2015.06.17 | ニュース

子どもの家族性高コレステロール血症を早期発見して寿命を数十年延ばそう!

5歳からの血液検査、8歳からの治療を提案

from European heart journal

子どもの家族性高コレステロール血症を早期発見して寿命を数十年延ばそう!の写真

家族性高コレステロール血症といって、若い時から悪玉コレステロール(LDL-C)が非常に高くなってしまう遺伝病があります。今回紹介する論文によれば、その頻度は、何と200人に1人!全世界で1分に1人の家族性高コレステロール血症の子供が生まれているとされます。この遺伝病の早期発見、早期治療が、患者さんの寿命を数十年も延ばすかもしれない、といった点が議論されています。

◆家族性高コレステロール血症とは

生活習慣や加齢に伴う非家族性の高コレステロール血症は、平均50歳程度から発症しますが、家族性高コレステロール血症の場合、重症例では生まれつき発症することも珍しくありません。幼少期からLDL-Cが高いと、動脈硬化が若年期に進行し、20代で心筋梗塞になってしまうこともあります。若年者の生活の質や命を奪ってしまうこと、また、家族性高コレステロール血症の高い疾患頻度を考えると、とても重要な課題です。

 

◆5歳からの血液検査、8歳からの治療を提案

この論文では、「子供の時点でLDL-Cの検査をすることが家族性と非家族性を見分けることに最適である」と述べ、5歳からの検査を勧めています。診断基準としては、

  1. LDL-Cが190mg/dL以上
  2. LDL-Cが160mg/dL以上かつ「『家族に若年性心筋梗塞の人がいる』『両親のどちらか一方でも高コレステロール血症を持つ』のどちらかを満たす」

のどちらか一方でも満たせば、家族性コレステロール血症と診断できるとしています。

治療目標としては、

  1. 10歳以上であればLDL-Cは130mg/dL以下
  2. 8歳から10歳の場合、異常にLDL-Cが高い場合や、リポ蛋白も高い場合、家族に若年性心筋梗塞の方がいたり心血管リスクのある方がいる場合は、元々の値の半分が理想的な値

としていますが、「長期副作用とバランスを取りながら」治療していく必要がある、と述べられています。

著者らは、「家族性高コレステロール血症を持つ青少年に、健康な数十年間の人生を与えてあげる為には、社会がこの病気により注目し、早期発見し、適切な治療を幼少期から行うことが重要だ。」とまとめています。

 

従来の家族性高コレステロール血症対策の問題点として、若年性心筋梗塞をきっかけとして家族性高コレステロール血症が発見されるケースが多いということがあります。若年性心筋梗塞は、家族本人にとって辛いだけでなく、社会や経済に与える影響も非常に大きいですから、これを予防する為にも、今回のような提言は非常に重要だと考えます。

執筆者

石田 渉

参考文献

Familial hypercholesterolaemia in children and adolescents: gaining decades of life by optimizing detection and treatment.

Eur Heart J. 2015 May 25 [Epub ahead of print]

[PMID: 26009596] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26009596

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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