はしゅせいけっかんないぎょうこ(でぃーあいしー)
播種性血管内凝固(DIC)
感染症や癌、外傷など様々な重症疾患が原因となって、全身の血管に血栓ができたり、出血しやすくなったりする状態。
9人の医師がチェック 214回の改訂 最終更新: 2020.06.17

播種性血管内凝固(DIC)の原因について

播種性血管内凝固(DIC)は血を固める作用(凝固系)とサラサラにする作用(線溶系)のバランスが崩れることが原因です。DICは重症な感染症がん白血病の人に起こります。病気のない人が突然DICを発症するということはありません。

1. 播種性血管内凝固(DIC)はなぜ起こるのか?

私たちの身体は怪我をして出血が起きても自然に血が止まるようにできています。これは身体の中に凝固系と呼ばれる出血を抑える仕組みにより血液が固まってフタをしてくれるためです。一方で身体の中には、不必要になった血液の固まりを溶かす仕組みとして線溶系があります。

播種性血管内凝固(DIC:ディーアイシー)は敗血症や進行したがんなどをきっかけに、身体の中の凝固系と線溶系のバランスが保てなくなることで起こります。言い換えると、血を固めるのとサラサラにするバランスが崩れることで起こります。これにより身体の中のある場所では血が固まって血栓ができ、また別の場所では血がサラサラになり出血をきたすという非常に複雑な状態が起こります。

2. DICの原因となる病気

凝固系と線溶系のバランスの崩れは、他の病気をきっかけとして起こります。ほとんどのDICは命に関わるような重症な病気がきっかけとなります。何も病気がない状態で、いきなりDICを発症するということはありません。具体的にDICの原因となる代表的な病気としては以下の3つがあります。

以下で詳しく説明していきます。

3. 感染症

感染症の中で重症なものはDICの原因になることがあります。風邪などの軽症なものはDICの原因になることはありません。DICを引き起こす感染症の代表例は敗血症です。敗血症は感染により全身のバランスが乱れた状態で、高熱や頻脈、頻呼吸が続いたり、時として血圧が維持できないこともあります。このような全身のバランスが乱れた状態では、血を固める作用とサラサラにする作用のバランスが崩れることも多く、DICが引き起こされます。

また、十分なことはまだわかってませんが、新型コロナウイルス感染症COVID-19)でも、DICと似た全身での血栓形成が起こることが報告されています。

参考文献:「COVID-19 and Coagulopathy: Frequently Asked Questions」(2020.6.8閲覧)

4. がん

進行したがんでもDICが起こることがあります。これは、がんから、血を固めるのとサラサラにするバランスを崩すような異常な物質が大量に生成されることによります。ただし、早期のがんでこの異常な物質が大量に生成されることは珍しく、早期がんが原因でDICになることもほとんどありません。

5. 白血病

血液のがんである白血病でもDICを起こすことがあります。白血病によるDICも白血病細胞から、血を固めるのとサラサラにするバランスを崩すような異常な物質が大量に生成されることによります。ただし、白血病によるDICは通常のがんよりも、血がサラサラになることによる出血症状が出やすいという特徴があります。白血病には種類がいくつかありますが、急性前骨髄球性白血病というタイプのものがDICをよく起こすことで知られています。