◆985人の子宮体がん患者
研究班は次のように、子宮体がんがあった人について調べました。
一か所の施設で1999年1月から2009年12月までに治療を受けた985人の子宮体がん患者を対象として、後ろ向きコホート研究を行った。
過去の治療データから、子宮体がんがあった人のその後の経過を調べ、子宮体がんが原因の死亡に至った率である「疾患特異的死亡率」が薬剤などによって違うかどうかを統計解析しました。
◆スタチンを使った人で疾患特異的死亡率が低い
解析から次の結果が得られました。
解析の時点で、230人の患者(評価可能だった患者の22%)が子宮体がんにより死亡しており、フォロー期間の中央値は3.28年だった。疾患特異的生存率は、子宮体がんがあった女性のうち、診断および病期判定の時点でスタチン治療を受けていなかった人(570人中423人、74%)に比べてスタチン治療を受けていた人で高かった(220人中179人、81%、log-rank検定でP=0.03)。
多剤併用についてさらに評価したところ、スタチンとアスピリンを同時に使っている人に、どちらも使っていない人に比べて特に低い疾患特異的死亡率との関連が見られた(ハザード比0.25、95%信頼区間0.09-0.70)。
スタチンを使っていなかった人よりもスタチンを使っていた人で子宮体がんによる死亡が少なく、スタチンとアスピリンを同時に使っていた人では、子宮体がんによる疾患特異的死亡率がさらに低くなっていました。
この結果からは、スタチンとアスピリンにより子宮体がん以外の死因も含めた全体としての死亡率を下げる効果があるかどうかはわかりません。疾患特異的死亡率という考え方は、スタチンやアスピリンが子宮体がん以外の死因による死亡には影響しないという仮定のもとでは強い意味を持ちますが、スタチンには糖尿病を増やす可能性があるという別の報告もあり(以前の記事「高脂血症の薬でインスリンが減る?」で紹介しています http://medley.life/news/item/553a2b1ea263820301d8eb8b)、本当にほかの病気に影響がなかったのかどうかは慎重に考える必要があるかもしれません。
執筆者
Association Between Statin Use and Endometrial Cancer Survival.
Obstet Gynecol. 2015 Jul
[PMID: 26241267 ]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。