ろっかんしんけいつう
肋間神経痛
肋骨と肋骨の間に通っている神経に生じる痛み
8人の医師がチェック 116回の改訂 最終更新: 2024.07.12

肋間神経痛の症状:胸や脇の突然の痛み、ピリピリとした痛み

肋間神経痛では、突然、胸や脇腹が痛くなります。激しい痛みであったりピリピリとした痛みであったりその様子はさまざまです。このような症状は肋間神経痛以外でもあらわれるので、どの病気が症状の原因か見分けることが重要です。

1. 肋間神経痛はどんな痛みか:しびれ・突発痛

肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)の感じ方には個人差があります。痛みは以下のように表現されることがあります。

  • 刺すような痛み 
  • ピリピリとした痛み 
  • しびれたような感じ 

肋間神経痛は肋間神経に傷がついたり圧迫されることが原因です。神経のダメージの程度によって症状の出方が変わります。また、肋間神経痛は突然あらわれることもあります。

2. 肋間神経痛に初期症状はあるか

典型的な肋間神経痛は突然胸が痛くなります。突然起こるために初期症状はないと言えます。このような症状から、何か重い病気ではないかと心配になることも多いです。

3. 肋間神経痛で痛くなる場所:胸・肋骨・背中・脇腹・脇の下など

肋間神経痛では胸や脇腹が痛くなることが多いです。

肋間神経は背骨から出て肋骨(ろっこつ)に沿うような位置を走行しています。肋間神経痛は肋間神経が傷害された場所によって症状がでる場所が変わり、背中・脇の下が痛くなることもあります。また、肋骨が痛いように感じるときもあります。

4. 肋間神経痛と似た症状があらわれる主な病気:狭心症、心筋梗塞、気胸、胃十二指腸潰瘍など

肋間神経痛と似た症状が他の病気であらわれることがあります。なかには重い病気もありますので、見逃さないことが大事です。

【肋間神経痛と似た症状があらわれる病気の例】

上記には、心臓や肺の病気のように緊急で対応が必要なものも含まれています。検査をしないと見分けることが難しいため、今までに経験のない胸痛があった時は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

次に、上記の病気についてそれぞれ簡単に説明します。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

帯状疱疹は神経の中に潜んでいる水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して、痛みや水疱(すいほう)などができる病気です。水痘帯状疱疹ウイルスは水ぼうそうを起こすウイルスでもあります。

帯状疱疹は抗ウイルス薬で治療することができます。適切な治療をするためには、帯状疱疹を肋間神経痛と見分けることが大切です。帯状疱疹では特徴的な皮疹がでるので診察で区別することが可能です。

少しややこしい話ですが、帯状疱疹が治った後の後遺症として肋間神経痛が起こることがあります。帯状疱疹後の肋間神経痛を帯状疱疹後神経疼痛(PHN:Postherpetic Neuralgia)とも呼びます帯状疱疹後の肋間神経痛の痛みは数か月から数年に及ぶことがあります。

狭心症(きょうしんしょう)

心臓に酸素や栄養を送る血管を冠動脈といいます。狭心症は冠動脈が何らかの原因で狭くなったりして心臓に十分な酸素が供給できなくなる病気です。

狭心症の主な症状の一つに胸が締め付けられるような痛みがあります。痛みは数十分でおさまることもあります。肋間神経痛でも突然胸に鋭い痛みがはしることがあり、狭心症と症状が似ていることがあります。

肋間神経痛と狭心症は身体診察や心電図、血液検査などの検査を組み合わせて見分けます。

心筋梗塞(しんきんこうそく)

心臓に酸素や栄養を送る血管を冠動脈といいます。心筋梗塞は冠動脈に閉塞が起きて心臓の細胞(心筋細胞)が障害を受ける病気です狭心症と似ている点がありますが、冠動脈が閉塞して途絶えている点が異なります。

心筋梗塞の症状は胸痛です。肋間神経痛の胸痛と似ていることがあります。心筋梗塞の胸痛は時間が経過しても収まることはありません。心筋梗塞は重症になると死に至ることもある病気です。一刻も早く医療機関を受診して治療を受けてください。

肺塞栓(はいそくせん)症

肺塞栓症は血の塊が心臓から肺に向かう動脈に詰まる病気です。狭い座席などに長時間座りっぱなしで、立ち上がった時に発症することがあります。エコノミークラス症候群と言う呼び名で耳にしたことがあるかもしれません。肺塞栓は重症の場合には命に関わることもあります。

肺塞栓症の症状の一つに胸痛があり、肋間神経痛と似ていることがあります。肺塞栓の症状には他にも息切れ、動悸、めまいなどがあります。

気胸

気胸は肺に穴が開いて肺を覆う胸腔(きょうくう)というスペースに空気がもれ出る病気です。気胸は肋間神経痛と同じく、発症すると突発的な胸痛などがあらわれます。気胸では他に息苦しさや呼吸困難、咳などの症状もあらわれます。

気胸が起きると肺の周りの胸腔に空気が漏れ出て肺が縮んでしまいます。胸腔にたまる空気の量が多いと心臓や肺が圧迫されて重症になります。これを緊張性気胸と言います。

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

胃食道逆流症胃液が本来の方向とは逆に食道に流れる病気です。食道と胃のつなぎ目にあって、胃液の逆流を防いでいる下部食道括約筋の機能が落ちることが原因です。

胃食道逆流症ではみぞおちや胸に痛みがでることがあります。これは肋間神経痛と共通する症状です。胃食道逆流症は緊急で治療が必要な病気ではありませんが、炎症が強くなると出血をしたり食道にひどい潰瘍をつくることがあります。胃食道逆流症内視鏡胃カメラ)などを用いて診断します。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は胃や十二指腸の粘膜が消化液で傷ついて、クレーターのようなくぼみができる病気です。みぞおちの辺りの痛みが典型的な症状ですが、まれに胸が痛くなることもあります。内視鏡検査で診断を行い、胃薬などで治療することができます。

肋軟骨炎(Tietze症候群)

肋軟骨炎(ろくなんこつえん)は肋骨を構成する軟骨の部分に炎症が起こる病気です。40歳を超える女性に多いと言われています。

肋骨は骨の部分と軟骨の部分で構成されており、肋軟骨は体の前側の中心に近い部分にあたります。肋軟骨炎は1つまたは複数の肋軟骨が痛みを伴って腫れます。自然に治癒することが多いです。

参考文献 :福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第2版, MEDSi, 2006

プレコーディアル・キャッチ症候群

プレコーディアル・キャッチ症候群は原因のはっきりとしない胸痛が突然起こる病気です。あらゆる年齢に起きうる病気ですが、若い人に多く、特に6-12歳が発症しやすいとされています。胸痛は30秒から数分ほど続きますが自然と治まることが多いです。安静時に多くあらわれ、睡眠中には起こらないことも特徴の一つです。

診断では心電図・レントゲン検査などで他に原因となる病気がないことを確認します。検査の結果明らかな原因がなく症状が合致しているのであればプレコーディアル・キャッチ症候群が考えられます。

プレコーディアル・キャッチ症候群は悪化したり後遺症が残る病気ではなく、治療も必要としないことが多いです。