2016.09.05 | ニュース

女性の避妊手術はどの方法が安全?4種類の手術を比較

2015年までの研究状況から
from The Cochrane database of systematic reviews
女性の避妊手術はどの方法が安全?4種類の手術を比較の写真
(C) YakobchukOlena - iStock

女性の避妊手術は日本ではあまり普及していませんが、海外では出産後の人などによく使われてる避妊方法です。避妊手術で確実に避妊できるのでしょうか?また、手術によって起こる問題はないのでしょうか?

女性の避妊手術は大まかに卵管結紮術と呼ばれます。「結紮」(けっさつ)は耳慣れないので「けっさく」「けっそく」と聞き間違いますが、「紮」の字の中に「札」が入っています。からげる(糸を掛ける)という意味です。

卵管は卵子と精子の通り道です。卵管がつながっていなければ、卵子が子宮までたどり着くことも、精子が奥に進んで受精することもできません。卵管結紮術は、卵管を途中で塞いだり切り離したりすることで妊娠しないようにする手術です。

 

卵管結紮術は細かく分けると主に4種類の方法があります。

  • 卵管にプラスチック製のリング(バンド)をかけて塞ぐ
  • 卵管をクリップで挟んで塞ぐ
  • 卵管の途中を2か所で縛り、間を切り取る(卵管部分切除術)
    • Pomeroy法(ポメロイ法)、Parkland法(パークランド法)など
  • 電気メスで電流を流し、卵管を焼いて塞ぐ(電気凝固術)

卵管結紮術は開腹手術でも、腹腔鏡手術でもできます。手術の時間は方法にもよりますが、海外では日帰りでも行われています。

 

卵管結紮術を行うと一生にわたって避妊効果が続きます。避妊効果は非常に高いとされます。ただし、少数ですが妊娠してしまう場合もあり、その場合は子宮外妊娠になりやすいと言われています。

まれに手術によって周りの臓器を傷付ける場合があります。手術の仕組みから想定すると、太る、生理周期が変わる、更年期障害が出るなどの影響は考えられません。

再び妊娠したくなった場合、元に戻す手術(卵管再建術)もありますが、元に戻す手術をしても妊娠できない場合はかなりあります。体外受精によって妊娠する方法もあります。

 

避妊手術を受けることができる対象者について、母体保護法第3条は以下のとおり定めています(条文の中で避妊手術が「不妊手術」と呼ばれています)。

医師は、次の各号の一に該当する者に対して、本人の同意及び配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、不妊手術を行うことができる。ただし、未成年については、この限りではない。

一 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
二 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの
2 前項各号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による不妊手術を行うことができる。
3 第1項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。

出産経験がなく、健康で持病もない若い女性は当てはまりにくいと考えられます。医師は卵管結紮術をするために特別な資格などを必要としません。

 

卵管結紮術は健康保険で受けることができます。診療報酬点数が定められています。

卵管結紮術(腟式を含む。)(両側)
1 開腹によるもの 4,350点
2 腹腔鏡によるもの 18,810点

健康保険の範囲内で、自己負担が3割の場合には開腹手術で13,050円、腹腔鏡手術で56,430円が自己負担分という計算になります。実際に支払う金額には同時に必要になる検査や薬などの費用も加わります。

 

避妊手術の方法によって結果に違いがあるかを調べた研究を紹介します。

この研究では、女性の避妊手術による合併症(手術によって起こる問題)、避妊失敗による妊娠などに着目し、手術方法によって違いがあるかを調べています。

研究班は文献データベースを検索し、異なる手術方法を比較した研究報告を集め、結果を統合しました。

 

調査の結果、採用基準を満たす19件の研究が見つかりました。対象者数は合計13,209人でした。19件の内容は以下のものでした。

  • 卵管リングとクリップの比較(6件)
  • 卵管部分切除術と電気凝固術の比較(3件)
  • 卵管リングと電気凝固術の比較(2件)
  • 卵管部分切除術とクリップの比較(4件)
  • クリップと電気凝固術の比較(2件)
  • クリップの種類の比較(2件)

卵管微小挿入物(子宮鏡下避妊手術)、化学挿入物(キナクリン)をほかの方法と比較した研究はありませんでした。

全体で、手術後1年での妊娠率は0.5%未満でした。手術による重大な合併症はまれで、死亡例は1件も報告されていませんでした

 

手術方法の比較で以下の結果がありました。

  • クリップよりも卵管リングのほうが小さな合併症・手技の失敗が多い
  • 電気凝固術よりも卵管リングのほうが術後の痛みが出やすい
  • 修正Pomeroy法は電気凝固術よりも重大な合併症が多い
  • 卵管部分切除術とクリップで重大な合併症の報告なし(2,198人、1件)
  • 卵管部分切除術よりもクリップのほうが手技の失敗が多い
  • 卵管部分切除術よりもクリップのほうが手術時間が短い

 

避妊手術は効果が高く、ピル(経口避妊薬)の飲み忘れやコンドームのつけ忘れのような難点がありません。女性の健康のための選択肢として知っておく価値はあるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Techniques for the interruption of tubal patency for female sterilisation.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Aug 5. [Epub ahead of print]

[PMID: 27494193]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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