や薬剤師からよく話を聞いておくことが大切です。

熱性けいれん診療ガイドライン2015」では、ダイアップ®坐剤の使用できる子供に関して以下のように記述しています。

今までに15分以上けいれん発作を起こしたことがある場合はダイアップ®坐剤が使用できます。また、15分以上のけいれん発作を起こしたことがない場合でも、

  • 焦点性発作または24時間以内に反復するけいれん
  • 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達遅滞
  • 熱性けいれんまたはてんかんを患ったことがある人が家族にいる
  • 生後12カ月未満
  • 発熱後1時間未満でのけいれん発作
  • 38℃未満でのけいれん発作

上記の項目を2つ以上満たす場合はダイアップ®坐剤を使用できます。ダイアップ®坐剤を使用できる人に該当しない子供にダイアップ®坐剤を使用した場合は、得られるメリットよりもデメリットのほうが大きくなる可能性があるため、ダイアップ®坐剤を使うことはおすすめできません。

ダイアップ®坐剤は体重に合わせた適切な量をお尻から挿入します。その後、発熱が続いている場合などには、一度目を使った時点からおよそ8時間後に再度同様に挿入することができます。このように計2回ダイアップ®坐剤を使うとこの薬の効果が通常、48時間ほど続くとされています。熱性けいれんは発熱から24時間を超えておこることは少なく、2日(48時間)を超えて再度症状があらわれることはさらに少ないため、計2回の使用でほとんどの熱性けいれんを止められるとされています。

4. アセトアミノフェン坐剤とダイアップ®坐剤は30分開けて使う!

突発性発疹の発熱に対してよく使うアンヒバ®坐剤などのアセトアミノフェン坐剤が処方された時、ダイアップ®坐剤を一緒に使うことには注意が必要です。これらは同時に使うと効果が弱くなる可能性があります。

突発性発疹による発熱はしばしば熱性けいれんをも引き起こすので、熱性けいれんの治療薬であるダイアップ®坐剤をアンヒバ®坐剤などと一緒に使う場面もあります。ところが、アンヒバ®坐剤などのアセトアミノフェン坐剤(基剤が油脂性の坐剤)とダイアップ®坐剤を一緒に使うと、ダイアップ®坐剤の吸収が悪くなってしまいます。

そのため、通常はダイアップ®坐剤を挿入してから30分以上経過した後、アンヒバ®坐剤などの解熱薬を挿入します。但し、早急に発熱を抑えたい場合などでは例外的に、坐剤挿入の順番が逆転するケースも考えられます。

飲み薬の「飲み合わせ」と同様に、複数の薬を同時に使うときには注意が必要な組み合わせのひとつです。

5. 突発性発疹の治療が原因で起こる症状は?

まれに薬が原因で体の状態が悪化することもあります。特に解熱薬を使用することで、薬のアレルギーや肝炎を起こすことがありますので、注意が必要です。

肝炎の症状はかゆみ、だるさ、黄疸などです。アレルギーの症状は皮膚、胃腸、気管や肺で起こることが多いですので、皮疹や下痢・腹痛、息苦しさが出たときには注意してください。特に息苦しさがあるときは必ず医療機関(病院、クリニック)にかかって診察を受けてください。

参考文献
・日本小児神経学会/監修, 熱性けいれん診療ガイドライン2015, 診断と治療社, 2015