きゅうせいいえん・きゅうせいいねんまくびょうへん(えーじーえむえる)
急性胃炎・急性胃粘膜病変 (AGML)
胃の粘膜のびらんや潰瘍が原因で、急激な腹痛・吐血・下血を起こす状態。多くは薬剤性、アルコールやストレスなどで起こる
8人の医師がチェック 122回の改訂 最終更新: 2020.09.07

急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)で知っておくとよいこと

このページでは、急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)は自然に治るのか、再発するのか、などのよくある質問について解説します。

1. AGMLにかかりやすい人とは?

どのような人がAGMLにかかりやすいかを考える場合、AGMLの原因が何かを考えるとイメージしやすいと思います。AGMLの原因には以下のようなものがあります。

  • ストレス
  • 薬剤
  • アルコール
  • 食事
  • 感染症
  • 医療行為
  • 全身疾患

これらの原因を持っている人はAGMLになりやすいので注意が必要です。それぞれについて簡単に解説します。

ストレス

(c)Robert Kneschke-Fotolia.com

ストレスはAGMLの原因のうち約15-35%を占めると言われています。ストレスがかかると自律神経交感神経副交感神経)のバランスが崩れ、胃粘膜が傷つきやすくなったり、できた傷が治りにくくなったりします。精神的ストレス、肉体的ストレスいずれもがAGMLの原因となります。

薬剤

薬剤はAGMLの原因のうち約15-35%を占めると言われています。AGMLを起こす薬剤で代表的なのはロキソニン®などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。NSAIDsを飲んでいる人では胃の防御因子が少なくなり胃粘膜が傷つきやすくなります。

アルコール・食事

アルコールの摂取量が多い場合や、空腹のまま度数の高い酒を飲むなどした場合に、胃粘膜を傷つけることがあります。また食事では、にんにく、辛味の強い食品などを摂取したときにAGMLが起こることがあります。

感染症

AGMLを起こす感染症として有名なのはヘリコバクター・ピロリ菌です。ピロリ菌萎縮性胃炎胃潰瘍胃がんの原因になることが知られている細菌です。この他にサイトメガロウイルスなどのウイルス感染症や、アニサキス症などの寄生虫感染もAGMLの原因になります。

医療行為

検査や治療、手術などの医療行為によってAGMLが発生することがあります。肝細胞がんに対する肝動脈塞栓療法や、食道静脈瘤に対する食道静脈瘤硬化療法が原因になることがあります。

全身性疾患

肝硬変や慢性腎不全の人ではAGMLが起こりやすいと言われています。また、外傷(大けが)や熱傷(大やけど)の人では自律神経を介したストレス反応によって胃粘膜障害が起こりやすいことが知られています。

2. AGMLはうつる?

AGMLの症状は感染性胃腸炎と似たところがあるため他の人にうつらないか心配になるかもしれませんが、AGMLは誰かから誰かへうつることはありません。その人の抱えるストレスや飲んでいる薬が原因になることが多く、他の人にうつることはないのです。

ここで、AGMLの原因の一つに「感染症」があるという説明を思い出して疑問に感じた人もいるかもしれません。代表的なものはヘリコバクター・ピロリ感染症サイトメガロウイルス感染症や、アニサキス症などですが、これらも感染している人から別の人に感染が広がるタイプの感染症ではありません。

3. AGMLが治るまでどのくらいの期間がかかるか?

AGMLが治るまでの期間には個人差があります。軽症の胃炎で入院の必要はなく、内服薬で治療を行うような人では1-2週間程度で症状が良くなることが多いです。一方で大きな胃潰瘍ができていたり、胃潰瘍から出血して入院治療が必要になるような人では、症状がなくなるまでに1か月間程度かかることもあります。

AGMLを引き起こした原因を取り除くことができるかどうかも治療期間に関わります。ストレスや薬剤が原因である場合、ストレス源を取り除いたり原因薬剤の内服を中止することができればAGMLの回復が早くなることが予想されます。一方で、ストレスの除去が難しい場合や、別の病気の治療で薬剤の内服を続けなければならないような場合には、AGMLの治療に時間がかかることがあります。

4. AGMLは自然治癒する?

AGMLが自然治癒するかどうかははっきりと分かっていません。少しおなかが痛かったけれど様子を見ているうちに自然に治った、という経験はだれしもあると思いますが、そのような腹痛の原因が軽いAGMLだったということはありえます。

病院を受診するほどの強い腹痛がある場合には自然治癒することは少ないと思いますので、強い症状があるAGMLでは自然に治るのを我慢して待つのではなく、治療法をお医者さんと相談することをおすすめします。

5. 原因不明の場合の治療法は?

AGMLでは胃粘膜の炎症が起こった原因がわからないこともあります。原因がはっきりとわかる人は約60%というデータもあり、約半数の人は原因不明ということになります。

ただし、原因が分からなかったとしてもAGMLの治療が大きく変わるわけではありません。食事療法で胃への負担を減らしたり、胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬を内服することはAGMLの人に共通する治療法です。原因不明でもほとんどの人が良くなりますので、お医者さんに原因が分からないと言われた場合でも大きく心配する必要はありません。

6. AGMLは再発するか?

治療を受けてAGMLが治ったとしても、AGMLになった根本原因が取り除けない場合にはAGMLが再発する可能性があります。例えばストレスの要因が取り除けない場合や、AGMLの原因になった薬剤が治療に必要で中止できない場合などが当てはまります。

これらの状況は個人の努力でどうにかなるものではありませんので、ある意味しょうがない状況であると言えます。そのような中でも再発を防ぐために大切なことは、①取り除ける要因を取り除くこと、②食事療法など生活習慣の工夫をすること、そして、③適切な薬物療法を受けることです。

取り除ける要因を取り除く

胃炎、胃潰瘍の原因としてヘリコバクター・ピロリ菌が重要であることが知られています。ヘリコバクター・ピロリ菌感染があると分かった人では、AGMLの再発を防ぐためにも除菌治療を受けるほうが良いです。除菌治療を行うタイミングはAGMLがしっかりと治ったあとが良いとされていますので、詳しくは担当のお医者さんとよく相談してください。

食事療法など生活習慣の工夫をする

辛味の強い食事や過剰なアルコール摂取はAGMLの原因になります。一度AGMLが治ったからといって、胃に負担をかける食生活を続けているとAGMLが再発するきっかけになってしまうかもしれません。再発を予防するためには栄養バランスのよい食事を心がけるとともに、塩分や脂肪の多い食事、辛い食事、硬いおかずを避けて胃粘膜への負担を減らすようにすると良いです。またアルコールは適量として、アルコール度数の高いものは避けるようにします。飲酒を再開する時期についてはかかりつけのお医者さんとも相談してください。

また、身体的なストレスもAGMLの原因となることがあります。食生活のみならず、規則正しい生活を送る、睡眠時間を確保する、疲れをためないなど生活習慣を改善することでAGMLの再発予防につながります。

適切な薬物療法を受ける

AGMLになった人は胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬を内服することが多いと思います。AGMLが改善したとお医者さんが判断すれば、これらの薬物治療は基本的に終了となります。ただしAGMLの根本原因が解決していない人(例:ストレス要因が取り除けない人、原因薬剤が中止できない人)では、AGMLの再発を予防するために薬物治療を継続することも選択肢となります。どの薬剤をどのくらいの期間続けるかは担当のお医者さんとよく相談する必要があります。