2020.02.25 | コラム

生まれつき悪玉コレステロール値が高くなる「家族性コレステロール血症」とは何か?

早期発見のポイントと動脈硬化を防ぐ治療法について

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コレステロール値の異常が続くと動脈硬化が徐々に進行します。動脈硬化とは血管の内側が狭くなった状態のことで、心筋梗塞や狭心症などの怖い病気を起こしやすくなるので、できるだけ早くから対策するのが望ましいです。 今回は、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の値が異常に高くなってしまう遺伝性の病気「家族性高コレステロール血症」について説明します。

家族性高コレステロール血症の人は少なくない

「家族性高コレステロール血症」はあまり耳にしない病名かもしれません。しかし、日本には少なくとも30万人以上もの患者さんがいると考えられており、決して珍しいものではありません。

家族性高コレステロール血症の人は生まれつきLDLコレステロール値が高くなりやすいため、若いうちから動脈硬化の危険にさらされるので、早期発見・早期治療により進行を食い止めることが何よりも大切です。一方で、目立った症状が現れにくく、病気に気づきにくいという問題を抱えているので、多くの人は健康診断などをきっかけに大人になってから診断されます。しかし、先ほど述べた病気のリスクを考えると、理想的には小児期に気づいておきたい病気です。

 

家族性高コレステロール血症の可能性が高い人とは

家族性高コレステロール血症は遺伝する病気です。例えば、両親のどちらか一人がヘテロ型*と呼ばれる家族性高コレステロール血症であれば、1/2の確率で子どもも発症します。この特徴は、家族性高コレステロールの人を見つける鍵となるもので、下記の2つの質問のいずれかにあてはまれば、この病気の可能性が高いと考えられます。

(*両親の片方からこの病気の遺伝子を受け継いでいる状態をヘテロ型、両方から受け継いだ状態をホモ型と言います。詳しくはこちらのページも参考にしてください。)

 

【家族性高コレステロール血症の可能性が高い人】

  • 若くして心筋梗塞や狭心症になった家族がいる(男性では55歳未満、女性では65歳未満) 
  • 家族に家族性高コレステロール血症の人がいる

  注意:ここでいう家族は2親等以内の血族を指します

(家族性高コレステロール血症の診断基準より一部抜粋)

 

これらに特別な検査は必要はなく、単純に家族の情報を集めるだけで分かることです。思い当たる節がある人は放置せずに、このコラムを医療機関を受診するよいきっかけとしてください。

医療機関によっては診察や血液検査によって家族性高コレステロール血症かどうかを調べることができますので、上記に当てはまった人はお医者さんに相談してみてください。また、コレステロールが高い状態は放置しないほうが良いので、もし親御さんが家族性高コレステロール血症と診断された場合には、子どもも調べてもらうことをお勧めします。

 

家族性コレステロール血症の治療法とは

家族性高コレステロール血症の治療では、血液中のLDLコレステロールを減らす薬を使います。まずスタチン製剤アトルバスタチンロスバスタチンピタバスタチンなど)やゼチーア®️などの内服薬を使用し、これらで改善が乏しければレパーサ®️プラルエント®️などのPCSK9阻害薬の注射剤を使います。

また、重症の人に行う治療では、LDLアフェレーシスといって、身体から血液を取り出してLDLコレステロールを取り除いてから体内に戻す治療を行うこともあります。

家族性高コレステロール血症は怖い面もある病気ですが、上手に治療してLDLコレステロールの値を管理することで、動脈硬化の進行を防ぐことができます。

 

今回のコラムを通じて「家族性高コレステロール血症」という病気の存在を知っていただき、早期発見・早期治療につなげてもらえたら幸いです。

 

参考文献

・日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2017」(2020.2.18閲覧)

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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