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家族性高コレステロール血症
生まれつき血中のLDLコレステロールの値が異常に高くなってしまう病気。動脈硬化が若いときから起こりやすくなる
9人の医師がチェック 88回の改訂 最終更新: 2024.03.02

家族性高コレステロール血症の基礎知識

POINT 家族性高コレステロール血症とは

生まれ持って血液中のコレステロールが高くなる病気のことです。血液中のコレステロールが高いことによって、動脈硬化(血管の劣化)が起こりやすいことが知られています。家族性高コレストテロール血症の人には肘や膝、おしり、手首に黄色い組織の塊ができることがあります。血液検査を行い血液中のコレステロールの値が調べられ、必要に応じて遺伝子検査が検討されます。家族性高コレステロール血症の人には主にスタチンと呼ばれるコレステロールを下げる薬が治療に使われます。コレステロールを下げることによって動脈硬化を予防することが治療の最も重要な目的です。健康診断などでコレステロールが高いと指摘されて、家族性高コレステロール血症が心配な人は内科や内分泌内科を受診してください。

家族性高コレステロール血症について

  • 生まれつき血中のLDLコレステロールが異常に高くなってしまう病気である
    • LDLコレステロールは肝臓で代謝されるが、家族性高コレステロール血症ではLDLコレステロールを肝臓にうまく取り込めない
  • 遺伝性の病気である
    • 常染色体優性遺伝という遺伝の仕方をする
    • 少なくとも親のどちらかは家族性高コレステロール血症がある
  • 遺伝子の組み合わせによって大きく2つの型に分類される
    • ヘテロ型
      • LDL受容体とその働きに関わる1組の遺伝子のどちらかに異常がある型
      • およそ500人に1人と言われている
    • ホモ型(ヘテロ型よりも、遺伝子が強く影響するタイプ)
      • LDL受容体とその働きに関わる1組の遺伝子のどちらにも異常がある型
      • およそ100万人に1人と言われている
  • LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が250mg/dlを超えた場合は家族性高コレステロール血症を強く疑う

家族性高コレステロール血症の症状

  • 皮膚に黄色腫(コレステロールを多く含む黄色い組織のかたまり)ができる
    • 臀部(おしり)
    • 手首    に黄色腫が出現することが多い
  • 腱黄色腫
    • アキレス腱が肥厚して9mm以上の厚さになる
  • 高コレステロールに伴う動脈硬化(若いうちから虚血性心疾患脳梗塞を引き起こす)
  • 眼の黒い部分(黒目)の周りに脂肪が沈着する(角膜輪)

家族性高コレステロール血症の検査・診断

  • 血液検査:血液中のコレステロールの値を調べる
  • 必要であれば遺伝子検査も検討される

家族性高コレステロール血症の治療法

  • 血中のLDLコレステロールを減らして動脈硬化を抑えるのが治療の目標
  • 薬物療法
    • スタチン系脂質降下薬:肝臓でのコレステロール合成を阻害する
    • 陰イオン交換樹脂:腸からのコレステロール吸収を抑える
    • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:小腸からのコレステロール吸収を抑える
    • ヒト化抗ANGPTL3モノクローナル抗体(エビナクマブ):ホモ型に適応がある。LDL受容体に依存せずにLDLコレステロールを減らすことができる
  • LDLアフェレーシス療法:血液から直接LDLコレステロールを取り除く
  • 動脈硬化が進んでからでは血管は元に戻らないので、早いうちから治療を行うことが大切である

家族性高コレステロール血症に関連する治療薬

陰イオン交換樹脂

  • 消化管内で胆汁酸を吸着しそのまま体外へ排泄させてコレステロールを下げる薬
    • 肝臓で作られたコレステロールの一部は胆汁酸へ変換され消化管へ排泄される
    • 消化管へ排泄された胆汁酸の多くは腸で吸収され再びコレステロールとして利用される
    • 本剤は陰イオン交換樹脂という物質でできた薬剤であり、胆汁酸を吸着する作用をあらわす
陰イオン交換樹脂についてもっと詳しく

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

  • 小腸におけるコレステロールの吸収を抑え、血液中のコレステロールを低下させる薬
    • 脂質異常症ではコレステロールなどの数値異常がおきている
    • 小腸では食事及び胆汁由来のコレステロールが小腸コレステロールトランスポーターという物質の働きによって吸収される
    • 本剤は小腸コレステロールトランスポーターを阻害し、小腸におけるコレステロール吸収を阻害する
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬についてもっと詳しく

HMG-CoA還元酵素阻害薬[スタチン系脂質異常症(高脂血症)治療薬]

  • 肝臓におけるコレステロール合成を抑え、主に血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロールとも呼ばれる)を低下させ、動脈硬化などを予防する薬
    • 脂質異常症(高脂血症)では血液中のコレステロールなどの数値異常がおきていて動脈硬化などを引き起こす主な要因となる
    • 肝臓ではHMG-CoA還元酵素などの働きによりコレステロールが作られ、作られたコレステロールは血液中へ移行する
    • 本剤はHMG-CoA還元酵素の働きを阻害し、肝臓におけるコレステロール合成を阻害する
  • 脳梗塞や心筋梗塞などの予防目的で使用される場合もある
  • 薬剤の作用の強さ(LDLコレステロールの低下度など)による分類
    • 一般的には、作用の強さ(主にLDLコレステロール低下の度合い)が比較的マイルドな薬剤を「スタンダードスタチン」と呼び、それに比べ作用が強い薬剤を「ストロングスタチン」と呼ぶ
HMG-CoA還元酵素阻害薬[スタチン系脂質異常症(高脂血症)治療薬]についてもっと詳しく

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